佐藤琢磨 インディ500ピットミスをChatGPT相談「0.07秒早ければ完璧だった」

近年、AIの活用はモータースポーツ界にも広がっており、多くのトップチームが戦略やデータ解析に人工知能を取り入れている。ただ、ドライバー本人が運転操作に関する助言をAIに求めるのは極めて異例だ。
F1では2002年から2008年にかけてジョーダン、BAR、スーパーアグリから通算90戦に出走し、表彰台1回という記録を残した佐藤琢磨は、インディカーに転向後、6勝、14回の表彰台、10回のポールポジション、そしてインディ500での2勝という輝かしい実績を築いた。その佐藤琢磨が、レース中に犯したわずかなミスの原因をAIに問いかけたという。
今年の第109回大会に向けた準備中、佐藤琢磨は時速375kmでのクラッシュに見舞われながらも、予選2番手、最終プラクティスでも2番手につけるなど、48歳にしてなお圧巻の速さを披露。本戦でも序盤から好調で、レース最多となる51周で首位を走行した。しかし、3回目のピットストップで停止位置をわずかにオーバー。マシンをクルーが後方に押し戻す羽目になり、貴重なタイムを失ったことで上位争いから脱落した。最終的な順位は11位だったが、マーカス・エリクソンとカイル・カークウッドの失格により9位に繰り上がっている。
この痛恨のミスについて、佐藤琢磨はIndyCar on FOXのFacebook動画で次のように語った。
「マシンはすごくいい状態でしたし、最初の2回のピットストップもすごくうまくいってたんです。でも、3回目でちょっとミスしてしまって。6フィート(約1.8メートル)行き過ぎちゃったんですね」
「それで、たぶん皆さん、『じゃあ1秒早くブレーキ踏めばよかったんじゃない?』って思われるかもしれません。でも、やっぱり細かい部分がすごく大事なんです。自分では正確に計算できなかったので、ChatGPTに聞いてみたんです」
「『時速60マイル(約96キロ)でピットレーンを走っていて、6フィートオーバーしちゃった場合、どれくらい早くブレーキ踏めばよかったの?』って」
「そしたら、0.07秒、つまり7/100秒だけ早くブレーキを踏んでいれば止まれてた、って答えてくれました。完璧なピットストップにするには、ほんの一瞬早く踏むだけだったみたいです」
「なので、次はそれをちゃんと意識して臨みたいと思います」

実際に記者も同様の質問をChatGPTに投げかけたところ、同じく「約0.068秒早くブレーキを踏めばよかった」との回答が得られた。等速減速を前提とした単純計算ではあるが、さらにインディカーの減速性能を加味させて再計算しても、その差はわずか0.072秒と、大きくは変わらなかった。
コンマ数秒の判断が結果を左右する世界で、AIがドライバーの課題分析にも活用される時代が、すでに到来している。
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー