ホンダF1 特集:HRD-UKのマネージャーが語る日欧での働き方の違い
ホンダF1のイギリスでの拠点であるHRD-UKで開発に携わっている津吉氏が、HRD-UKでの仕事内容、そして、日欧での働き方の違いなどについて語った。
ホンダF1は、2015年のF1復帰に先駆けて、2013年に英国バッキンガム州ミルトンキーンズに欧州におけるF1の活動拠点として現HRD UKを設立。日本で開発されたエンジンを含めたパワーユニットのリビルドやメンテナンス、サーキットサービスを行っている。
「ここHRD-UKではF1のハイブリッドパワーユニットのエナジーストア(バッテリー)部分の開発を行っています」と津吉氏はホンダF1のコラムで語った。
「エンジンのベンチテスト業務も一部イギリス側でも行っており、この2つのプロジェクトを私が見ている形です。具体的には、設計を除く、バッテリーに関するシステム/電装/テストの3部門と、PUのベンチテストの計4部門を管轄しています」
「エンジンのベンチテストはその大部分をSakuraで行っていますが、HRD-UKではPU(エンジン)にトランスミッションをつけて行う、より実走に近い形のテスト、つまり開発フェーズで言うと最終段階に近い部分のベンチテストを、Red Bull Technologyと一緒に行っています」
「サーキットごとに異なるPUのセッティングなども、Sakuraと連携する形で実施しており、イギリスで日中に行った作業をSakuraに引き継いで、イギリスの夜間には日本側でテストと言った感じで、ほぼ24時間、日英のどちらかでテストベンチが回っているような体制が取られています」
「HRD-UKのバッテリー開発チームやテストベンチチームは、日本からの駐在員数名のほか、欧州を中心に15か国ほどから集まった多国籍のメンバーからなる混成チームで構成されいます。私は今回のF1プロジェクトには2016年から携わっていますが、HRD-UKのマネージャーというポジションは2019年のUK駐在赴任時からを担当しています。外国人の部下を持つのも初めてでしたし、海外でのマネジメントは自分にとって大きなチャレンジになりました」
「チームを効率よく機能させ、開発のスピードと質を上げていくことが求められている中で、私の役割は各メンバーの能力や素質を見極めながら、それぞれの特徴にあったポジションや仕事を任せて、人材を育成することだと思っています。ひとりひとりが自分の仕事に満足しつつ、チームとしても結果を出していく姿が理想ですね」
ホンダF1は、2015年にマクラーレンのワークスパートナーとしてF1に復帰したが、“文化”の違いという問題に直面した。日欧での働き方の違いと、ホンダの気風について津吉氏は次のように語る。
「一方で、日欧で異なるなと感じるのは、仕事に対する取り組み方という部分でしょうか。こちらでは”ジョブ・ディスクリプション”などで細かく職務内容が決まっており、そこに書いてある部分をとことんやっていくのが基本です」
「契約社会ということもありますし、雇用形態の違いもあると思いますが、普通は自分に与えられた仕事以上の部分に手を出すことはありません。むしろ人の仕事、つまり自分の領域外に手を出すことはルール違反なので、仕事の進め方としてもスタンダードではありません。もちろん、仕事に対してやる気がないということではなく、逆にどんどん自分に仕事をやらせてほしいという想いはみんなが持っています」
「一方で、Hondaには自分の仕事の領域外に飛び出していく、積極的に繋がっていくことが推奨される文化があります。私自身もそのように先輩から教わってきましたし、自分のキャリア形成を振り返って見てみてもそのようなやり方で、技術や知見を高めてきました。ですので、いま一緒に働いている欧米出身のメンバーについても、『Hondaで働いている限りはやりたいことはやっていいんだよ』と伝えています」
「自分の領域外のことでもアイデアがあれば手を挙げてもらい、それをきちんと評価してあげることが、最終的にはチームのアウトプットの上昇につながると思っています。彼らのスタンダードではないのですが、モチベーションの高い面々がそろっているので、それを活かしつつ、のびのびと仕事をしてもらえればと思っています。自分もこれまでそのような形でエンジニアとして育ててもらいましたし、日欧の違いはあれど、彼らがエンジニアとしての幅を広げていくことの手助けができればと考えています」
カテゴリー: F1 / ホンダF1
ホンダF1は、2015年のF1復帰に先駆けて、2013年に英国バッキンガム州ミルトンキーンズに欧州におけるF1の活動拠点として現HRD UKを設立。日本で開発されたエンジンを含めたパワーユニットのリビルドやメンテナンス、サーキットサービスを行っている。
「ここHRD-UKではF1のハイブリッドパワーユニットのエナジーストア(バッテリー)部分の開発を行っています」と津吉氏はホンダF1のコラムで語った。
「エンジンのベンチテスト業務も一部イギリス側でも行っており、この2つのプロジェクトを私が見ている形です。具体的には、設計を除く、バッテリーに関するシステム/電装/テストの3部門と、PUのベンチテストの計4部門を管轄しています」
「エンジンのベンチテストはその大部分をSakuraで行っていますが、HRD-UKではPU(エンジン)にトランスミッションをつけて行う、より実走に近い形のテスト、つまり開発フェーズで言うと最終段階に近い部分のベンチテストを、Red Bull Technologyと一緒に行っています」
「サーキットごとに異なるPUのセッティングなども、Sakuraと連携する形で実施しており、イギリスで日中に行った作業をSakuraに引き継いで、イギリスの夜間には日本側でテストと言った感じで、ほぼ24時間、日英のどちらかでテストベンチが回っているような体制が取られています」
「HRD-UKのバッテリー開発チームやテストベンチチームは、日本からの駐在員数名のほか、欧州を中心に15か国ほどから集まった多国籍のメンバーからなる混成チームで構成されいます。私は今回のF1プロジェクトには2016年から携わっていますが、HRD-UKのマネージャーというポジションは2019年のUK駐在赴任時からを担当しています。外国人の部下を持つのも初めてでしたし、海外でのマネジメントは自分にとって大きなチャレンジになりました」
「チームを効率よく機能させ、開発のスピードと質を上げていくことが求められている中で、私の役割は各メンバーの能力や素質を見極めながら、それぞれの特徴にあったポジションや仕事を任せて、人材を育成することだと思っています。ひとりひとりが自分の仕事に満足しつつ、チームとしても結果を出していく姿が理想ですね」
ホンダF1は、2015年にマクラーレンのワークスパートナーとしてF1に復帰したが、“文化”の違いという問題に直面した。日欧での働き方の違いと、ホンダの気風について津吉氏は次のように語る。
「一方で、日欧で異なるなと感じるのは、仕事に対する取り組み方という部分でしょうか。こちらでは”ジョブ・ディスクリプション”などで細かく職務内容が決まっており、そこに書いてある部分をとことんやっていくのが基本です」
「契約社会ということもありますし、雇用形態の違いもあると思いますが、普通は自分に与えられた仕事以上の部分に手を出すことはありません。むしろ人の仕事、つまり自分の領域外に手を出すことはルール違反なので、仕事の進め方としてもスタンダードではありません。もちろん、仕事に対してやる気がないということではなく、逆にどんどん自分に仕事をやらせてほしいという想いはみんなが持っています」
「一方で、Hondaには自分の仕事の領域外に飛び出していく、積極的に繋がっていくことが推奨される文化があります。私自身もそのように先輩から教わってきましたし、自分のキャリア形成を振り返って見てみてもそのようなやり方で、技術や知見を高めてきました。ですので、いま一緒に働いている欧米出身のメンバーについても、『Hondaで働いている限りはやりたいことはやっていいんだよ』と伝えています」
「自分の領域外のことでもアイデアがあれば手を挙げてもらい、それをきちんと評価してあげることが、最終的にはチームのアウトプットの上昇につながると思っています。彼らのスタンダードではないのですが、モチベーションの高い面々がそろっているので、それを活かしつつ、のびのびと仕事をしてもらえればと思っています。自分もこれまでそのような形でエンジニアとして育ててもらいましたし、日欧の違いはあれど、彼らがエンジニアとしての幅を広げていくことの手助けができればと考えています」
カテゴリー: F1 / ホンダF1