ホンダF1に“異常振動”問題 バッテリー損傷の実態と開幕への課題

バルセロナのシェイクダウンから走行は限定的となり、続くバーレーンでは状況がさらに悪化。2回目のテストでは3日間合計128周にとどまり、最終日はスペア不足によりわずか6周で終了した。ほとんどのライバルが300周以上を走破するなか、開発距離で大きく出遅れる形となった。
異常振動がバッテリー系統に影響
HRCの渡辺康治社長はテストを振り返り、次のように語った。
「テストの結果として、我々の前に立ちはだかる壁は確かに高いと感じています」
武石伊久雄専務は振動問題の実態について説明した。
「走行中に通常より強い振動が発生しており、それがバッテリーパックにダメージを与えていることは確認できています」
ただし、バッテリーそのものが根本原因とは断定していない。
「単一の原因であれば対処は比較的しやすいのですが、複数の要素が連動して振動を生んでいる可能性があります。そのため、原因の特定には時間がかかる可能性があります」
現在、栃木県のHRC Sakuraではシャシー、エンジン、ギアボックスを組み合わせた仮想トラックテストを実施。実走に近い条件で振動の再現と解析を進めているが、根本原因の特定には至っていない。

ホモロゲーションとアップグレード制限
3月1日がパワーユニットのホモロゲーション期限となる。バーレーンで走らせた仕様が登録の基礎となるが、信頼性向上を目的とした変更はFIAの承認を得ればシーズン中も可能だ。
ただしパフォーマンス向上については「追加開発・アップグレード機会」制度により厳しく制限される。エンジン性能指数に基づき、一定割合以上劣る場合にのみ追加開発が認められる仕組みだ。今回のトラブル対応により、ホンダは開発リソースの一部を早期に消費することになる。
武石専務は優先順位を明確にした。
「現段階では、まず目の前の問題を解決することを最優先に考えています」
MGU-K回生能力の憶測と実情
バーレーン後には、MGU-Kの回生能力が最大350kWどころか250kWにも達していないとの見方も浮上した。
しかしホンダ側は、走行プログラムの一部だけが切り取られた可能性を示唆している。信頼性問題とスペア不足を踏まえ、エンジンを保守的に運用した結果だと説明している。
信頼性に問題を抱える場合、エンジンを完全なプログラムで走らせられないのは一般的だ。開幕戦オーストラリアGPでは恒久的解決ではなく、まず振動を抑え込む暫定対策が施される見通しだ。

新設計バッテリーと相関問題
2026年規定に合わせ、ホンダはバッテリーを完全新設計。350kW対応のため内部構造を刷新し、従来の一体型から二層構造へと変更している。
また、アストンマーティン側の要望でパワーユニット全体のコンパクト化を図ったことで、補機類や搭載方法も見直された。
武石専務は次のように語った。
「ある程度の振動は想定していましたが、実際の数値はそれを上回っていました」
Sakuraでの検証と実車条件の相関が完全ではなかったことも、問題の一因とみられている。
過去の教訓と現在の挑戦
今回の状況は、2017年にマクラーレンと組んだ際の苦戦を想起させる。当時も実走環境とシミュレーションの相関不足、予想以上の振動がトラブルを引き起こした。
武石専務は次のように述べた。
「もし事前に想定できていれば、もっと早い段階で対処できていたと思います」
2026年F1は来週末、オーストラリアで開幕する。ホンダとアストンマーティンF1は、まず振動問題の抑制を最優先に、信頼性を確保しながらシーズンを戦うことになる。
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