レッドブルF1 特集：エイドリアン・ニューウェイの軌跡
サウサンプトン大学で航空工学を学んだあと、フィッティパルディとマーチでF1キャリアをスタートさせたニューウェイは、米国で最初の成功を味わった。
マーチでデザインしたIMSAのGTPクラス用スポーツカーは1983年シーズンと1984年シーズンでタイトル連覇を達成し、インディーカーのマーチ85CはCARTチャンピオンシップとインディ500を制すると、後継のマーチ86Cも1986年シーズンと1987年シーズンのCARTチャンピオンシップとインディ500を制した。しかし、その後はF1に戻り短期間ハースとマーチに所属したあと、1990年シーズン後半にウィリアムズへ移籍した。
ウィリアムズでパトリック・ヘッドとコンビを組んだニューウェイは、チームにコンストラクターズタイトルを5回もたらした他、ナイジェル・マンセル、アラン・プロスト、デイモン・ヒル、ジャック・ヴィルヌーヴにドライバーズタイトルももたらした。また、次のマクラーレンでもコンストラクターズ（1998年シーズン）とミカ・ハッキネンのドライバーズタイトル2回（1998年シーズン・1999年シーズン）を支えて、1990年代を見事に締め括った。
その後、2006年シーズンからニューウェイはレッドブル・レーシングに加入。マシンの競争力アップがニューウェイの目標となったが、この目標はキャリア最大のチャレンジとなった。それまで所属していたどのチームにもタイトル獲得の経験があったが、レッドブル・レーシングにはなかったのだ。結果、ニューウェイの仕事の範囲はマシンのデザインだけではなく、チーム全体のデザインにも及んだ。
ニューウェイがレッドブル・レーシングで最初にデザインしたRB3とRB4は順調にパフォーマンスを伸ばしていったが、その裏ではかなりの動きが起きていた。施設が拡大され、才能溢れるスタッフが次々と参加・昇進していた。これらがタイトルが狙えるマシンのデザインの助けとなった。そして、ニューウェイはマシンのデザインをしながら、チームに勝利のメンタリティを植え付けていった。
2009年シーズンのレギュレーションの大幅な改訂はレッドブル・レーシングにチャンスを与えた。空力関係のルールが変わったことで、デザインチームはいちから取り組めるようになったのだ。
ニューウェイとチームはこのチャンスを活かし、同年シーズンのために開発されたRB5は6勝を記録した。特に年シーズン終盤はRB5が大活躍し、チームは2010年シーズンに向けた土台を手に入れることに成功した。
2010年シーズンのレッドブル・レーシングはRB6で9勝をマークし、チーム初のコンストラクターズタイトルを獲得。同時にセバスチャン・ベッテルもドライバーズタイトルを獲得した。その後のRB7、RB8，RB9もベッテルと共にタイトルを獲得し続け、ダブルタイトル4連覇を達成した。
2014年シーズンからニューウェイは現場から一歩退き、新たに設立されたレッドブル・アドバンスト・テクノロジーの責任者となって、F1の枠を超えた活動に携わることになった。ニューウェイのエンジニアリングの才能はヨットレースのアメリカズカップからレッドブル・レーシング初のロードカープロジェクト、レッドブル・アストンマーティン・ヴァルキリーの開発まで幅広く活かされた。尚、ニューウェイは現在もF1マシンのデザインに多大な影響を与えており、ノートブックを片手にパドックやグリッドを歩いている姿が時折確認されている。
レッドブル・レーシングのF1マシンデザインはチーム全員の努力の結晶と言えるが、これまでのすべてのレッドブル・レーシングのF1マシンにはニューウェイの哲学と知識が反映されている。2022年シーズンにはまたも大幅なレギュレーション変更が予定されているため、ニューウェイの才能はこれまで以上に重要になっている。
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