レッドブルF1特集:アルボンが解説するシミュレータードライバーの役割
レッドブル・レーシング・ホンダのアレクサンダー・アルボンが、チャンピオン争いを繰り広げるF1チームを支える影の功労者「シムドライバー」の役割について語った。
金曜日にコースへ出たマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスがRB16Bでいきなり速さを発揮できるのはなぜか? そこにはいくつかの理由があるが、大きなひとつは、彼らが乗り込む前にレースコンディションとサーキットに合わせてマシンがセットアップされていることだろう。
そして、そのセットアップを担当しているのが、レッドブル・レーシング・ホンダのテスト&リザーブドライバー、アレクサンダー・アルボンだ。
まず、知っておくべきことは、2021年シーズンのF1でレギュラーシートを得られなかったアレクサンダー・アルボンにとってシミュレータードライバーは簡単に受け入れられる仕事ではなかったということだ。
しかし、彼は前向きに取り組み、その努力は本人とチームのためになった。現在、レッドブル・レーシング・ホンダは過去数シーズンで最も強力な状態にあり、アレクサンダー・アルボンは2022年シーズンにウィリアムズからF1に復帰することになった。
では、アレクサンダー・アルボンは、シミュレータードライバーとしての仕事をどのように感じているのだろうか?
「驚くほど楽しめている」とアレクサンダー・アルボンは切り出す。「自分がシミュレーターで行った作業がサーキットで活かされているのを見ると、大きな満足感が得られる。ドライバーたちが『良くなった』とコメントしているのを聞けば、いつだって嬉しい気持ちになる。自分たちがシミュレーターで正しい仕事をしたのだと分かるんだ」
何よりもまずアレクサンダー・アルボンはレーサーであり、本来ならサーキットで戦っていたかったに違いない。しかし、異なる視点からレースを学ぶという意味で、2021シーズンの自分の仕事は大いに役立っているとアレクサンダー・アルボンは考えている。
「過去6〜7カ月は毎週末サーキットの現場にいるし、自分がドライブしないのにサーキットにいることに歯がゆさを感じるときもある。それでも、マシンを速くするためにどのような作業が行われているのかを学べるというのは、僕にとって重要だ」
「なぜなら、ドライバーとしての僕たちは、サーキットでエンジニアたちと膨大な時間を一緒に過ごしていて、ドライビングに集中しているにもかかわらず、全体像を常に把握できているわけではないからさ。だから、プロセス全体に携われるのは良いことだし、来年に向けてより多くの経験が得られるはずだ」
シミュレータードライバーの多忙な日常
アレクサンダー・アルボンはチーム内で複数の役割を担っており、極めて多忙な日々を過ごしている。
「F1でレースしていたときより忙しい。F1をドライブして毎週末レースを戦うのも大変だけど、今の方がもっと慌ただしいね!」とアレクサンダー・アルボンは語る。
アレクサンダー・アルボンの典型的な1週間は、DTMでのレースを終えて日曜日のうちに英国へ戻ったあと、月曜日にオフを取り、火曜日と水曜日はレッドブル・レーシングで2022年シーズン用マシンの作業を進めている。
「2022年シーズン用マシンはまだ “アーティフィシャル”、つまりコンピューターの中にしか存在しないんだ。ここ最近は風洞で作業を進めているけれど、マシンの大部分はシミュレーターに入力した予測数値で構成されている。前週に学んだことを活かしながら毎週進歩を重ねているところだ」とアレクサンダー・アルボンは語り、さらに続ける。
「年初頃はダウンフォースがまだかなり低かったけど、作業を重ねるごとに数値が上がってきている。シミュレーターでドライブするたびにダウンフォースが増えているから、マシンのバランスの変化を確認しつつ、最適化の方法を見極めていかなければならない」
水曜日の作業が終わると、アレクサンダー・アルボンは次のF1レースに向けて気持ちを切り替えることになる。
「ロシアGPを例に挙げると、木曜日はマシンが満足できる状態になっているかを確認する。マックスとチェコのために複数のアイテムをテストし、ウイングレベルや予測される風速、それにバランスなどを確認していく」
「そして、金曜日からは楽しい時間が始まる。FP1とFP2でシミュレーターに座り、RB16Bのオンボード映像をリアルタイムで追いながら、できる限りスピーディーにお互いのデータを確認していく。コース上のマシンとシミュレーターを揃える必要があるけれど、通常は僅かな違いが生まれるので、随時修正していかなければならない」
「このようなセッションの間、僕たちはサーキットの無線チャンネルを聞き、マックスやチェコのフィードバックに対して提案していく。マックスがマシンに乗り込んで『こことここ、あとはあそこも調整してほしい』とリクエストしたら、僕たちはシミュレーターで、マックスがコース上で抱えている問題を再現するんだ」
「たとえば、ターン2でルーズなリアエンドに苦労しているなら、僕たちもシミュレーターのターン2でリアエンドがルーズになるように設定して、そこから彼が満足できるように調整していく。そして、導き出した結論をマックスのエンジニアに戻し、実際のセットアップに変更を加えてもらうんだ。チェコも同じプロセスで進めている」
金曜日のアレクサンダー・アルボンはシミュレーターで長時間を過ごしており、早くても21時まで作業は終わらない。そこまで遅くないと思う人もいるかもしれないが、アレクサンダー・アルボンはトラックサイドで予選とレースを迎えられるように、土曜日の早朝3時に起床して空港へ向かっている。
アレクサンダー・アルボンの仕事はRB16Bのセットアップだけではない。彼はライバルチームの分析も担当している。
「最近の仕事の大半はライバルチームの研究だ。シミュレーターで自分たちのストロングポイントとウィークポイントを洗い出している。僕たちが苦手としているサーキットでは重点的に取り組んでいるよ。他チームのマシンを選び、なぜ彼らが特定のコーナーで僕たちより速いのかを分析し、彼らがやっていることと僕たちがやっていないことを突き止める」
「もちろん、グリップは簡単に比較できる。でも、その他にも、ライバルがどんなラインを取っているのか、どこで縁石を使っているのか、どのようにコースを使っているのか、どれだけコーナーでタイヤを使っているのかなどを分析しなければならない。このような項目を調べていけば、ライバルたちのストロングポイントとウィークポイントが明確に理解できるようになるんだ」
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / アレクサンダー・アルボン
金曜日にコースへ出たマックス・フェルスタッペンとセルジオ・ペレスがRB16Bでいきなり速さを発揮できるのはなぜか? そこにはいくつかの理由があるが、大きなひとつは、彼らが乗り込む前にレースコンディションとサーキットに合わせてマシンがセットアップされていることだろう。
そして、そのセットアップを担当しているのが、レッドブル・レーシング・ホンダのテスト&リザーブドライバー、アレクサンダー・アルボンだ。
まず、知っておくべきことは、2021年シーズンのF1でレギュラーシートを得られなかったアレクサンダー・アルボンにとってシミュレータードライバーは簡単に受け入れられる仕事ではなかったということだ。
しかし、彼は前向きに取り組み、その努力は本人とチームのためになった。現在、レッドブル・レーシング・ホンダは過去数シーズンで最も強力な状態にあり、アレクサンダー・アルボンは2022年シーズンにウィリアムズからF1に復帰することになった。
では、アレクサンダー・アルボンは、シミュレータードライバーとしての仕事をどのように感じているのだろうか?
「驚くほど楽しめている」とアレクサンダー・アルボンは切り出す。「自分がシミュレーターで行った作業がサーキットで活かされているのを見ると、大きな満足感が得られる。ドライバーたちが『良くなった』とコメントしているのを聞けば、いつだって嬉しい気持ちになる。自分たちがシミュレーターで正しい仕事をしたのだと分かるんだ」
何よりもまずアレクサンダー・アルボンはレーサーであり、本来ならサーキットで戦っていたかったに違いない。しかし、異なる視点からレースを学ぶという意味で、2021シーズンの自分の仕事は大いに役立っているとアレクサンダー・アルボンは考えている。
「過去6〜7カ月は毎週末サーキットの現場にいるし、自分がドライブしないのにサーキットにいることに歯がゆさを感じるときもある。それでも、マシンを速くするためにどのような作業が行われているのかを学べるというのは、僕にとって重要だ」
「なぜなら、ドライバーとしての僕たちは、サーキットでエンジニアたちと膨大な時間を一緒に過ごしていて、ドライビングに集中しているにもかかわらず、全体像を常に把握できているわけではないからさ。だから、プロセス全体に携われるのは良いことだし、来年に向けてより多くの経験が得られるはずだ」
シミュレータードライバーの多忙な日常
アレクサンダー・アルボンはチーム内で複数の役割を担っており、極めて多忙な日々を過ごしている。
「F1でレースしていたときより忙しい。F1をドライブして毎週末レースを戦うのも大変だけど、今の方がもっと慌ただしいね!」とアレクサンダー・アルボンは語る。
アレクサンダー・アルボンの典型的な1週間は、DTMでのレースを終えて日曜日のうちに英国へ戻ったあと、月曜日にオフを取り、火曜日と水曜日はレッドブル・レーシングで2022年シーズン用マシンの作業を進めている。
「2022年シーズン用マシンはまだ “アーティフィシャル”、つまりコンピューターの中にしか存在しないんだ。ここ最近は風洞で作業を進めているけれど、マシンの大部分はシミュレーターに入力した予測数値で構成されている。前週に学んだことを活かしながら毎週進歩を重ねているところだ」とアレクサンダー・アルボンは語り、さらに続ける。
「年初頃はダウンフォースがまだかなり低かったけど、作業を重ねるごとに数値が上がってきている。シミュレーターでドライブするたびにダウンフォースが増えているから、マシンのバランスの変化を確認しつつ、最適化の方法を見極めていかなければならない」
水曜日の作業が終わると、アレクサンダー・アルボンは次のF1レースに向けて気持ちを切り替えることになる。
「ロシアGPを例に挙げると、木曜日はマシンが満足できる状態になっているかを確認する。マックスとチェコのために複数のアイテムをテストし、ウイングレベルや予測される風速、それにバランスなどを確認していく」
「そして、金曜日からは楽しい時間が始まる。FP1とFP2でシミュレーターに座り、RB16Bのオンボード映像をリアルタイムで追いながら、できる限りスピーディーにお互いのデータを確認していく。コース上のマシンとシミュレーターを揃える必要があるけれど、通常は僅かな違いが生まれるので、随時修正していかなければならない」
「このようなセッションの間、僕たちはサーキットの無線チャンネルを聞き、マックスやチェコのフィードバックに対して提案していく。マックスがマシンに乗り込んで『こことここ、あとはあそこも調整してほしい』とリクエストしたら、僕たちはシミュレーターで、マックスがコース上で抱えている問題を再現するんだ」
「たとえば、ターン2でルーズなリアエンドに苦労しているなら、僕たちもシミュレーターのターン2でリアエンドがルーズになるように設定して、そこから彼が満足できるように調整していく。そして、導き出した結論をマックスのエンジニアに戻し、実際のセットアップに変更を加えてもらうんだ。チェコも同じプロセスで進めている」
金曜日のアレクサンダー・アルボンはシミュレーターで長時間を過ごしており、早くても21時まで作業は終わらない。そこまで遅くないと思う人もいるかもしれないが、アレクサンダー・アルボンはトラックサイドで予選とレースを迎えられるように、土曜日の早朝3時に起床して空港へ向かっている。
アレクサンダー・アルボンの仕事はRB16Bのセットアップだけではない。彼はライバルチームの分析も担当している。
「最近の仕事の大半はライバルチームの研究だ。シミュレーターで自分たちのストロングポイントとウィークポイントを洗い出している。僕たちが苦手としているサーキットでは重点的に取り組んでいるよ。他チームのマシンを選び、なぜ彼らが特定のコーナーで僕たちより速いのかを分析し、彼らがやっていることと僕たちがやっていないことを突き止める」
「もちろん、グリップは簡単に比較できる。でも、その他にも、ライバルがどんなラインを取っているのか、どこで縁石を使っているのか、どのようにコースを使っているのか、どれだけコーナーでタイヤを使っているのかなどを分析しなければならない。このような項目を調べていけば、ライバルたちのストロングポイントとウィークポイントが明確に理解できるようになるんだ」
カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング / ホンダF1 / アレクサンダー・アルボン