佐藤琢磨 インディカー・シリーズ
佐藤琢磨が、2017年インディカー・シリーズ 最終戦ソノマのレース週末を振り返るとともに、レイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰する2018年シーズンにむけた抱負を語った。

北カリフォルニアの丘陵地帯を縫うように走るソノマのロードコースで催されたシリーズ最終戦は、佐藤琢磨の2017年ベライゾン・インディカー・シーズン後半戦を象徴するような一戦となった。予選で絶好調だったにもかかわらず、トラブルのために好成績を収める絶好のチャンスを逃した。

No.26 アンドレッティ・オートスポーツ・ダラーラ・ホンダに乗る佐藤琢磨は予選を5位で通過したが、これはホンダ勢のトップにあたるもの。佐藤琢磨が予選でホンダ勢の最高位となるのは今シーズン6度目のことだが、これはインディカー界のレジェンドでもあるスコット・ディクソンと並ぶ記録だ。

ちなみに、彼らふたりに続くドライバーは今季2度しかホンダ勢のトップに立っていない。ところが、佐藤琢磨はレース序盤にパンクに見舞われてリードラップから転落。さらに駆動力を失ってリタイアする羽目に陥った。これさえなければ佐藤琢磨がランキング5位でシリーズを終えるのは簡単だっただろうが、このおかげでランキング8位に後退。実に残念なシーズンの幕切れとなった。

フリープラクティスの前日にあたる木曜日に行なわれたプリテストは期待の持てる内容となった。「例年、オープンテストはレースの1週間前に行なわれてきました」と佐藤琢磨。

「僕たちはここにやってきてテストを行なうと、機材をそのまま残してインディアナポリスに帰り、レースウィークにまた戻ってくるというのがこれまでの流れでした。ところが今年は前日にオープンテストが行なわれたので、実質的に4日間のイベントとなりました。これはとても好ましいことです。なぜなら、ソノマがとてもチャレンジングなのはそのコーナーのレイアウトだけによるのではなく、天候、風向き、温度などが1週間前のオープンテストとレースウィークとで大きく異なることがあるからです。けれども、今回はとても充実したテストとなり、僕たちが思うどおりの作業ができました」

「前回、僕たちがここでテストを行なったのは4月のことで、このときは基本的なセットアップをいくつか試しました。なぜなら、アンドレッティ・オートスポーツは今年、セットアップのフィロソフィーに大きな変更を加えたからです。昨年、ライアン・ハンター-レイは力強い走りを見せ、チームは自信を抱いていました」

金曜日最初のセッションを12番手で終えた佐藤琢磨は、その後、9番手にポジションを上げ、土曜日に行なわれた3回目のセッションでは7番手まで躍進した。

「マシンのバランスに大満足する必要は必ずしもありませんでしたが、セッションごとに状況はどんどんよくなっていきました。そして予選までにすべてがまとまり、その状態を維持することができたのです。とても楽しいソノマの予選でした!」

おそらくそうだったのだろうが、佐藤琢磨がこのコースで納得のいく予選を戦ったことはこれまで1度もない。ところが今回は、予選最初のセグメントを4番手で終えると、第2セグメントでは5番手となり、最後のセグメントであるファイアストン・ファスト6では、予選を席巻したチーム・ペンスキーの4人のドライバーに続く5番グリッドを手に入れたのである。

「本当に素晴らしいコースです。高低差が大きくて、高速コーナーもあるし低速のテクニカルなコーナーもある。しかも路面の変化がとても大きいのです。山や丘から風が吹き下ろすので、コースに少し砂が乗ってとてもグリップは低くなります。このためデグラデーションが激しく、おいしいラップは1周しかないような状況となるため、ファイアストンは今回、コンパウンドを変えてきました。毎周、ひとつコーナーを曲がるために路面は異なるので、タイアの性能を最大限引き出すのはとても難しいのです。正しいバランスと安定性を手に入れることが重要となります」

「したがってとてもチャレンジングなのですが、このコースでこれほどコンペティティブなマシンを手に入れたことはありません。僕は走行したラップを心から楽しみましたし、マシンは最高の走りを見せてくれました。ソノマの予選を楽しめたのは、今回が初めてです!」

強敵ペンスキーは、その1週間前に規則で認められたテストを実施していたので、彼らを打ち負かすのは不可能に近かった。それでも佐藤琢磨たちは自信満々だった。決勝レースでよりよいマシンを手に入れるため、4名のドライバーが異なるプログラムで臨んだ最後のセッションを佐藤琢磨は8番手で終えた。

「僕の前にいたドライバーはチャンピオンシップを競い合っていましたが、もしも状況が許せばもちろん彼らにもチャレンジするつもりでした。ただし、彼らのタイトル争いには関係したくないと思っていました」

チップ・ガナッシのスターであるディクソンもペンスキーの4名を相手にタイトル争いを演じていたので、佐藤琢磨はオープニングラップを慎重に走った。

「ターン2からターン3にかけて、好スタートを決めたスコットとサイド・バイ・サイドとなり、その後、彼は先行していきました。僕はポジションを守ろうとしてラインをクロスしましたが、ターン4でアレックス・ロッシがイン側に飛び込んできました。続くターン5で彼はアウトにはらみ、僕は押し出される格好となって砂地に足を落とします。彼の行動には失望しました。これが原因になったかどうかはわかりませんが、その数周後にパンクに見舞われたのです」

このとき、グラハム・レイホールにも抜かされたので、タイア交換のため6周目にピットストップを行なうまでに佐藤琢磨は8番手となっていた。

「パンクが明らかになったのはターン2だったので、ほとんど1周にわたってスロー走行をしなければいけませんでした。おかげでフロア、ウィングレット、バンパーなどがダメージを受け、この段階で非常に困難な状況に追い込まれました」

この遅れで佐藤琢磨はラップダウンになったものの、イエロー・コーションになればリードラップに返り咲く可能性が生まれるので、それほど悲観する必要はなかった。ところが、このレースはなんと一度もコーションにならなかった。もっとも、どちらにしても結果は変わらなかったといえる。なぜなら、佐藤琢磨は62周でリタイアに追い込まれたからだ。

「僕たちは最善を尽くしました。その後、駆動力を失い、マシンを停めなければならなくなりました。今回は力強く戦えたはずなので、こんな形でレースが終わるのは残念でなりませんでした。過去6レース、僕たちは挑戦し続け、常にトップクラスの速さを手に入れてきたので、今回は本当にいい結果が欲しいと思っていました」

結果的に今回のソノマが、佐藤琢磨が1シーズンを過ごしたアンドレッティ・オートスポーツと戦う最後のレースとなった。なぜなら、2018年は佐藤琢磨が2012年に在籍したレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに復帰することが決まったからだ。アンドレッティで過ごした今シーズンのハイライトがインディ500だったことは、いまさらいうまでもない。

「シーズンを通じて、チームのメンバーは傑出した働きを示してくれました。どれほどお礼を申し上げても十分とはいえません。スタート前には、グリッド上でみんなと素晴らしい時間を分かち合いました。インディ500で信じられないような成績を収めることができたのは彼らのおかげで、いつもホンダ勢でもっとも速いマシンを用意してくれました。このことを僕は誇りに思っていますし、僕たちの関係はこれからもずっと変わることはないでしょう。彼らと新しいシーズンを迎えられないことは残念ですが、これがモータースポーツです。僕たちは前に進まなければいけません」

今回“前に進む”ことはレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングに“戻る”ことを意味する。

「彼らのチームに戻ってこられて、本当に嬉しく思っています。ボビー・レイホール、マイク・ラニガン、デイヴィド・レターマンは、2013年に互いに違う道を歩むことになってからも、ずっと僕を応援してくれました。ボビーがチームに留まって欲しいと望んでいたことは、もはや公然の秘密です。彼らが過去3シーズンに残した成績には誰もが感銘を受けています。グラハムはいつも素晴らしい戦い振りを見せてきました。なにしろ、たとえ予選で苦戦しても、決勝日にはいつも挽回するのですから!」

「ボビーのチームに戻ることが楽しみで仕方ありません。彼らはとても強力なチームで、エンジニアは優秀で、しかも2018年からはまったく新しいユニバーサル・エアロ・パッケージが導入されるので本当に楽しみです。チームは大きな可能性を秘めていて、非常に強力になったとしても不思議ではありません」

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カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー