ホンダF1特集:本橋正充CEが語る『F1カタールGPの舞台裏』
ホンダF1のスクーデリア・アルファタウリ担当のチーフエンジニア(CE)を務める本橋正充が、前戦F1カタールGPの準備の裏側を語った。

ロサイル・インターナショナル・サーキットは、コロナ禍の影響でスケジュールが変更となり、9月下旬に開催が決定。今年は慌ただしいシーズンとなっているが、その中盤でのカレンダー変更により、限られた時間での準備となった。

F1チームは、カタールでのレース開催が発表後、6週間で4戦という過密スケジュールのすき間を縫って準備を進めてきた。

「カタールの準備は開催2週間前に始まりましたが、過去のデータがなく、両チームのデータを参照して最適なセットアップを見つける必要がありました」と本橋正充。

「そこから車体のセットアップに合わせてPUを調整しますが、それは他のサーキットでも同じになるプロセスを踏んでいきます」

2004年に完成したロサイル・インターナショナル・サーキットは、16のコーナーを持ち、中高速コーナーを低速コーナーでつないだレイアウト。さらには、1kmを超えるストレートも備える。こうした情報を踏まえてPUを準備していくが、難しいのは、過去に開催のないサーキットでは、ドライバーがどのようなアプローチをしていくのかが明確にならないことだった。

「経験のあるサーキットと比べて、仕事量が大きく増えるわけではありませんが、予想外の事態が起こる可能性が高いので、普段よりも対応の幅を広げた準備をしておく必要があります」

「また、特にこうした初めてのサーキットでは、シミュレーションと実際の走行で挙動が異なることもあるので、いつもよりもセットアップの種類を多く準備します。例えば、シミュレーションでは全開で抜けていけると思っていた箇所が、実際はそうならなかった場合などに対処できるようにしておくんです」

全長5.380kmというのは、カレンダーの中では平均的な長さですが、エネルギーのデプロイメントやブレーキングでの回生を設定する際には、実際の長さよりもコースレイアウトのほうに重きを置くため、シミュレーションの内容が重要となった。

さらに、走行中も仕事は山積みだった。シミュレーションが実際の走行と全く同じになるということはなく、さらにはピット入口が変更されたり、路面の特性によってコーナリングが変化したりといったことに対応しなければならなかった。

カタールのモーター&モーターサイクル連盟の専務理事で、今回のカタールGPの責任者を務めるアムロ・アルハマドは、サーキットでの準備について以下のように語った。

「一番大きな変更は安全性の確保です。F1の基準に適応しなければなりません。例えば、大きなものだと、コース脇のバリアへのテックプロ(FIA公認の衝撃分散に優れた樹脂製の連結式バリア)導入がありますが、F1ならではのものだと、ソーセージ縁石(幅の広い大きな縁石)やダブル縁石(赤白縁石の外側に設置される段差の大きい縁石)の設置もあります」

「ピットへの入口は、F1に対応して安全性を高めるために変更されました。MotoGPに合わせたものでしたが、ドライバーのピット進入時に障害になるものが出ないように場所を変えました」

さまざまな変更が行われたものの、このサーキットはMotoGP開催を考慮して設計されたものだということがアムロ・アルハマドのコメントからも分かる。そこで連携するのが、Hondaの二輪モータースポーツ活動を担うHRC(ホンダ・レーシング)。MotoGPやスーパーバイク世界選手権でロサイルでの豊富なレース経験を蓄えている。

「基本的にはチームのシミュレーションに基づいてセッティングを行っていますが、疑問点や不明点はHRCに問い合わせて、彼らの意見やデータを参考にしています。カテゴリーは違えど、サーキットを経験している人が社内にいるのはとても大きいですね」と本橋正充。

カタールGPの初日、チーム全員にとって慌ただしい一日となったが、レッドブル・レーシングやスクーデリア・アルファタウリ、さらにはHRCとの協力によって、新サーキットへの適応を順調に進めることができた。

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / アルファタウリ / F1カタールGP