スーパークリッピングとは? 350kW案は2026年F1の“プランB”になり得るのか
2026年F1は、50/50のハイブリッド配分を軸とする新レギュレーションによって、エネルギーマネジメントがこれまで以上に重要になる。その中で注目されているのが「スーパークリッピング」だ。

バーレーンテストでマクラーレンが350kWまで引き上げてテストしたことで、この仕組みが“調整可能なレバー”として機能する可能性が浮上している。

スーパークリッピングとは
スーパークリッピングとは、ドライバーがアクセル全開の状態でもエネルギー回収を行う状況を指す。

通常、全開時は最大限のパワーを後輪へ送るが、2026年F1マシンではその一部をMGU-Kを通じてバッテリーに蓄えることができる。その結果、瞬間的な最高速は低下する。つまり「全開なのに遅くなる」という現象が起きる。

現行の2026年レギュレーションでは、この回収量は最大350kWのうち250kWに制限されている。だがマクラーレンは、350kWフル回収のテストを実施した。

オスカー・ピアストリ(木曜)とランド・ノリス(金曜)の最速ラップを比較すると、ラップタイム差はわずか0.010秒ながら、速度プロファイルは大きく異なった。ノリスは複数のストレートで最高速が低下しており、より多くのスーパークリッピングを使用していたと推測される。

一方、ターン12ではピアストリの速度が約20km/h低下していた。そこでも両者は全開だったが、エネルギー回収の有無が速度差として表れた。

これが、フェルナンド・アロンソが「速いコーナーでは50km/h遅くなる」と語った背景だ。

350kWへの引き上げは“プランB”か
マクラーレンのアンドレア・ステラは、回収上限を350kWまで引き上げることを提案している。

現在は250kW制限だが、350kWまで回収できれば、ドライバーがアンナチュラルなリフト・アンド・コーストを行う必要が減る可能性があるという。

FIAのニコラス・トンバジスは具体策への言及は避けたものの、調整の可能性自体は否定していない。

FIAが持つ主な選択肢は二つだ。

・レース時の電力展開を250kWに抑え、全体出力を下げる代わりにエネルギー不足を緩和する
・スーパークリッピングを350kWまで引き上げ、全開時の回収を増やす

どちらもエネルギー不足状態を緩和する方向の調整となる。

2026年のF1世界選手権

技術よりも難しい“政治”の問題
問題は技術よりも政治だ。

2026年F1ではエネルギー効率が大きなパフォーマンス差を生む。もしFIAが回収量を増やせば、効率面で優位に立つメーカーのアドバンテージは薄まる。

さらに、すべてのパワーユニットメーカーが同じように350kW回収を実装できる保証もない。特定メーカーにとっては不利な変更になる可能性もある。

また、バーレーンのような強いブレーキングゾーンが多いサーキットでは問題が顕在化しにくいが、メルボルンやジェッダのように回収機会が限られるコースでは影響が大きくなる。

つまり、競技バランス、メーカー利害、ファン体験の三者がぶつかる構図だ。

FIAはまず開幕戦を見極める
FIAは即断するつもりはない。

トンバジスは、実際のレース状況を確認してから判断すると明言している。ガバナンスプロセスも必要なため、オーストラリアと中国の間で即時変更という可能性は低い。

ただし、何か月も放置するとも限らない。

もし開幕数戦で、全開にもかかわらず大幅に速度が落ちるシーンや、不自然なエネルギーマネジメントが頻発すれば、スーパークリッピング350kW化は2026年F1のプランBとして現実味を帯びることになる。

結局のところ問われるのは、競技の純粋な技術優位性を守るのか、それともシリーズ全体の魅力を優先するのか。その判断は開幕後のレース内容次第だ。

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カテゴリー: F1 / F1マシン