マクラーレンF1 メルセデスの“PU合法トリック”に驚き「知らされていなかった」

メルセデスはFIAによって禁止された予選時のエンジン制御の利点を、合法的な方法で再現する新たな運用をシルバーストンで導入した。
マクラーレン代表のアンドレア・ステラは、この運用が自チームでは利用できていない可能性を認めるとともに、メルセデスHPP(ハイパフォーマンス・パワートレインズ)との協議を続けていることを明らかにした。
メルセデスが復活させた“エンジン技”とは
メルセデスは、アンドレア・キミ・アントネッリとジョージ・ラッセルに対し、スタート/フィニッシュライン直前で意図的にアクセルを戻す特殊なドライビングを実践させた。
一見するとタイムロスになりそうな操作だが、これは2026年型パワーユニットのエネルギーマネジメントを最適化するためのものだ。
通常はエネルギー放出終了時に「ランプダウンレート」と呼ばれる制御が働き、出力が毎秒50kWずつ減少する。しかし、アクセル操作を工夫することで、この減衰を避けながらフィニッシュラインまで最大出力を維持できる。
メルセデスは週末前からシミュレーターでこの走らせ方を徹底的に練習しており、ドライバーが自然に実践できるよう準備を進めていた。
アントネッリはその難しさについて次のように説明した。
「簡単ではなかった。このパワーユニットでは、時には不自然に感じるような運転をしなければならない」
「高速コーナーでは少し長く速度を維持して、アクセルを踏むタイミングを遅らせる。コーナー出口では少し失うけれど、その分エネルギーを多く残せるのでストレート後半で取り戻せる」
「最初は『なぜアクセルを戻さなければならないんだ?』と思う。でもシミュレーターで何度も練習したことで、今ではほぼ自然にできるようになった」
ポール獲得を後押しした最後の加速
GPSデータによれば、最終シケイン出口ではアントネッリとシャルル・ルクレールとの差はわずか0.006秒しかなかった。
しかし、ストレートではアントネッリの最高速が253km/hに達し、ルクレールより11km/h速かった。
その後、アントネッリはフィニッシュライン直前でアクセルを戻す操作を行い、最終的に0.175秒差でポールポジションを獲得した。
このうち約0.169秒は最終シケインからフィニッシュラインまでの区間で築いた差だった。
もっとも、この特殊な運用だけがポール獲得の決定的要因だったわけではない。通常のエネルギー配分で走れば、シケイン出口時点ではルクレールとの差がさらに開いていた可能性もあり、この技術はアントネッリの優位をより確実なものにした要素と考えられている。

マクラーレンも「知らなかった」
このメルセデスの運用はパドック全体に驚きを与えたが、最も意外だったのはカスタマーチームであるマクラーレンも把握していなかったことだ。
オスカー・ピアストリは予選後、この技術について質問されると次のように語った。
「彼らがそんなことをしていたなんて知らなかった。それがすべてを物語っていると思う」
チーム代表のアンドレア・ステラも驚きを隠さなかった。
「正直、少し驚いた。私たちの間で話題になっていたものではなかった」
「そもそも私たちが使えるものなのかも分からない。おそらくパワーユニット側に追加の要素が必要なのだろう」
その一方で、メルセデスHPPとは技術面で協議を続けていると説明した。
「現在もHPPとは技術的なレベルで話し合いを続けている。この素晴らしいパワーユニットが持つ性能を最大限に引き出せるよう取り組んでいる」
ベルギーGPで仕様更新を予定
マクラーレンは現在、メルセデスの最新仕様パワーユニットを使用しておらず、ベルギーGPからアップグレード版を投入する予定となっている。
ステラは、今回の仕様変更は基本的には信頼性向上が目的だとしながらも、パワーユニットの運用方法には改善の余地があると考えている。
「性能は細かな運用方法にも大きく左右される」
「新仕様へのアップグレードで改善されるか様子を見るが、基本的には信頼性向上のためなので、それだけではないと思っている」
「ストレートスピードを分析すると、空気抵抗の違いを考慮してもまだ説明できない部分がある。その点についてもHPPと議論を続ける必要がある」
メルセデスの新たな運用だけで、マクラーレンが予選で7秒以上ではなく0.7秒以上遅れた理由をすべて説明できるわけではない。しかし、ハンガリーGPではこの手法の効果がさらに大きくなるとみられており、ワークスチームが持つノウハウをどこまで吸収できるかが、マクラーレン浮上の鍵となりそうだ。
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