ホンダF1 広報担当が語る「日本でF1の認知度を上げる難しさ」
ホンダF1の広報を務める鈴木悠介が、日本国内でF1の認知度を上げる難しさについて語った。
今年、ホンダF1は3強チームの一角であるレッドブル・レーシングへのF1エンジン供給を開始。ホンダにとっては、13年ぶりの優勝とポールポジション、28年ぶりの1-2フィニッシュと、2015年にF1に復帰して以降での最高のシーズンととなった。
F1日本GPは史上最強レベルの台風19号の接近に伴い、土曜日に予定されていた全てのセッションの中止となり、予選と決勝を行うワンデー開催となったが、昨年を上回る8万9000人の観客がサーキットを訪れた。
それでも鈴木悠介は、ホンダがF1に参戦していること自体まで十分に認知されていないと感じている。
「F1というこのスポーツ、いまや日本では地上波で見ることができず、有料メディアに登録している方以外にとっては、なかなか縁遠い存在かもしれません。そしてホンダがF1に参戦していること自体、残念ながらまだそこまで認知してもらえていないようにも感じています。(認知度については僕たちの努力がまだまだ十分でないのかもしれません。)」と鈴木悠介は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「また、たとえ中継やサーキットでレースを見られる環境でも、多くの情報やデータを参照し、適切な知識や解説を伴いながらでないと、何が起こっているかを把握することが難しいスポーツでもあります。サッカーのように、たまたまTVをつけたらやっていて、わかりやすいルールなのでだれでも楽しめるといったタイプのエンターテインメントでないことは、現代の四輪モータースポーツにとって課題であり難しさだと思っています。一言で言って理解するのが『ムツカシイ!』。(一方でマシンやドライバーのカッコよさはどんな方でもわかりやすい部分なのではと思います。)」
「ドライバー、車体、パワーユニット(PU=エンジン)、タイヤ、チーム戦略、サーキット特性など、パフォーマンスを決定するために多くの要素が介在していることがその要因です。特に通常のスポーツと大きく異なるのはドライバーという『アスリート』に加え、マシンという『道具』の良し悪しで結果が大きく異なる部分ではないでしょうか」
「同じくレースである競馬も似た側面がありますが、馬は道具ではなく動物です(それはそれでまた面白い)。サッカーのルールはシンプルなものの、選手特性や戦術などの組み合わせが無限大で非常に奥深い、など、スポーツごとにそれぞれの特徴があります。そしてモータースポーツの特徴の一つとして、視聴環境の難しさも含めた敷居の高さがあることは事実かなとも思っています。現代のF1は『なぜこのような結果になったのか』をシンプルに説明することが難しく、その魅力を伝えるのが仕事の広報担当にとっては非常に悩ましい部分であります。もっと言えば、僕はF1チームの広報ではなくPU=エンジン、つまり部品サプライヤーの広報担当なのでさらにややこしいです」
「反面、その複雑さゆえにおもしろいという側面があることも、このスポーツの魅力です」
「僕自身、10代のころにTVを見ながら漠然と感じていたおもしろさとは、このスポーツが『機械の精巧さと人の情熱との共存』、つまり『冷たさと熱さのぶつかり合い』で成立していることだったように思います。当時は単純にドライバーとマシンが一体となった戦いぶりを見てそう感じましたが、実際にチームの内部に入ってみると、それはドライバーとマシン間のみでなく、エンジニア/メカニックとPUとの間でも同様であるということを目の当たりにする形となりました」
「彼らが相手にしているのは機械であり、人間や動物ではありません。どれだけ情熱を持って接しても、きちんと作られていなければPUは壊れます。徹夜で策を凝らしてデータを入力しても、少しの目論見違いがあればストレートでパワーが切れてしまうこともあります。一方で、ひょんなことから一瞬だけ見えた偶然の発見を、失敗を繰り返しながら再現、その要因を特定し、時間をかけて確実な機構として作り上げることで、飛躍的なパフォーマンス向上を遂げることもあります」
「改善のためのロジックを立て、日々失敗と学びを繰り返しながら前進する開発メンバー、レース状況を元に瞬時で判断を下し最適なエンジンモードをドライバーに提供するPUエンジニア、限られた時間とプレッシャーの中、一つの作業ミスも許されない状況下でPUを組み上げるメカニック…。そんな姿を見て、『ここにも戦いはある。そして僕はこんな姿を皆さんに伝えたいんだ』と感じました」
「F1は主役のドライバー以外の姿が見えにくいスポーツでもあるので、その裏側で、どんな人たちがどのような想いを持って働いているかという部分を見てもらいたい。そしてそこから、なぜホンダという会社がこのスポーツに参戦しているのかが、なんとなく見えてきたらいいなという想いもありました」
カテゴリー: F1 / ホンダF1
今年、ホンダF1は3強チームの一角であるレッドブル・レーシングへのF1エンジン供給を開始。ホンダにとっては、13年ぶりの優勝とポールポジション、28年ぶりの1-2フィニッシュと、2015年にF1に復帰して以降での最高のシーズンととなった。
F1日本GPは史上最強レベルの台風19号の接近に伴い、土曜日に予定されていた全てのセッションの中止となり、予選と決勝を行うワンデー開催となったが、昨年を上回る8万9000人の観客がサーキットを訪れた。
それでも鈴木悠介は、ホンダがF1に参戦していること自体まで十分に認知されていないと感じている。
「F1というこのスポーツ、いまや日本では地上波で見ることができず、有料メディアに登録している方以外にとっては、なかなか縁遠い存在かもしれません。そしてホンダがF1に参戦していること自体、残念ながらまだそこまで認知してもらえていないようにも感じています。(認知度については僕たちの努力がまだまだ十分でないのかもしれません。)」と鈴木悠介は Honda Racing F1 の公式サイトでコメント。
「また、たとえ中継やサーキットでレースを見られる環境でも、多くの情報やデータを参照し、適切な知識や解説を伴いながらでないと、何が起こっているかを把握することが難しいスポーツでもあります。サッカーのように、たまたまTVをつけたらやっていて、わかりやすいルールなのでだれでも楽しめるといったタイプのエンターテインメントでないことは、現代の四輪モータースポーツにとって課題であり難しさだと思っています。一言で言って理解するのが『ムツカシイ!』。(一方でマシンやドライバーのカッコよさはどんな方でもわかりやすい部分なのではと思います。)」
「ドライバー、車体、パワーユニット(PU=エンジン)、タイヤ、チーム戦略、サーキット特性など、パフォーマンスを決定するために多くの要素が介在していることがその要因です。特に通常のスポーツと大きく異なるのはドライバーという『アスリート』に加え、マシンという『道具』の良し悪しで結果が大きく異なる部分ではないでしょうか」
「同じくレースである競馬も似た側面がありますが、馬は道具ではなく動物です(それはそれでまた面白い)。サッカーのルールはシンプルなものの、選手特性や戦術などの組み合わせが無限大で非常に奥深い、など、スポーツごとにそれぞれの特徴があります。そしてモータースポーツの特徴の一つとして、視聴環境の難しさも含めた敷居の高さがあることは事実かなとも思っています。現代のF1は『なぜこのような結果になったのか』をシンプルに説明することが難しく、その魅力を伝えるのが仕事の広報担当にとっては非常に悩ましい部分であります。もっと言えば、僕はF1チームの広報ではなくPU=エンジン、つまり部品サプライヤーの広報担当なのでさらにややこしいです」
「反面、その複雑さゆえにおもしろいという側面があることも、このスポーツの魅力です」
「僕自身、10代のころにTVを見ながら漠然と感じていたおもしろさとは、このスポーツが『機械の精巧さと人の情熱との共存』、つまり『冷たさと熱さのぶつかり合い』で成立していることだったように思います。当時は単純にドライバーとマシンが一体となった戦いぶりを見てそう感じましたが、実際にチームの内部に入ってみると、それはドライバーとマシン間のみでなく、エンジニア/メカニックとPUとの間でも同様であるということを目の当たりにする形となりました」
「彼らが相手にしているのは機械であり、人間や動物ではありません。どれだけ情熱を持って接しても、きちんと作られていなければPUは壊れます。徹夜で策を凝らしてデータを入力しても、少しの目論見違いがあればストレートでパワーが切れてしまうこともあります。一方で、ひょんなことから一瞬だけ見えた偶然の発見を、失敗を繰り返しながら再現、その要因を特定し、時間をかけて確実な機構として作り上げることで、飛躍的なパフォーマンス向上を遂げることもあります」
「改善のためのロジックを立て、日々失敗と学びを繰り返しながら前進する開発メンバー、レース状況を元に瞬時で判断を下し最適なエンジンモードをドライバーに提供するPUエンジニア、限られた時間とプレッシャーの中、一つの作業ミスも許されない状況下でPUを組み上げるメカニック…。そんな姿を見て、『ここにも戦いはある。そして僕はこんな姿を皆さんに伝えたいんだ』と感じました」
「F1は主役のドライバー以外の姿が見えにくいスポーツでもあるので、その裏側で、どんな人たちがどのような想いを持って働いているかという部分を見てもらいたい。そしてそこから、なぜホンダという会社がこのスポーツに参戦しているのかが、なんとなく見えてきたらいいなという想いもありました」
カテゴリー: F1 / ホンダF1