レッドブルF1 オリバー・ミンツラフ新体制の裏で続く権力の綱引き
レッドブルはF1の将来に向けて新たな一手を打った。その動きとして大きな注目を集めているのが、2026年シーズンにアイザック・ハジャーがマックス・フェルスタッペンのチームメイトを務めるという決定だ。オランダ人王者と同じガレージを共有することは、ここ数年、誰にとっても極めて厳しい挑戦だった。チーム内の比較は常に苛烈で、経験豊富なドライバーでさえ、そのプレッシャーに耐えきれず後退してきた。直近の前例を見ても、楽観できる材料は多くない。

レッドブルのハジャー 新レギュレーションが与える好機
セルジオ・ペレスは経験を武器に衝撃に耐えようとしたが、時間とともに精神面の脆さが目立つようになり、パフォーマンスは徐々に低下した。リアム・ローソンや角田裕毅に至っては、言うまでもない。
一方でハジャーは異なるプロフィールを携えてレッドブルに加わる。レーシングブルズで過ごしたF1デビューシーズンは堅実だった。

51ポイントを獲得し、安定した成長を示したことが評価され、チームは彼に賭ける決断を下した。昇格は当然の結果とも言えるが、同時に大きな期待を背負うことになる。若きフランス人は、新たな立場の重圧をすでに感じていることを隠していない。トップチームへの昇格は、露出、メディアの注目、そしてはるかに大きな責任を伴う。

「このレベルの知名度やメディアの注目には、正直あまり居心地の良さを感じていない。うっとうしいけど、消える方法は見つけるよ。マスクをかぶるかもしれないし、分からないけどね」

冗談めかした言葉ではあるが、そこには実際の戸惑いがにじんでいる。

ただし、ハジャーが身を置く環境は、近年よりも抑圧的でない可能性もある。ヘルムート・マルコやクリスチャン・ホーナーといった強烈な存在が去ったことで、内部の緊張が和らぐ余地があるからだ。新体制は、ドライバーの日常的なマネジメントを重視している。ローラン・メキースはシーズン前半ですでにハジャーと仕事をしており、重要な拠り所となる存在だ。目標は、彼を守りつつ成長を導くことにある。

それでも、チームがフェルスタッペンを中心に回り続けることは明白だ。技術面・戦略面の指針は彼から発せられる。ハジャーは迅速に適応し、不均衡なチーム内対決と共存する術を学ばなければならない。しかし、2026年F1レギュレーションは、その力関係を多少なりとも揺さぶる可能性がある。変革は、レッドブルのセカンドドライバーにとって、過去の誰よりも多くのチャンスをもたらすかもしれない。

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ホーナーとマルコ退任後も続く レッドブルの権力闘争
レッドブルでもう一つの火種となっているのが、内部に根付く権力闘争だ。ホーナーとマルコの退任により、一時的な安定が訪れたように見えるが、実際にはそれは長い戦いの一局面にすぎない。意思決定は、企業としてのオーストリア側からも下されている。

タイ側が多数派であることを踏まえつつも、スポーツ運営の中枢に再び強く関与しようとする勢力が存在する。CEOのオリバー・ミンツラフは、より強い決定権を取り戻そうとしている。摩擦は決して解消されていない。この状況を批判的に捉えているのが、元ウィリアムズF1ドライバーのファン・パブロ・モントーヤだ。

「聞こえてくる話では、オーストリア側はもっと深く関与し、チームを直接管理したがっている。それは諸刃の剣だ。もし彼らが過剰な支配力を手にすれば、すべてが独裁に変わりかねない。ひとつの方向性、ひとつのやり方、単一のリーダーシップの下でね」

その言葉は、大きな変革を経た今なお、レッドブル内部の均衡がいかに脆弱であるかを浮き彫りにしている。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング