F1モナコGP:レーシングブルズのルールの盲点を突いた大胆作戦を検証

その中で最も早くこのルールの“隙”を突いたのが、レーシングブルズだった。ファエンツァ拠点のチームは、この戦略変更を巧みに利用して、今季ベストとなるリザルトを手にした。
チームワークが決め手に
今回のモナコGPでレーシングブルズは貴重なダブル入賞を果たし、コンストラクターズランキングでハースと6位争いを繰り広げる形となった。ルーキーのアイザック・ハジャーは力強い予選を経て見事6位でフィニッシュし、リアム・ローソンも今季初ポイントを獲得。さらに予選Q3進出も今季初だった。
モナコの予選ではマシンの競争力が特に重要となるが、今回のレーシングブルズはその点でも手応えを見せていた。また、予選でルイス・ハミルトンがマックス・フェルスタッペンを妨害したことでグリッド降格処分を受けた結果、ハジャーは5番グリッドからのスタートとなった。
レース序盤から、レーシングブルズは明確なチーム戦略を取っていた。2人のドライバーが近接して走行していたことで、ペースコントロールと戦略の実行が非常に効果的になった。
モナコのコース特性として、前の車を抜くには1周あたり少なくとも4秒以上速く走らなければ現実的にオーバーテイクできないとデータが示している。そのため、ローソンはハジャーの「バッファー」として完璧な役割を果たすことになった。

ローソンが後方集団をコントロール
グラフではその様子が明確に表れている。黄の破線がハジャー、白がローソン、青がウィリアムズ勢を示しており、バーチャル・セーフティカー解除直後からローソンとハジャーのギャップが広がり始め、その後方の集団との間にも差が生じていく。
13周目にはそのギャップが20秒を超えていた。モナコでのグリーンフラッグ下のピットストップには19~20秒かかるため、レーシングブルズは迷わずこのタイミングでハジャーをピットインさせた。
ハジャーは新品のソフトタイヤを装着し、クリアエアでプッシュ。計画通り2度目のストップに備える戦略だ。
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「あえて遅く走る」ことが戦略だった
第2スティントでもハジャーはローソンやその後ろの集団に対し、1周あたり4~5秒のペース差を維持し続けた。一方、ローソンは意図的にさらに遅いペースで走行した。
一見すれば「遅かった」ように見えるローソンだが、戦略的にはそれこそが求められた動きだった。チームメイトのためにギャップを広げつつ、後続に抜かれず、ミスもしない――それが絶対条件だった。
ハジャーはこの第2スティントで5周のみ走行し、2度目のストップを実施。その後ローソンが一気にペースアップし、ラップタイムのグラフでもその変化が明確に示されている。
フェラーリのハミルトンに1つポジションを譲った以外、作戦は見事に成功。ハジャーはすでに2度のピットを終えた状態で理想的なポジションに戻っており、アロンソにも順位を守れていた可能性が高かったが、アロンソがリタイアしたことで、そのポジションはローソンのものとなった。


戦略は他チームにも波及
興味深いのは、このレーシングブルズの戦略をウィリアムズが後に模倣した点だ。彼らはローソンの後方にいたため、先に同じ作戦をとることができなかった。
ウィリアムズも同様に後方のドライバーがペースを落とし、前方のアレクサンダー・アルボンに“無料の”ピットウインドウを作り出した。
ローソンも同じ戦術を活用して、ポジションを落とさずに2度目のピットを完了。第2スティントではソフトタイヤで9周を走行し、再びクリーンエアに戻った後は力強いペースで前を追った。

完璧な連携で今季最高の結果
結果としてレーシングブルズは、この新ルールを最大限に活かした形で大成功を収めた。完璧なコミュニケーション、戦略の遂行力、そして好位置からのスタート――これらが揃ったことで、2025年シーズンのベストリザルトを手にした。
その根幹には、予選での好パフォーマンスとマシンの競争力があったことは言うまでもない。
決勝レースのペース比較では、マクラーレン、フェラーリ、レッドブルに次いでレーシングブルズは4番手に位置しており、ファエンツァのチームにとっては大きな達成となった。
カテゴリー: F1 / ビザ・キャッシュアップRB / F1モナコGP