アイザック・ハジャー驚異の防衛術 F1オランダGP初表彰台の秘密
アイザック・ハジャーは2025年F1オランダGPでキャリア初の表彰台を獲得した。

鮮烈な予選で4番手につけた20歳のフランス人は、決勝でもフェラーリやメルセデスといった格上のマシンを相手に冷静かつ精緻な走りを見せた。2度のピットストップや複数回のセーフティカーリスタートを生き延び、最後はランド・ノリスのリタイアという幸運にも恵まれて3位でチェッカーを受けた。

ザントフォールトはオーバーテイクが難しいことで知られるが、ハジャーは周到なペースマネジメントと正確なライン取りで追撃を許さず、レース中盤にはルクレールやラッセルを突き放す場面もあった。新人ながら堂々と走り抜いた一戦は、今後のキャリアに向けて強烈なアピールとなった。

ルーキー初表彰台にふさわしい鮮烈な走り
ハジャーは良い結果を得たいのであれば、スタートでポジションを守るしかないことを理解していた。ザントフォールトのイン側ラインは理想的とは言えないが、それでもレーシングブルズの彼はオープニングラップでP4を死守した。ここで助けとなったのはルクレールだった。フェラーリのルクレールが1周目にラッセルを抜いたことで、ハジャーは序盤のプレッシャーから「守られた」格好となった。

これでハジャーは2つの戦いのちょうど間に位置することになった。前方ではマクラーレン勢とフェルスタッペンの争い、後方ではラッセルとルクレールの争い。背後に迫るマシンがいなかったことで、ハジャーは自分のマシンの持てる速さを最大限に引き出しやすくなった。

彼はまさにそうした走りを見せた。レース後に本人が語ったように、これほど強いレースペースを持ち、理論上は自分より速いはずのマシンに付いていけるとは思っていなかった。第1スティントでは平均してルクレールよりも1周あたり0.1秒速く、ラッセルよりも0.2秒近く速かった。

11周目あたりでルクレールが0.6秒差まで接近したが、本格的な攻撃はなかった。おそらくフェラーリがタイヤ温存を優先したからだ。13周目には両者の差はすでに2秒以上に広がっていた。

アイザック・ハジャー F1 オランダGP 第1スティント比較

ザントフォールトは簡単にオーバーテイクできるサーキットではない。前走車に本当に挑むためには、少なくとも1周あたり0.8秒速く走る必要がある。ハジャーの精密なドライビングは、後方がその差を築くことを許さなかった。

とはいえP4を守り抜くには、何度かのセーフティカーリスタートを生き延びる必要があった。ハミルトンのクラッシュ、さらにルクレールのアクシデントにより戦略的には淡々とした展開となった。先頭集団はすべてセーフティカー下でピットに入ったため、戦略面での駆け引きはほとんど生じなかった。

ラッセルの唯一のチャンスを封じ込める
ハジャーに最初の試練が訪れたのは27周目、最初のセーフティカーリスタート直後だった。このときはラッセルが背後に迫り、メインストレートでフランス人をディフェンシブなラインへと追い込んだ。しかし、それが唯一の機会だった。ハジャーはその後のラップを見事に走り切り、ラップ終盤には3秒以上のギャップを築いていた。

その後もルクレールとラッセルのP5争いが続いたため、ハジャーは余裕を持って走ることができた。

続いてバーチャルセーフティカーが導入されたが、この時点でハジャーの状況はさらに楽になった。なぜなら、ルクレールとの接触によりラッセルのマシンがダメージを負ったからだ。サイドポッドやフロア端部に傷が入り、テレビ中継でもはっきり映し出された。こうした損傷はダウンフォースやバランスを大きく乱し、レースペースを低下させる。

ラップタイムチャートを見ると、2度目と3度目のセーフティカー後もハジャーとライバルたちの差は1周あたり0.3〜0.4秒程度で安定していた。必要最小限の時間で安全圏を確保できたことが分かる。

アイザック・ハジャー F1 オランダGP ラップタイム1アイザック・ハジャー F1 オランダGP ラップタイム2アイザック・ハジャー F1 オランダGP ギャップ進化

幸運を呼び込んだ走り
この時点で、ハジャーはP4を守り、チームに貴重なポイントを持ち帰るという目標を果たしていた。そこに幸運が加わる。ランド・ノリスがマシントラブルでリタイアしたことで、フランスの若者は表彰台を手にしたのだ。キャリア15戦目にして、シーズン開幕戦オーストラリアでのルーキーミスからここまでの道のりは、劇的な成長の証となった。

もちろん結果には運も絡んだ。しかし、それもハジャーが自らその位置にいたからこそ意味を持つ。圧倒的に速いはずのルクレールやラッセルを相手に何度もポジションを守り抜いたこと自体が並大抵ではない。

予選での鮮烈なパフォーマンスに続き、決勝でも光を放ったハジャー。その走りはチームのみならず、レッドブル首脳陣に対しても、マックス・フェルスタッペンの隣に座るセカンドシートを真剣に検討させるに十分な理由を示すものとなった。

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カテゴリー: F1 / アイザック・ハジャー / F1オランダGP / ビザ・キャッシュアップRB