ホンダ 2026年にF1エンジンを進化させる条件とADUO制度
ホンダは2026年からの新しいF1パワーユニット規定で厳格な開発制限に直面する。その中で注目されるのが「ADUO制度」だ。シーズン序盤5戦での性能差に応じて追加の開発機会が与えられる仕組みで、ホンダがアストンマーティンとフェルナンド・アロンソの戦闘力を高められるかどうかのカギを握る。

ADUO制度の詳細と、それがホンダに与える可能性を解説する。

ホンダはF1エンジンを2026年シーズン中に改良できるのか?
フェルナンド・アロンソとアストンマーティンのファンの間で最も大きな疑問のひとつが「ホンダはシーズン中にエンジンを改良できるのか」というものだ。その答えは「イエス」である。

FIAの技術規則第4条セクションCによると、毎シーズン最初の5戦において、FIAは各メーカー(フェラーリ、メルセデス、ホンダ、アウディ、レッドブル・パワートレインズ)が供給する内燃エンジン(ICE)の性能を監視する。その結果をもとにパワーの平均値が算出され、もしホンダのICEが最強のICEに比べて3%以上劣る場合、FIAは「ADUO(追加開発改善機会)」カテゴリーを与えることができる。

ADUO(追加開発改善機会)とは何か?
規則「F5 2.7条 セクションF - ベンチテスト制限(PUTB)」によれば、C5付録第4条の基準を満たしたメーカーがADUO指定を受けると、12か月間にわたりエンジンベンチ稼働時間が通常より30%多く許可される。これは競合との差を埋めるための改良を促進することを目的としている。

ただし、シーズン第5戦以降の性能が事前のデータと一致しない場合、FIAはこの認可を取り消す権利を有し、不当な優位が認められた場合には是正措置を取ることもできる。

結論として、FIAが厳しく制限・規制する2026年以降のパワーユニット開発においても、ADUOカテゴリーは、もしホンダ製エンジンが競合より非力であると判定された場合に、アストンマーティンのアロンソのためにライバル以上の進化を実現できる「二度目のチャンス」を与える仕組みとなる。

ベンチ稼働時間の上限(時間/年)
2026年 通常枠:710 ADUO指定枠:923
2027年 通常枠:410 ADUO指定枠:533
2028年 通常枠:410 ADUO指定枠:533
2029年 通常枠:410 ADUO指定枠:533
2030年 通常枠:410 ADUO指定枠:533

本田技研工業 F1 エンジン

FIAの見解 ― ニコラス・トンバジスの説明
FIAシングルシーター部門責任者のニコラス・トンバジスは、Motorsport.esのインタビューで次のように述べている。

「まず、2014年のように特定メーカーが大きな優位を得る状況にはならないと思っている。エンジンは当初我々が望んでいたほど単純ではないが、それでも現行世代よりはシンプルになった。MGU-Hは廃止され、大半のパラメータは明確化されているので、2014年のような大差は生まれないはずだ」

性能差が生じる可能性については次のように補足した。

「基本的に、シーズン開幕から5〜6戦で各メーカーの平均パワーを測定し、一定の閾値を下回るメーカーには優遇措置を与える。それは3つあり、開発予算枠の増加、ベンチ試験時間の増加、そしてエンジン再ホモロゲーションの機会だ。これによって遅れたメーカーは差を埋めるチャンスを得る」

さらにトンバジスは「これはBalance of Performanceではない」と強調する。

「第一に、全メーカーは同じ規則の下で作業している。我々は追加のパワーや燃料を与えるわけではない。第二に、もしコストキャップがなければ、遅れているメーカーは膨大な資金を投じることになる。しかし今は予算制限があるため、そのままでは屈辱的な遅れを取る可能性がある。公平性の観点から、我々はその状況を避けたい。だからこの制度がある。幸い、すべてのメーカーが建設的な姿勢を示している」

信頼性問題へのセーフティネット
FIAはまた、新時代の初期に避けられない信頼性問題に対応するためのセーフティネットも検討している。

「仮に毎週末ごとにエンジンが壊れるような深刻な信頼性問題に直面するメーカーがあれば、その修復費用で予算の大半が消える。そこで、一定数以上のエンジン破損が発生した場合、予算上限内で追加エンジンを安価に扱えるようにする仕組みを導入しようとしている。実際の費用は変わらないが、コストキャップ上の計算を調整し、メーカーが追い詰められる事態を避けたい」

FIAが導入するADUOシステムと信頼性セーフティネットは、2014年のような性能格差を防ぐための安全弁として機能する。これにより、ホンダがもし序盤に不利な立場に立たされたとしても、追加の開発機会を活かし、アストンマーティンAMR26の競争力を高めてアロンソの挑戦を支えることが可能となる。

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / FIA(国際自動車連盟) / アストンマーティンF1チーム