メルセデスF1代表「問題は1社だけ」 ADUO巡りホンダ支援示唆で他陣営牽制
メルセデスのチーム代表が、2026年F1のパワーユニット開発を巡るADUO(追加開発・アップグレード機会)について、「問題があるのは1社だけ」との認識を示した。この発言は名指しこそしていないものの、現状で最も苦戦が指摘されているホンダを念頭に置いたものと受け止められている。

同時にこの発言は、ADUOの適用範囲を巡って他メーカーの動きを牽制する狙いもにじむ。

支援はあくまで限定的であるべきとの立場を強調しつつ、制度の運用次第では競争秩序を揺るがしかねないとの懸念も示し、FIAに対して透明性と厳格な判断を求めた。

ADUOは“救済”か、それとも勢力図を動かす装置か
「ADUOの導入は、我々にとってその差を縮めるチャンスになる」とフェラーリF1のチーム代表フレデリック・バスールはコメント。

「ADUOの原則は、パワーユニットで後れを取っているチームが追いつくことを可能にするためのものだ。しかし、順位を飛び越えるためのものではない」とトト・ヴォルフは語った。

ADUOは、2026年レギュレーション導入初期における性能格差を是正するために導入された制度で、パワーユニット性能で後れを取るメーカーに対し、ホモロゲーション変更の柔軟化、コストキャップの緩和、ダイノ開発時間の追加といった支援が与えられる。

FIAはその目的を「大きく遅れているメーカーに開発機会を提供すること」としているが、実際の適用を巡っては各メーカーの思惑が交錯している。ホンダが現時点で最も支援対象に近いと見られる一方で、フェラーリも自らのデータを根拠に適用を求めているとされる。

最初の判断は第6戦(現在はモナコGP)後に行われ、その後も第12戦、第18戦後に再評価が予定されている。

フェラーリの主張と“本当に遅れているのか”という論点
フェラーリは2026年序盤、メルセデスに対して最大で0.8秒の差があると認識しており、エンジン面での改善に加え、SF-26の空力アップデートも並行して進められていることから、ADUOによる支援が加わればタイトル争いに本格参入する可能性もある。

一方でライバル陣営からは、フェラーリの出力差は設計選択に起因する側面もあると指摘されており、「本質的な遅れではない」との見方も出ている。こうした評価の違いが、制度の公平性を巡る議論を一層複雑にしている。

ホンダF1のADUO救済を示唆しつつ他陣営を牽制するトト・ヴォルフ

ヴォルフ「支援は1社に限るべき」
こうした状況を踏まえ、トト・ヴォルフはADUOの運用に明確な線引きを求めた。

「私の見方では、問題を抱えているエンジンメーカーは1社だけであり、そこは支援が必要だ。しかし、それ以外はほぼ同じパフォーマンスレンジにある」とヴォルフはコメント。

「現時点の競争順位に干渉するようなADUOの決定が下されるなら、私は非常に驚くだろうし、失望もする」

「ここにゲームマンシップが入り込む余地はあってはならない。重要なのは、FIAが正しい精神でADUOを運用することだ」とヴォルフは語った。

「我々は自分たちの解析データを持っており、競合との性能差を把握している。そしてFIAも同じデータを見ているはずだ」

「彼らには、このスポーツの整合性を守る役割がある。突然誰かが順位を飛び越えるようなことを許してはいけない」

「ADUOはあくまで“キャッチアップのための仕組み”であり、“リープフロッグのための仕組み”ではない」

FIAはマイアミGP後に各メーカーの性能差を評価し、2%以上遅れている場合は1回、4%以上であれば複数回のアップグレード機会を与える可能性がある。

その判断は2026年シーズンの勢力図だけでなく、2027年の開発戦略にも直結する重要な分岐点となる。ヴォルフが示した通り、この制度が“救済”にとどまるのか、それとも“勢力図を動かす要因”となるのかは、FIAの運用に委ねられている。

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カテゴリー: F1 / メルセデスF1 / ホンダF1