F1解説:メルセデスの直線スピード増加は“ディフューザーストール”効果?
メルセデスF1は、最近のレースでレッドブル・ホンダと比較してストレートで成功を収めている。それはエンジンのパワー増加によるものなのか?それとも精巧なエンジニアリングによるものなのか? F1ジャーナリストのマーク・ヒューズがこのトピックを掘り下げた。

6月のF1フランスGPで、レッドブル・ホンダはメルセデスよりも低いウイングを走らせ、ストレートで速く、ラップ全体でも速く走ることができた。この段階では、RB16Bは、オールラウンドな空力パッケージのように見えた。

当時、メルセデスのF1チーム代表を務めるトト・ヴォルフは「あのような低いウイングを走らせれば、ストレートで得るより多くのラップタイムをコーナーで失っていただろう」と観察している。

しかし、F1トルコGPでは、メルセデスはレッドブル・ホンダよりもストレートで大幅に速かった。ラップ全体ではコンマ数秒の差がついた。そのようなパフォーマンスは、7月のF1イギリスGP以降にメルセデスが何度かみせている。

メルセデスのストレートでの速さはエンジンのパワー増加が最も説明がつく。これはレッドブル・ホンダのクリスチャン・ホーナーとヘルムート・マルコが実際に起こっていると信じていることだ。

「メルセデスは、彼らが使用しているダウンフォースにしてはストレートで非常に速い。シルバーストーン以来、我々はそれを観察してきた。そこには何か奇妙なことがある」とクリスチャン・ホーナーは語った。

だが、メルセデスは、パワーの引き上げはなかったと主張している。そして、違いは、メルセデスがシルバーストンに投入した大幅な空力アップグレードであると推測される。これは、W12に導入された最後の主要な開発だ。

しかし、空力アップグレードがストレートでのパフォーマンスの劇的な向上を説明できる可能性はあるのだろうか? もし、メルセデスがより劇的な“ディフューザーストール”を手に入れたことで、ローレーキのコンセプトを最大限に活用したのであれば、それはイエスだとマーク・ヒューズは語る。

F1チームは、15年以上にわたってストレートスピードを上げるために意図的にディフューザーストールを行ってきた。後部にディフューザーがついたフロアは、マシン下の圧力が上部の周辺空気よりも低くなり、それによってボディにダウンフォースがかかる。ローレーキよりもハイレーキーの方が多くのダウンフォースがかかる。

しかし、マシンの速度が上がると、フロア下とリアウイングからのダウンフォースは、速度の2乗で増加するため、マシンの後部がサスペンションに押し付けられ、フロアのレーキ角が減少する。速度が上がっているため、ダウンフォースはまだ続いているが、フロアの角度が小さいということは、フロアがまだ最大レーキ角にある場合ほど劇的な増加がないことを意味する。

マシンの後部が十分に低くなるように誘導できる場合、最終的にディフューザーはストールし、フロア下の低圧領域を誘導しなくなる。これは、マシンのダウンフォースが大幅に減少することを意味するが、それに応じてドラッグも減少する。これにより、ダウンフォースが不要なストレートでのマシンの速度が向上する。

これはエンジニアリングにとって非常に複雑なことであり、非常に強力なシミュレーションツールが多数必要となる。ストールポイントは、最速のコーナーでストールポジションに近づかないようにトラックごとに調整可能である必要がある。ストレートではダウンフォースは必要ないが、コーナーでは間違いなく必要となる。

ディフューザーの静的傾斜角、つまり、その出力は、レギュレーションによって制限されているが、ハイレーキのマシンは、フロア全体をより大きな角度で走行させることにより、その角度を効果的に増加させている。ハイアングルディフューザーは、比較的大きなリアライドハイトで最適に機能する傾向がある。

ローレーキのメルセデスは、ディフューザーが走る角度が小さいほど、低いライドハイトでパフォーマンスが向上する傾向がある。そして、、それらの低いライドハイドはディフューザーをストールさせることもより簡単になる。

メルセデスのシルバーストーンのアップグレードは、フロアのフロントコーナー周辺の大きな変更で構成されている。バージボードは、その前階の角から空気を抽出しようとしていることを示唆する方法で、再プロファイルされたフロアの端と再角度付けされたデフレクターに一致するように再設計された。
メルセデス W12 空力アップグレード
マシンに当たる空気の量は限られており、マシンの周りを回ったり、マシンの下を回ったりする。これらの変更により、メルセデスはその分割の割合を変えた可能性がある。

これらの変更により、低速でディフューザーストールを発生させる可能性はあるのか? メルセデスがより遅い速度で同じストールポイントを得ることができるならば、それはドラッグを減らすことになる。その場合、同じ直線スピードを得るために大きな翼を走らせる、もしくは、直線スピードを増やすために同じサイズの翼を走らせることができる。

これにより、ディフューザーストールのトラック間での調整可能性が大幅に向上する可能性がある。これは最も敏感なトラックでの見事な直線スピードの向上として現れる可能性がある。

まとめると、ドラッグによって多くのダウンフォースを得ていたハイレーキのレッドブル・ホンダは、低いウイングを装着してドラッグを減らすことによってストレートスピードを上げてラップ全体でバランスを取った。

一方、ドラッグが低く、ダウンフォースが少なかったローレーキのメルセデスは、大きなウイングが必要となったが、F1イギリスGPの空力アップグレードによってドラッグはそのままにディフューザーストールによってダウンフォースを減らすことでストレートを速くした。

したがって、レッドブル・ホンダは、各サーキットでマシン上部のダウンフォースレベルでバランスを取らなければならず、特に路面のグリッドが読みにくかったトルコでは苦戦を強いられてた。一方、マシン上部のダウンフォースレベルをいじる必要がない(大きなウイングのままでも)メルセデスは、ストールポイントの調整だけでストレートスピードを追加することが可能となり、互角だったパフォーマンスに優位性が追加されたと推測できる。

だが、これは単なる理論であり、実際にはエンジンのパワーが増加しただけの可能性もある・・・。


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カテゴリー: F1 / メルセデス / F1マシン