マクラーレンF1 ホイールが“汗をかく”理由? PCM素材使用説が浮上

「最悪な日でも彼らが一番速い」。そう語るのはメルセデスのジョージ・ラッセルだ。マクラーレンのマシンは「タイヤのウォームアップが早く、ロングスティントでも摩耗が少ない」と評価され、「9チーム全員が間違っているようにすら見える」と皮肉交じりに称賛された。
しかし、このマクラーレンの“タイヤ支配”に最も強く疑念を抱いているのがレッドブルF1だ。舞台裏では「マクラーレンがピレリタイヤに水を注入しているのではないか」との噂まで飛び交っているという。
この陰謀論に対し、マクラーレンのCEOザク・ブラウンは、F1マイアミGPで「Tyre Water(タイヤ水)」と書かれた水筒を持ち歩いてジョークで応戦。一方でFIA会長モハメド・ビン・スライエムも「根拠のない抗議はコストキャップから差し引くべきだ」と警告を発した。
「ザクの意見に賛成だ。もし抗議するなら、その費用は予算制限内から支出すべきだし、正当性が証明されない限り返金されるべきではない」と語った。
ピレリのF1責任者マリオ・イゾラも「タイヤに水を通すなどという行為は、現在のFIA監視体制ではほぼ不可能だ」と一蹴する。
「我々はセンサーを通じて常にタイヤの圧力と温度を監視している。バルブやその他の部分に水を通すような行為は、即座にデータに現れるはずだ」

新たに浮上した“フェーズチェンジ素材”説
そんな中、独『Auto Motor und Sport』のジャーナリスト、ミハエル・シュミットが注目すべき新説を報じた。
彼によると、2024年にはレッドブルが「マクラーレンがフリープラクティス以外でもブレーキに温度センサーを使っている」と苦情を申し立てたことがあったという。
「FP3でマクラーレンは極端に長いロングランを行う傾向がある。競合チームを大きく引き離してね。これは極端な条件下で何かを検証しようとしているのかもしれない」
その“何か”について、シュミットは「マクラーレンがブレーキ周辺のコンポーネントに“フェーズチェンジ素材”(PCM)を使用している可能性がある」との情報を入手したという。
フェーズチェンジ素材(PCM)は、固体から液体へと相転移する際に熱エネルギーを吸収・放出する特性を持つ。これにより、マクラーレンのホイールリム内側から時折“水分”がにじみ出ているように見える理由が説明できるという。
「もしかすると、それは相転移によって“汗のように”滲み出ていた液体なのかもしれない」
「確かにこの話は少しSFめいているが、現実味もある。なぜなら、レッドブルがわざわざ“水の噂”を流した背景が説明できるからだ」
さらにシュミットは「たとえ他チームがマクラーレンの手法を突き止めたとしても、それをコピーするのは簡単ではない」と指摘する。
そして最後にこう締めくくった。「レッドブルもすでに同様の素材を試しているのではないか。それがマックス・フェルスタッペンの最近のブレーキ性能に関する苦情の背景かもしれない」
なお、レッドブルF1のチーム代表クリスチャン・ホーナーはこの件について問われた際、「そっけない一言で答えた」という。
PCM素材による熱管理という説は、マクラーレンの卓越したタイヤ性能に対する説得力ある“裏付け”となるのか。今後の技術論争の行方に注目が集まっている。
カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム