ニコ・ヒュルケンベルグ 悲願のF1初表彰台「今日は俺の日 譲れなかった」
ニコ・ヒュルケンベルグがF1デビューから15年目、通算239戦目のグランプリとなったF1イギリスGPで、ついにキャリア初となる表彰台を獲得した。劇的な天候の変化に翻弄されたシルバーストンでの決勝で、19番グリッドからの大逆転を果たした。

2010年にF1デビューを果たしたヒュルケンベルグのこれまでの最高位は4位(過去に3度)だったが、37歳となった今、ついにその壁を突破した。

ランド・ノリス、オスカー・ピアストリに次ぐ3位でチェッカーを受け、フェラーリのルイス・ハミルトンの猛追をしのぎきった。

「最高だよ!ずっと待ってた瞬間だろ?でも、自分たちにはそれができると信じてたし、自分の中にもまだ力があると分かってた。信じられないレースだったよ。ほぼ最後尾からスタートして、先週に続いてまた同じことをやるなんて、正直ちょっと現実じゃない感じだ。どうしてこうなったのか分からないけど、クレイジーなコンディションだったし、天候もバラバラでね。サバイバルレースだった。すべてが噛み合って、タイヤの選択も完璧、判断ミスもなかった。本当に信じられない」

レース終盤には7度のワールドチャンピオン、ルイス・ハミルトンが猛追。しかしヒュルケンベルグは冷静に対処し、自身の手で歴史的瞬間をつかみ取った。

「最後のピットストップまで現実だと思えてなかったよ。ルイスとのギャップが少し開いたと聞いたときに、『これはいいぞ、ちょっと余裕ができたな』と思った。でもそのあと彼が一気に詰めてきたから、プレッシャーはすごかった。とても激しいレースだったけど、言ったように、ミスはなかったし、自分でもよくやったと思ってる」

「彼がホームグランプリで全力で来るのは分かってたし、でも『今日は俺の日だ。譲れない』って思ってた。だから攻めたよ。本当にうれしい。毎年ここで応援してくれるみんなに感謝したい」

週末序盤は最下位争いに沈んでいたが、ピット戦略と判断力で流れを引き寄せた。とくにスリックタイヤへの交換タイミングは完璧だったという。

「ランスを抜いて、そのあとルイスもすぐにランスを抜いてきたんだけど、彼が近づいてくるのをなんとか抑えられて、むしろ差を広げられてた。インターの摩耗が進むにつれて自分の方が速くなっていった。それで、『これはいけるかも』と感じ始めた。ルイスより1周遅れてスリックに変えた判断も完璧だったと思う。10秒くらい稼げて、それが決定的だった。そこからの10~12周くらいはすごく長く感じたけど、『しっかり走りきれば表彰台だ』と確信を持って走っていた」

ニコ・ヒュルケンベルグ F1 イギリスGP ザウバーF1チーム

レース後の記者会見では、表彰台を振り返りながらこう語っている。

「うれしいよ。でもまだ全部を消化できてないというか、本当に激しいレースだったからね。ランドが言ったように、こういう変化するコンディションの中では常にギリギリのところで走ってる感覚がある。1歩間違えば壁に行くような、そんな緊張感の中でプッシュしないといけないから、とても集中力を使う。終盤はルイスとのバトルになって、少しずつ迫ってきていたけど、運良く最後までキープできた。いろんなことが噛み合った日だったし、大きな達成感がある。昨日は最後尾近くのグリッドだったから、本当に信じられないよ。数日かけてじっくり実感していくことになると思う。2週間あるから、今週はこの結果を存分に味わいたい」

レース後、表彰台でシャンパンを振る姿には10年分の思いが詰まっていた。

「やり方はまだ覚えてた。ジュニア時代にはよくやってたけど、そこから長かったね。でもレースがあまりにも早く過ぎていったから、まだ頭の整理がついてない。たくさんの感情や祝福が一気に押し寄せてきて、とにかく今はうれしいし、ホッとしてる。これから数日かけてもっと実感が湧いてくると思うし、喜びをかみしめる時間も取れるだろうね」

レゴ製のトロフィーにも思わず笑顔を見せた。

「レゴは大好きだよ!娘も遊べるしね(笑)。まあ、銀とか金だったらもっと良かったけど、文句は言わないよ。楽しめればいいんだ」

今後の展望について問われると、慎重ながらも手応えを口にした。

「今日はこれで十分じゃないか(笑)。もし今日がドライレースだったら、まったく違う展開になっていたはずだ。ここ数戦でマシンはかなり良くなってるけど、今日の結果は明らかにコンディションに助けられたところもある。でも中団グループの中では確実に勢いをつかんでいる。現実的にはそこが我々の戦う場所だし、毎レースしっかり最大限を引き出すことが大事だ」

F1デビューから15年――ヒュルケンベルグがついにたどり着いた表彰台。その言葉の一つひとつに、長年の苦闘と誇りがにじんでいた。



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