ホンダF1:2020年 第4戦 F1イギリスGP プレビュー
ホンダF1は、2020年のF1世界選手権 第4戦 F1イギリスGPに、レッドブル・レーシング、アルファタウリ・ホンダとともに2チーム4台体制で挑む

1950年にF1世界選手権が開始して以来、自動車レースの母国とも言えるシルバーストン。カレンダーの中でも随一の高速コースとして知られ、年月を経た現在もその人気が衰える気配はない。

また、シルバーストンの周辺はいわゆる“モータースポーツ・ビレッジ”と呼ばれ、多くのチームやマニファクチャラーが拠点を構えている。車で40分の距離にミルトン・キーンズのファクトリーがあるホンダF1にとってもホームレース。気候が不安定な「英国の夏」なので、順応性もレースのカギです。天候の変化に注視して臨む。

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「開幕を待ちに待った2020年のF1シーズンは、アッと言う間に3連戦を終え、ここから次の3連戦に入ります。我々はミルトンキーンズに戻り、初戦から第3戦までの状況の振返りを実施してきました。また、レースのなかったこの週末はつかの間の休息の時間にもなりました。イギリスに戻ってもレースメンバーはコロナウイルス感染対策など、様々な制約や対応を継続しながらレースの準備に当りこの先のシーズンに向かっていきます。開幕からの3連戦では、Aston Martin Red Bull Racingと2回の表彰台を獲得できました。一方で、ライバルとの差が大きく開いていることも見えてきており、チームとともにその差を詰めるために改善に向けた分析と対策を進めています。また、レースで発生したトラブルの対策やパワーユニット(PU)の使い方の最適化検討など日本のHRD-Sakuraとともに進めてきました。次の2戦は、我々の英国拠点のHRD-UKにもほど近い、イギリス・シルバーストンサーキットにて行われます。英国の典型的な田園風景の中に広がるサーキットで、モータスポーツの母国らしく例年はスタンドを埋めるファンが非常にいい雰囲気を作ってくれます。また、ドライバーが我々のファクトリーを訪問したり、スタッフやその家族がレース観戦に訪れたりと、ホームらしいイベントがいくつも行われます。しかし、今年は交流イベントの開催自粛、また無観客での開催となるため英国ファン、また我々の従業員や家族にとっても少し淋しいホームレースとなります。その代わりと言ってはなんですが、TVの前で力強い応援をしてくれると信じています。ここシルバーストンは、名高い『マゴッツ』『ベケッツ』『チャペル』といったコーナーに代表されるように高速サーキットとして知られており、車体とPUのパッケージとしての実力が試される場所です。昨年は上位争いをしながらも接触により表彰台を逃すという悔しいレースになりました。今年も簡単なレースになるとは思っていませんが、少しでもライバルとの差を縮めるべく、チャレンジを続けていきます」

マックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)
「ハンガリーGPまでの3連戦を終えて1週間のブレイクがあり、チームのみんなが自宅に戻って家族と過ごせました。ハンガリーのレース前の出来事で、余計なストレスをかけてしまったあとだけに、よかったと思います。あのときメカニックのみんながグリッド上で作業している映像を見返しましたが、信じられないような仕事をやり遂げてくれたと感じるとともに、こうした想定外の事態でも、全員が的確に作業を把握し、何をすべきか理解して動いている様子を見て、素晴らしいと思いました。彼らなしでは僕はスタートできませんでした。次はシルバーストンからまた3連戦が始まるのを楽しみにしています。シルバーストンは走っていて本当に楽しいコースです。高速コーナーばかりでコプスに至っては全開で抜けられます!マゴッツも7速に入れて全開で行くとんでもないコーナーで、予選ではブレーキに触れることすらせずにシフトダウンだけで抜けていくことになるでしょう。シルバーストンでは、適切なウイング角を見つける必要があります。そして、もちろん低速コーナーではダウンフォースとグリップが確保したくなるものです。さらに、“英国の夏”ですから、雨が降る可能性もあります。でも、僕はそういうコンディションが好きですし、いろいろな条件が変わるとしても雨は気になりません」

アレクサンダー・アルボン(レッドブル・ホンダ)
「3連戦を終えて家に戻ってこられて、上々の気分です。チームとしては開幕戦で2台ともリタイアなど、いいスタートを切れませんでしたが、その後2戦ではポイントを重ねることができました。マシンはまだ改善できると聞いているので、気持ちはポジティブです。どの部分に取り組まなければならないかは分かっていますし、シルバーストンはファクトリーからも近く、ホームレースになるのもいいことです。過去を振り返ると、チームにとってはなかなか相性のいいサーキットですし、僕もドライビングを楽しめるコースなので、いい結果が残せればと思います。ハンガリーでは多くのオーバーテイクをして楽しめましたが、もう二度と後方スタートはしたくありません。レースでのマシンはとてもいいと思うので、課題は土曜日の予選です。決勝に向けていい位置を確保しなければなりません。ハンガリーは、オーバーテイクの難しいコースなので、そこでグリッド後方から追い上げられたというのはなかなかよかったと思います」

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
「F1がカレンダーを再設定できたことはすばらしいですし、オーストリアとハンガリーでまたレースをすることができてうれしかったです。3戦を終えましたが、マシンの長所と短所を見極めるのは、まだ少し難しいです。僕はエンジニアと一緒に、すべてのサーキットで走り始めに使用可能な基本セッティングを見つけようと作業をしています。全体的にはレースペースには満足していますが、ハンガリーの予選ではマシンに満足できませんでした。ただ、その原因は理解できているので、今週末のシルバーストンではいくつか違うことを試してみて、改善できるかを確認したいと思っています。ハンガリーでの日曜日の流れには満足していますが、10番手前後のグリッドからスタートできれば、より簡単に、いいレースができたはずです。シルバーストンでは予選でもっとパフォーマンスを発揮できるようにプッシュしていきます。中団での戦いは、昨年と比べてもかなりの接戦です。レーシングポイントとマクラーレンがかなり力をつけていて僕らの前にいるので、今後もこの2チームには苦しめられると思っています。ハンガリーGPのあとにはシミュレーターでのセッションができました。本当に久しぶりでしたし僕にとってもチームにとっても有益なセッションになりました。エンジニアとはビデオ通話でのコミュニケーションとなり、最初は慣れませんでしたが、最終的にはうまくコミュニケーションを取ることができました。ここから、またトリプルヘッダーになります。先日の3連戦はタフではありましたが、大きな問題はありませんでした。たくさんレースがあるのでエネルギーをマネジメントして、3つのレースをどれも同じようにフレッシュな状態で臨むことが大切です。もちろんメカニックにとってはさらに厳しいものになっていますが、少なくともヨーロッパで開催されるレースは長時間のフライトもなく、時差ボケの心配もないことはいいことだと思います。次は、シルバーストンでの2連戦です。とても面白いコースで、ロングストレートのおかげでいいバトルが見られます。ここでのドライビングは楽しいですし、早めにベースセットアップを見つけたいです。その部分がいいレースウイークとなるかどうかのキーになります。また、シルバーストンでは、1週目と2週目で使用するタイヤコンパウンドが異なります。2週目により柔らかいタイヤを使用することになるのは大きな変化ですし、フリー走行でなるべく早くタイヤの特性を理解して、マネジメントの方法を見つけなければなりません。その後は3連戦の3戦目としてバルセロナに移動し、第6戦を迎えます。ただ、8月中旬の開催ということで、ウインターテストや例年行われる5月の開催よりもかなり気温が高くなるはずです。そのような異なるコンディションに挑むのは面白いですし、楽しめると思います」

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「開幕からの3連戦を終え、マシンに納得はできていますが、特にエアロに関しては改善すべき点があると思います。よりよいパフォーマンスができるはずです。マシンに特に大きな弱点はありませんが、よりバランスのいいマシンにするためには、2~3点は改善すべきことがあります。最も重要なのは、ダウンフォースをもう少し増やすことです。中団でのマシンのパフォーマンスについては、特にレーシングポイントやマクラーレンが昨年と比較して大きくステップアップしており、僕たちとの間に大きな差ができていることを考慮しなければなりません。ウイリアムズも明らかに大きな進歩を遂げていて、今年はルノーと同じく、中団の一角を占めると考えられます。うまくいけば前にいる彼らのマシンに近づいてオーバーテイクできるはずです。先週、ミルトン・キーンズでシミュレーターを1日やってみました。例年とは異なり渡航の制限があるので、僕はエンジニアと一緒にいられず、イタリアのファエンツァとイギリスのビスタ―にいるスタッフとはビデオ会議でブリーフィングを行いました。いつも通りとはいきませんが、慣れていきたいと思います。次の3連戦については、前の3連戦の疲労も少し出てくるかもしれませんが、僕自身はハンガリーではほとんど走っていませんし特に問題ないと思います。一方で、メカニックやエンジニアたちは感染防止対策を行いながら非常にハイペースで仕事をしなけれればなりません。3連戦を複数行うことは簡単なことではないですし、パドックのみんなにとっては、非常に負荷の高い状況になります。シルバーストンは大好きなコースの一つです。高速コーナーが多く、マゴッツやベケッツのようなセクションではリズムに乗って走ることができるので、シーズンの中でも最もエキサイティングなセクションです。(2010~11年の改修で)旧第1コーナーのコプスが超高速コーナーになり、事実上コーナー数が減ったことで、以前よりもエンジンパワーが重視されるようになったコースです。直線でのスピードがとても重要で、ドライビングが楽しいです。シルバーストンの2戦目は全員がより柔らかいタイヤを使用することになっているので、1戦目と2戦目では取り組み方をそれぞれ考えなくてはいけません。高速コーナーが多いコースではタイヤに負荷がかかるので、オーバーステアやアンダーステアがどれだけ出るかが予選に影響します。レースの距離を考えると、タイヤマネジメントも重要になるでしょう。シルバーストンでの2戦のあとはすぐにスペインのバルセロナに行きます。今となっては、かなり前のことになってしましましたが、冬のテストのデータがあるサーキットです。2月からのマシンの進化を確認するのもおもしろいでしょうね。テストは冬で、とても寒かったですが、レースは8月の半ばなのでとても暑くなりそうです。例年とも、レースの時期が異なります。普段レースが行われる5月上旬と比較すると、タイヤマネジメントはより難しくなるでしょう。ただでさえ、このコースはタイヤの摩耗が激しいですしね」

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カテゴリー: F1 / ホンダF1 / レッドブル・レーシング / F1イギリスGP / スクーデリア・アルファタウリ