SUPER GT:ARTA NSX-GTが2連勝!最終ラップの逆転劇 / 第7戦 ツインリンクもてぎ
2021年 SUPER GT 第7戦の決勝レースが11月7日(日)にツインリンクもてぎで行われ、GT500クラスは、最終ラップに劇的な逆転が起こり、No.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)が連勝を飾った。GT300クラスは、予選5位からNo.21 Hitotsuyama Audi R8 LMS(川端伸太朗/篠原拓朗)が優勝を決めた。

前日の予選日同様、暖かな秋晴れに恵まれたツインリンクもてぎ。

お昼前に行われたウォームアップ走行で、GT300車両に追突されてマシン後部を壊してしまったNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/ベルトラン・バゲット)だったが、予備パーツで修復を間に合わせ、所定の8番グリッドに着くことができた。また、予選11位だったNo.64 Modulo NSX-GTは、大津弘樹のドライビングモラルハザード防止制度の累積点数がペナルティ基準の6点に達したため、ペナルティとして決勝レースのスターティンググリッドが4グリッド降格となりクラス最後尾になった。

決勝レースのスタートでは、ポールポジションのNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資)がトップを守る。だがオープニングラップでは、19号車の背後に4番手スタートのNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(松下信治)がジャンプアップして迫る。3、4番手はNo.8 ARTA NSX-GT(福住仁嶺)、No.16 Red Bull MOTUL MUGEN NSX-GT。予選2位のNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN GT-Rは5番手に後退する。その後、序盤はトップ3がそれぞれ約1秒の間隔を保ち、4位以下にリードを築いていった。

9周目にGT300車両がコースアウトし、その処理のため10周目にFCY(フルコースイエロー)が導入される。さらに14周目にもGT300車両同士の接触、コースアウトのために2度目のFCYとなる。この混乱も味方したのか、12号車がトップの19号車の背後に接近。勢いのままに、21周目にパスして12号車がトップに浮上した。

レースも1/3を過ぎた22周目を終え、まずトップの12号車がピット作業を行う。3番手の8号車も同時に、次の周には19号車もピットへ向かう。この後、31周目までにGT500の全車が所定のピット作業を終えた。

これで12号車(平峰一貴)が再びトップに戻る。約3秒後方に8号車の野尻智紀。その後ろは少し離されて3番手の19号車(宮田莉朋)が続く。レース中盤は12号車がジワジワと8号車を引き離し、逃げ切り体制を築いたかに思われた。

しかし、40周を過ぎたあたりから2台の差は縮まっていき、残り14周目には1秒を切る。終盤のペースは8号車の野尻がやや勝っており、12号車の平峰がこの猛攻をチェッカーまで守り切れるかが焦点となった。12号車の平峰は最終ラップに入るまで、何度かインを突こうとする野尻をミスなくブロックし続けた。

そして最終ラップに入るホームストレートで、12号車にガス欠症状が発生。これを8号車の野尻が見逃すはずはない。3コーナー先で一気にスピードの落ちた12号車をズバッと抜き、8号車はそのままトップでフィニッシュラインを駆け抜けた。12号車の平峰はあらゆる燃費走行を駆使して、なんとかゴールラインまでマシンを運んだ。一時は20秒もの差を付けた19号車にもメインストレートに入ってから抜かれるが、それでも3位でフィニッシュを果たした。

優勝はNo.8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)で、前戦オートポリスに続き連勝。これでドライバーランキング首位の1号車・山本尚貴に5ポイント差まで詰め寄り、最終戦富士に挑むことになった。No.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/宮田莉朋)は前回の第4戦もてぎ同様の2位。3位はNo.12 カルソニック IMPUL GT-R(平峰一貴/松下信治)で、勝利は逃したものの、この完走で最終戦のタイトル争いに加わることになった。

No.1 STANLEY NSX-GT(山本尚貴/牧野任祐)は12位と、ポイントの加算はできなかったが、ドライバーランキング首位のままで最終戦に臨む。最終戦でタイトルを争うのは、この1号車をはじめ、ランキング上位の6チームとなった。

GT500
No.8 ARTA NSX-GT
福住仁嶺
今回のもてぎ戦に向けて、前回(第4戦)行われたときのパフォーマンスがいいものではなかったので、(第6戦)オートポリスで優勝したときの流れからいろいろクルマを見つめ直すことができたのかなと思っています。優勝をきっかけに、チームの雰囲気もそうですが、チームが一丸となることができたのかなと思います。今回、決勝は3番手からスタートして、すぐに12号車に抜かれてしまって若干焦った部分はありました。そのあと僕の走りのほうで細かいミスだったり、前とのギャップが大きく開いてしまう瞬間もあったりして……。なんとか後ろまで追いついてピット(イン)、と言う形で『あとは野尻(智紀)さん、申し訳ないけどがんばって!』という感じでバトンタッチしました。そのあと、本当に野尻さんの強い走りで12号車を追い詰められたことがきっかけで、向こう(12号車)がガス欠になってしまったという状況に追い込むことができたと思うので、本当に”野尻さんサマサマ”だと思います。今回は、周りの人たちに助けてもらった優勝だと思うので、もうみなさんに感謝しています。(最終戦に向けて)ここ数戦で連勝することができていることと最終的にここまでポイントを獲ることができた以上、目指すはチャンピオンしかないと思います。その中であまりいろんなことに意識しすぎず、きちんと目の前に出てきた問題をコツコツと確実に解決していけば、自然と結果につながってくると思います。最終戦もこの勢いのまま、野尻さんの流れに乗せてもらいながらがんばりたいと思います。

野尻智紀
福住(仁嶺)選手はそう言っていますが、いつも予選で前のグリッドを獲得してくれるのはだいたい福住選手ですし、毎回、そこからレースウィークをキチンと始められることは、僕たちの強みでもありますからね。『いつもあんまり仕事してないな』って(冗談で)裏では言っていますが、そんなことないよと(笑)。ふたり一緒にやって、チームで一緒にやっていることが僕たち全員の力だと思うので。最後、僕が強い走り(をしたよう)に見えたかもしれないけれど、そういう走りができるのも福住選手がいてこそ、ということをまず彼にも言いたいなと思います。僕のスティント(走行)に関しては、明らかに12号車のピット(作業時間)がちょっと早いなと直感的に思いました。ピットが早いということは、8割方給油が短いとかそういうことに繋がってくるので、これは(12号車の燃費が)結構厳しいんじゃないかなと(思った)。プッシュしていればなにか起こるという可能性があるなと思い、とにかくプッシュし続けました。福住選手が前半のスタートで少し失ってしまったものを、なんとかチームメイトとして取り返さないといけないという思いを強く持ち、最後まで走れたことがこの優勝を引き寄せられたのかなと思います。これまでたくさんチームのみんなにもがんばってもらいましたし、Hondaさんもそうですし、ブリヂストンタイヤも絶対的な信頼をおけるパフォーマンスを発揮してくれました。またコースサイドで応援してくださる方々を含め、たくさん力をもらいましたし……。ここ最近、ありがたいことに同じような話をたくさんお話しさせていただく機会が多いですけど、本当に力をもらいました。ありがとうございました。今大会もたくさんの方々に来ていただき、走っていて本当にうれしい気持ちになるばかりで、いい光景を目にすることができたなと。ただ、コロナ以前と比べればまだまだお客さんの数も(少ない)と思いますけど、(最終戦には)なるべく多くの方に来ていただきたいなと思います。また、たくさんの方々の前でこのレースを見てもらってレースを楽しんでもらえるよう……次戦はチャンピオン争いも佳境に入りますので、楽しんでもらえるように僕たちも全力でプッシュしたいと思います。

GT300
No.21 Hitotsuyama Audi R8 LMS
川端伸太朗
まずは今回優勝できて、本当に本当に嬉しいです。去年の優勝(第6戦鈴鹿)からポイントから遠ざかっていたので。スタートを担当しましたが、昨日の予選が終わった状態のタイヤを見たら、決勝には自信が持てるくらいの表面をしていたのでロングスティントには自信がありました。55号車が速く前の方に抜けていったんですけど、後半は僕らが一番速いのかなというペースで走れていたので、前を走る88号車をターゲットに、88号車が(ピットに)入ったらプッシュしてから(自分たちもピットに)入ろうという段取りで(リアタイヤの)2本交換で篠原(拓朗)選手にバトンを渡しました。その最終周のプッシュも決まって、ピットワークも決まって、篠原選手が最終スティントでいい走りをしてくれたのがすべてにおいていい流れを作れた感じでした。今回、金曜日のミーティングの時点で、僕のワガママをかなり聞いてもらうかたちになったんです。それで持ち込んだセットから大幅に変更しました。ちょっとイレギュラーな感じのセットだけど『こうするしかないな』というのが僕の中で見えて、金曜日のかなり夜遅い時間までかかってメカニックさんに修正してもらったんです。僕が乗って調子が良くて、篠原選手にも乗ってもらって、すごく乗りやすいと言ってくれました。エンジンも調子良くなった段階でクルマの方もだいぶ決まってきて、一発もあるし磨耗もしっかりもってくれるタイヤを用意してくれたヨコハマタイヤさん、すべてが噛み合った結果がノーポイントから優勝できた要因かなと思います。今年はノーポイントが続いていたためにシリーズ争いに加われなかったのは非常に悔しいです。でも、ここに来ていい結果も出ましたし、相方の篠原選手もかなり成長してすごくいい走りをしてくれて、僕自身も刺激を受けました。来年に向けて、またふたりでタイトル争いに加われるように最終戦をしっかり戦いたいと思います。

篠原拓朗
今の気持ちは本当に『最高』のひと言に尽きると思います。チームのみなさんや応援してくださっている方々やファンのみなさまにも、いい結果が報告できて非常に嬉しいです。スタートした川端(伸太朗)選手が非常にハイペースで走っていて、『ちょっと僕、大丈夫かな』っていう不安もありましたが、チームも非常に速いピットワークでドライバー交代をさせてくれて、(リアタイヤの)2本交換だったのでアウトラップも非常に速く走れました。チームからは実質2番手だよというのは聞いていましたが、55号車がだんだん迫ってきてオーバーテイクできて……そこから先はちょっと分からないですが、ともかく本当に勝てて良かったです。今週のレースは川端選手にセットアップを含め、いつも以上にものすごく引っ張っていただいたレースウィークだったので、最終戦は多くのお客様に見に来ていただけるということで、もう少し僕も力になって、また良い結果を出せるようにがんばりたいと思います。

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カテゴリー: F1 / SUPER GT