ホンダF1 田辺豊治TD、佐藤琢磨とのインディ500制覇を語る
ホンダF1のテクニカルディレクターを務める田辺豊治が、昨年、佐藤琢磨とともに優勝を成し遂げたインディ500について語った。
昨年、今回と同じ週末にインディアナポリスとモナコで開催された2つの偉大なレース、インディ500とモナコGPは、これまでにない注目を集めた。
なぜなら、フェルナンド・アロンソがインディ500でデビューを飾ったことで、F1とインディがさらに結び付けて語られるようになったからだ。
昨年はHonda Performance Development(HPD)の一員としてインディ500に臨んでいたホンダF1 テクニカルディレクター、田辺豊治は「インディ500はインディカー・シリーズの1戦ですが、他のレースとはまったく違いますし、ただのレースではないのです」とコメント。
「1993年に私がインディカー・プロジェクトを始めた時には、インディ500の偉大さを感覚としてよく理解できていませんでした。しかし、2014年に再び自身が担当となりインディ500で優勝したときには、その凄さを思い知らされました」
「例えば、一般のファンの皆さんに2000年のインディカー・シリーズの年間チャンピオンについて聞いても多くの人は答えられないと思うのですが、2000年のインディ500の勝者が誰だったかについてはみんなよく覚えているのです」
田辺豊治は1年前、HPDのシニア・マネージャーとしてインディ500の会場にいた。米国のHPDは、F1プロジェクトで言うところのミルトン・キーンズ拠点と同じ位置づけだが、彼は昨年までのHPDでも、現在と同じように世界でホンダのプレゼンスを上げるための努力を重ねてきた。そしてそのための最善の方法が、レースに勝つことだった。
ホンダが過去13年間で11勝を挙げているインディ500は、田辺にとってもホンダにとっても特別なレース。そして昨年の佐藤琢磨の優勝により、インディ500は日本にとっても特別なレースになった。
「インディカー・シリーズに参戦した日本人ドライバーは今まで何人かいましたが、インディ500で勝った日本人ドライバーは昨年の琢磨選手までいませんでした」と田辺豊治は語る。
「琢磨選手の勝利は、それまでの他のドライバーの勝利とは違いました。日本でとても大きなインパクトがあったのです。日本におけるモータースポーツの人気向上に繋がったと思います」
「昨年の勝利の後、日本や米国の知人から、沢山の祝福のメッセージが届いたのには驚きました」
佐藤琢磨とホンダには深い結びつきがあります。彼は鈴鹿サーキットのレーシング・スクールを卒業すると、その後F1にステップアップしジョーダン、BAR、スーパーアグリなどのチームでキャリアを積んだ。
田辺豊治は2004年と2005年にジェンソン・バトンのチーフ・エンジニアで、同時期には長谷川祐介がチームメイトの佐藤琢磨のエンジニアだった。田辺豊治と佐藤琢磨はインディカー・シリーズの前に、既にF1で同じチームで仕事をしていた。
「私たちはF1時代からの旧知の仲です。2013年にHPDに異動になった私は、ロングビーチのレースで琢磨選手と再開し、彼はそのレースで優勝しました」
「インディ500で琢磨選手が優勝に向けて戦っている姿を、特別な思いで見ていました。また、プラクティス、そしてレース中にも他のマシンのHondaエンジンに不具合が続いていたので、最後の数周は本当にハラハラしながら見ていました」
昨年のインディ500でに周囲の注目は、彼以外のホンダのドライバーに集まっていた。しかし実際のタイトル争いは、佐藤琢磨とインディ500で3度の優勝を誇るシボレーのカストロネベスとの戦いになった。
「カストロネベスはインディカー・シリーズのトップ・ドライバーですし、インディ500でもとても強いので脅威でした。しかし、最後の2~3周のところでカストロネベスはオーバーテイクに失敗し琢磨選手との距離が広がったので、彼の勝利を確信しました」
佐藤琢磨の優勝によって、ホンダは過去14年間での12勝目を手にした。ホンダと繋がりが強い日本人ドライバーが優勝により、その勝利はさらに特別なものになった。
シーズン中で最も走行距離が短い市街地サーキットのモナコとスーパー・スピードウエイを500マイルに渡って走るインディ500だが、一般に想像されるよりも多くの共通点がある。
HPDでの仕事について、田辺豊治は「日本とアメリカで、レースエンジンのキーとなるテクノロジーに関して情報の交換をしています。それぞれのパーツはそれぞれの拠点で開発をしているものの、ターボチャージャーやダイレクト・インジェクター、燃焼装置などに関しては、インディカーで使用しているものと、F1や日本のSUPER GTの間で、比較的類似したスペックのものを使用しています」と語る。
つまり、これまでのさまざまな分野での田辺豊治の経験が、現在のF1プロジェクトでの仕事に繋がっている。インディ500で勝利した経験を、今週のモナコGPや今後のホンダ F1プロジェクトの成功に繋げるためにレースに取り組んでいる。
「F1に限らず、ホンダがレースに参戦する時には、常に勝利を目指しています。冷静に現状を見つめることも大切ですが、勝利を目指して進化を続けることも大切なのです」
トロロッソ・ホンダはモナコでのポイント獲得に全力を傾けるが、決勝が終わると田辺豊治も米国でのレースの行方を気に掛けることだろう。
「インディ500も観戦すると思います。昨年に比べるとホンダのマシンは競争力がないようにも感じますが、インディ500は長いレースなので最後まで何が起きるかわかりません」
ホンダは今週末二つの偉大なレースを戦う唯一のマニュファクチャラーになる。しかし、モナコとインディアナポリスのレースを続けて観戦するのは田辺豊治ひとりだけではないはずだ。
カテゴリー: F1 / ホンダF1
昨年、今回と同じ週末にインディアナポリスとモナコで開催された2つの偉大なレース、インディ500とモナコGPは、これまでにない注目を集めた。
なぜなら、フェルナンド・アロンソがインディ500でデビューを飾ったことで、F1とインディがさらに結び付けて語られるようになったからだ。
昨年はHonda Performance Development(HPD)の一員としてインディ500に臨んでいたホンダF1 テクニカルディレクター、田辺豊治は「インディ500はインディカー・シリーズの1戦ですが、他のレースとはまったく違いますし、ただのレースではないのです」とコメント。
「1993年に私がインディカー・プロジェクトを始めた時には、インディ500の偉大さを感覚としてよく理解できていませんでした。しかし、2014年に再び自身が担当となりインディ500で優勝したときには、その凄さを思い知らされました」
「例えば、一般のファンの皆さんに2000年のインディカー・シリーズの年間チャンピオンについて聞いても多くの人は答えられないと思うのですが、2000年のインディ500の勝者が誰だったかについてはみんなよく覚えているのです」
田辺豊治は1年前、HPDのシニア・マネージャーとしてインディ500の会場にいた。米国のHPDは、F1プロジェクトで言うところのミルトン・キーンズ拠点と同じ位置づけだが、彼は昨年までのHPDでも、現在と同じように世界でホンダのプレゼンスを上げるための努力を重ねてきた。そしてそのための最善の方法が、レースに勝つことだった。
ホンダが過去13年間で11勝を挙げているインディ500は、田辺にとってもホンダにとっても特別なレース。そして昨年の佐藤琢磨の優勝により、インディ500は日本にとっても特別なレースになった。
「インディカー・シリーズに参戦した日本人ドライバーは今まで何人かいましたが、インディ500で勝った日本人ドライバーは昨年の琢磨選手までいませんでした」と田辺豊治は語る。
「琢磨選手の勝利は、それまでの他のドライバーの勝利とは違いました。日本でとても大きなインパクトがあったのです。日本におけるモータースポーツの人気向上に繋がったと思います」
「昨年の勝利の後、日本や米国の知人から、沢山の祝福のメッセージが届いたのには驚きました」
佐藤琢磨とホンダには深い結びつきがあります。彼は鈴鹿サーキットのレーシング・スクールを卒業すると、その後F1にステップアップしジョーダン、BAR、スーパーアグリなどのチームでキャリアを積んだ。
田辺豊治は2004年と2005年にジェンソン・バトンのチーフ・エンジニアで、同時期には長谷川祐介がチームメイトの佐藤琢磨のエンジニアだった。田辺豊治と佐藤琢磨はインディカー・シリーズの前に、既にF1で同じチームで仕事をしていた。
「私たちはF1時代からの旧知の仲です。2013年にHPDに異動になった私は、ロングビーチのレースで琢磨選手と再開し、彼はそのレースで優勝しました」
「インディ500で琢磨選手が優勝に向けて戦っている姿を、特別な思いで見ていました。また、プラクティス、そしてレース中にも他のマシンのHondaエンジンに不具合が続いていたので、最後の数周は本当にハラハラしながら見ていました」
昨年のインディ500でに周囲の注目は、彼以外のホンダのドライバーに集まっていた。しかし実際のタイトル争いは、佐藤琢磨とインディ500で3度の優勝を誇るシボレーのカストロネベスとの戦いになった。
「カストロネベスはインディカー・シリーズのトップ・ドライバーですし、インディ500でもとても強いので脅威でした。しかし、最後の2~3周のところでカストロネベスはオーバーテイクに失敗し琢磨選手との距離が広がったので、彼の勝利を確信しました」
佐藤琢磨の優勝によって、ホンダは過去14年間での12勝目を手にした。ホンダと繋がりが強い日本人ドライバーが優勝により、その勝利はさらに特別なものになった。
シーズン中で最も走行距離が短い市街地サーキットのモナコとスーパー・スピードウエイを500マイルに渡って走るインディ500だが、一般に想像されるよりも多くの共通点がある。
HPDでの仕事について、田辺豊治は「日本とアメリカで、レースエンジンのキーとなるテクノロジーに関して情報の交換をしています。それぞれのパーツはそれぞれの拠点で開発をしているものの、ターボチャージャーやダイレクト・インジェクター、燃焼装置などに関しては、インディカーで使用しているものと、F1や日本のSUPER GTの間で、比較的類似したスペックのものを使用しています」と語る。
つまり、これまでのさまざまな分野での田辺豊治の経験が、現在のF1プロジェクトでの仕事に繋がっている。インディ500で勝利した経験を、今週のモナコGPや今後のホンダ F1プロジェクトの成功に繋げるためにレースに取り組んでいる。
「F1に限らず、ホンダがレースに参戦する時には、常に勝利を目指しています。冷静に現状を見つめることも大切ですが、勝利を目指して進化を続けることも大切なのです」
トロロッソ・ホンダはモナコでのポイント獲得に全力を傾けるが、決勝が終わると田辺豊治も米国でのレースの行方を気に掛けることだろう。
「インディ500も観戦すると思います。昨年に比べるとホンダのマシンは競争力がないようにも感じますが、インディ500は長いレースなので最後まで何が起きるかわかりません」
ホンダは今週末二つの偉大なレースを戦う唯一のマニュファクチャラーになる。しかし、モナコとインディアナポリスのレースを続けて観戦するのは田辺豊治ひとりだけではないはずだ。
カテゴリー: F1 / ホンダF1