F1モナコGP決勝レポ:ノリスが新戦略ルール制す 角田裕毅は不運の接触
2025年F1モナコGP決勝は、ランド・ノリスがキャリア初となるモナコ制覇を果たし、今季2勝目を挙げる劇的な展開となった。新たに導入された義務的2ストップ制が戦略を複雑化させる中、ノリスは激しいプレッシャーを受けながらも冷静にレースを掌握し、ポール・トゥ・ウィンを決めた。

予選での接触によるグリッド降格や序盤の接触事故、波乱のピット戦略など、モナコらしい混乱も多く見られた今回のレース。

フェルスタッペンはオフセット戦略を採用して一時はトップを走ったが、終盤に2回目のピットを余儀なくされ、勝負権を失った。ルクレールとピアストリが2位・3位に入り、マクラーレンはモナコでの17年ぶりの勝利をダブル表彰台で彩った。

角田裕毅はソフトスタートの果敢な戦略に出たものの、序盤でガスリーに追突される不運によりレースが崩れ、18位完走にとどまった。アロンソとガスリーは途中リタイア、終盤にはラッセルがペナルティを受けるなど、見どころ満載の78周となった。

レース展開
予選でランド・ノリスがトップタイムを記録した直後から、注目はモナコ市街地での78周の決勝と、新たに導入された義務的な2回のピットストップルールによって午後のレースがどのように展開するかに移った。

簡単に言えば、すべてのドライバーが3種類のタイヤセットを使用する必要があり、そのうち2種類は異なるスリックタイヤでなければならない。タイヤサプライヤーのピレリは、いつものように「何が起きても不思議ではない」として戦略ガイドを示した。

この新ルールを最大限に活かそうとしていたのが、10グリッド降格のオリバー・ベアマンと4グリッド降格のランス・ストロールだった。両者ともプラクティス中の赤旗や進路妨害、接触などでペナルティを受け、最後方からのスタートとなった。

また、ルイス・ハミルトンもグリッド降格を受けたひとりだ。最終プラクティス終盤のクラッシュから復帰し予選では4番手につけたが、Q1でマックス・フェルスタッペンの走行を妨害したとして3グリッド降格となった。

スタート時、ベアマンのマシンには「安全ではない状態」の注意が入っていた中、グリッド上の大半のドライバーがミディアムタイヤを選択。一方、フェルスタッペン、フェルナンド・アロンソ、ハミルトン、カルロス・サインツ、ジョージ・ラッセル、キミ・アントネッリ、フランコ・コラピント、ストロールはハードを選び、角田裕毅は唯一ソフトタイヤでスタートした。

モナコGP F1 ランド・ノリスは、予選で見事な走りを披露しポールポジションからスタート

スタート直後、ノリスはターン1のサン・デボーテで大きな2輪ロックアップを喫しながらもポジションを守り、シャルル・ルクレール、オスカー・ピアストリ、フェルスタッペンがそれに続いた。トップ10の順位に変動はなかった。

だがまもなくVSC(バーチャル・セーフティカー)が導入される。ガブリエル・ボルトレトがアントネッリとヘアピンで接触しながら並走した末、ポルティエで壁にクラッシュ。ピットに戻り修復を試みた。また角田裕毅、ピエール・ガスリー、ベアマンもこのタイミングでタイヤ交換を行った。

4周目にVSCが終了し、レースが再開。ノリスはペースをコントロールしながらルクレールとの差を広げた。ボルトレトとアントネッリの一件は審議されたが、裁定は「おとがめなし」となった。

9周目、事件はさらに激化する。ガスリーがヌーベルシケイン手前のブレーキングで角田裕毅のマシンに追突、ピットに戻ったもののそのままリタイアとなった。「あいつ何やってんだ?バカか?」と角田裕毅は無線で憤った。

この接触によるデブリ処理中、フェルスタッペンはピアストリに対してシケインからタバクへの区間で仕掛けるが、マクラーレンの堅い防御に阻まれ、無線では苛立ちをあらわにした。だがこちらも審議の結果は不問。

モナコGP F12025年F1モナコGP:ノリスがターン1でロックアップするもトップをキープ

その後、ニコ・ヒュルケンベルグとコラピントがグリーンフラッグ下でピットイン。ガスリーがウィリアムズのガレージにマシンを停めた影響で一時ピットレーンが閉鎖された直後の出来事だった。

アイザック・ハジャーは5位走行中にソフトへ交換し、チームメイトのリアム・ローソンの直前、8位で復帰。戦略がはっきりと見えたのは20周目、再びハジャーがピットインしハードに履き替え、再びローソンの前に出る動きを見せた。

アロンソとエステバン・オコンも次周に反応してピットイン。アロンソは無線で「このタイヤじゃプッシュできない」と苦言。ストロールとベアマンもタイヤを交換し、ベアマンはすでに2ストップ義務をクリア。

ハミルトンはエンジニアの指示で19周目にハードへ交換。ハジャーの前でコース復帰。ノリスもすぐにピットインし4番手で復帰、大きなクリアエアを得てアタックを開始。

ピアストリもリーダーのルクレールをアンダーカットすべくピットインしたが、やや遅れ気味のストップにより作戦は不発に。ルクレールは22周目にタイヤ交換し、ピアストリとノリスの間に戻った。

モナコグランプリ異なる戦略で先頭に立つフェルスタッペン

「じゃあ次は何をすべきなんだ?うまくいかなかったよね」とピアストリが無線で嘆く。マクラーレンが戦略を練る中、まだピットに入っていなかったのはフェルスタッペン、ローソン、アレクサンダー・アルボン、サインツ、ラッセル、アントネッリだった。

中盤には、ラッセルがサインツに迫り、アルボンの前にスペースを作ろうとしていた。これはウィリアムズのチームプレイの一環と見られた。メルセデス代表トト・ヴォルフもラジオでラッセルを鼓舞。

28周目、フェルスタッペンがミディアムに交換し4番手で復帰。上位3台は再びノリス、ルクレール、ピアストリに戻った。後方ではオコン、コラピント、ボルトレトも2度目のピットインを済ませ、サウバーの新人ボルトレトはソフトに履き替える意外な選択。

バックマーカーに不満を漏らすノリスとルクレールに対し、ベアマンはストロールとのラスカスでの激しい攻防や、スイミングプール出口での縁石越えと、波乱のレースを続けたが大事には至らなかった。

レース中盤、ノリスがルクレールに約6秒、ピアストリにさらに5秒差を築き、フェルスタッペンはその後方2秒で追走。無線で「ギアシフトがまるでモナコ1972年みたいだ」とジョークを飛ばす。

モナコGP F1 2025年のF1世界選手権レース中盤も先頭を走るノリス、背後に迫るのは母国レースのルクレール

ローソンとアルボンが再度ピットインしてそれぞれソフトとミディアムに履き替え。これで未交換はサインツ、ラッセル、アントネッリの3人のみ。ボルトレトはこの時点で3回目のピットインを行いミディアムにチェンジ。

38周目にはアロンソがラスカス出口でスモークを上げてリタイア。ピットで順位を落とし、最終的にはパワーユニットのトラブルを抱えていた模様。

41周目、ローソンとアルボンが再び同時ピットインして義務の2ストップを完了。サインツはアロンソのリタイアにより入賞圏内に浮上。

ウィリアムズはさらに戦略を進化させ、アルボンが後続を抑えてサインツにクリアエアを提供。ラッセルとアントネッリはこれに不満を募らせ、ラッセルは「危険なほど遅い」と無線で非難。

49周目、ピアストリが最初に2回目のピットイン。ルクレールがそれに続き、ノリスも50周目にピットインして新タイヤに。フェルスタッペンはステイアウト。

ヌーベルシケインでラッセルとアルボンが接触寸前。ラッセルはアドバイスを無視してポジションを返さず、「あいつが不安定すぎる。ペナルティでいいよ」と無線で語った。これによりラッセルにはドライブスルーペナルティが科された。

サインツとラッセルは55周目に新タイヤを装着。ラッセルには「できるだけペナルティ適用を遅らせる」と指示が出され、残る未交換はアントネッリのみ。

60周を過ぎてもフェルスタッペンは先頭。だが2回目のストップが残る中、ノリスが接近。後ろにはルクレールも迫り、ピアストリの助けを求めるノリス。「オスカーはどこ?シャルルを抑えてくれ」と無線で訴えた。

モナコGP F1 マックス・フェルスタッペンフェルスタッペンは終盤まで先頭を維持、だが2回目のピットを残した

緊張の数周をノリスは耐え、フェルスタッペンがついにラスト2周でピットイン。これでノリス、ルクレール、ピアストリが再びトップ3に復帰。

ノリスはその後ファステストラップを記録し、オーストラリア以来となる今季2勝目を挙げた。観客の声援を受けながら「モナコ、最高だ」と無線で叫んだ。

フェルスタッペンは4位、ハミルトンは5位でフィニッシュ。アイザック・ハジャー、オコン、ローソン、アルボン、サインツが入賞。ラッセルはそれに続き、ベアマンは20番手スタートから12位まで浮上。

以下、コラピント、ボルトレト、ストロール、ヒュルケンベルグ、角田裕毅、アントネッリと続き、後者は終盤に義務ストップを完了。アロンソとガスリーはリタイアとなった。

モナコGP F1 ランド・ノリス誰にも止められなかったノリス、モナコで歓喜の勝利

ランド・ノリス
「最高の気分だ」とノリス。「長くて厳しいレースだけど、楽しかった。かなりの時間プッシュできたし、最後のコーナーはちょっと緊張したけど勝てた。モナコで勝つのが夢だった。夢が叶った」

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カテゴリー: F1 / F1レース結果 / F1モナコGP