ランス・ストロール アストンマーティンF1決算で年俸が判明:約18億円に倍増
アストンマーティンF1チームに所属するランス・ストロールの報酬に関して、イギリスの公式企業登録機関「Companies House(企業登記局)」に提出された最新の決算書類から、その一端が明らかになった。

カナダ出身のストロールは、チームオーナーである父ローレンス・ストロール(L.S.ストルロヴィッチ)の息子であり、その関係性ゆえに、他のドライバーとは異なり彼の契約金に関する一部情報が「関連当事者取引」として開示されている。

関連会社間取引から見える「1230万ドル」支払い

提出書類によると、アストンマーティンF1を運営するAMR GP社は、ランス・ストロールの個人会社「Golden Eagle Racing Ltd.」に対し、2024年シーズン分として約1230万ドル(約18億5000万円)を支払っている。前年の支払額560万8000ドルからおよそ倍増しており、単純計算では報酬が大幅に上昇したとみられる。

もっとも、この金額のすべてがストロール個人の年俸に相当するわけではない。書類上の支払いは「サービス提供」に対するものであり、ストロールのマネージャー、トレーナー、フィジオセラピスト、栄養・フィットネス関連のコンサルタントなどへの報酬も含まれている可能性が高い。そのため、純粋なドライバー報酬額を特定するのは困難だ。

それでも、2024年の契約更新に伴いストロールの待遇が見直されたのは確実であり、経験値や市場価値を反映した報酬レンジへと引き上げられたとみられる。

アロンソとの待遇差と特典
一方でチームメイトのフェルナンド・アロンソは、同様の情報開示義務が発生しないため年俸は非公開。しかし決算書には、両ドライバーに対して「契約期間中1台の社用車を無償で提供する」特典が明記されている。この取り決めは「契約期間中継続され、会社の財務状況に重大な影響を与えるものではない」と記載された。

また、ストロール側のGolden Eagle Racing Ltd.がアストンマーティンへ50万ドルのスポンサー収入を支払っていることも報告書で確認されている。

推定年俸は中堅上位、他ドライバーとの比較

仮にストロールがこの総額をすべて受け取っていた場合、その報酬はF1グリッドの中堅上位に位置する。およそ1000万〜1200万ドルとされる額は、アルピーヌのピエール・ガスリー(約1200万ドル)と同水準で、エステバン・オコン(600万ドル)、ニコ・ヒュルケンベルグ(500万ドル)、アレクサンダー・アルボン(300万ドル)らを上回る。

一方で、ウィリアムズに移籍したカルロス・サインツJr.(1900万ドル)、メルセデスのジョージ・ラッセル(約3000万ポンド=約5400万ドル)といった上位勢とは依然として大きな差がある。

ランス・ストロール アストンマーティン・コグニザント・フォーミュラワンチーム

F1 2025年推定年俸ランキング(報道ベース)
■ マックス・フェルスタッペン(レッドブル) 7500万ドル(約112億5000万円)
■ ルイス・ハミルトン(フェラーリ) 5700万ドル(約85億5000万円)
■ ランド・ノリス(マクラーレン) 3500万ドル(約52億5000万円)
■ フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン) 2750万ドル(約41億2500万円)
■ シャルル・ルクレール(フェラーリ) 2700万ドル(約40億5000万円)
■ オスカー・ピアストリ(マクラーレン) 2590万ドル(約38億8500万円)
■ ジョージ・ラッセル(メルセデス) 2300万ドル(約34億5000万円)
■ カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ) 1900万ドル(約28億5000万円)
■ ピエール・ガスリー(アルピーヌ) 1200万ドル(約18億円)
■ ランス・ストロール(アストンマーティン) 1000〜1200万ドル(約15〜18億円)
■ エステバン・オコン(ハースF1チーム) 600万ドル(約9億円)
■ ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー) 500万ドル(約7億5000万円)
■ アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ) 300万ドル(約4億5000万円)
■ リアム・ローソン(レッドブル) 300万ドル(約4億5000万円)
■ 角田裕毅(レーシングブルズ) 300万ドル(約4億5000万円)
■ アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス) 200万ドル(約3億円)
■ ガブリエル・ボルトレト(ザウバー) 200万ドル(約3億円)
■ オリバー・ベアマン(ハースF1チーム) 100万ドル(約1億5000万円)
■ フランコ・コラピント(アルピーヌ) 50〜100万ドル(約7500万〜1億5000万円)
■ アイザック・ハジャー(レーシングブルズ) 50〜100万ドル(約7500万〜1億5000万円)

父子関係ゆえの透明性と皮肉
ランス・ストロールの報酬が他ドライバーより明確に把握できるのは、チームオーナーが実父という特異な構造によるものである。関連当事者取引として公的開示が義務付けられるため、F1界では異例の“透明性”が発生している格好だ。

他方で、父ローレンス・ストロルが経営するアストンマーティンにとって、この情報公開はイメージリスクともなり得る。仮に実際の年俸が市場平均を超えていたとしても、企業統治上は正当化される必要があるため、会計上の整合性が特に重視される。

それでも、ストロールの報酬水準はF1ドライバーとして決して過剰ではなく、経験と実績を踏まえた妥当な範囲に収まっていると見られる。むしろこの開示は、F1界におけるドライバー報酬の透明性に一石を投じた事例といえる。

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カテゴリー: F1 / ランス・ストロール / アストンマーティンF1チーム