レッドブルの動きがマクラーレンに影響か FIAがF1技術指令を発出

RacingNews365の取材によると、FIAがエミリア・ロマーニャGPを前にF1チームに対して発行した新たな技術指令は、注目を集めるマクラーレンのシステムをめぐってレッドブルが提起した疑問が発端となった。
2025年シーズン前半、タイヤとブレーキの冷却に関する独自の工夫によって優れたタイヤマネジメントを実現し、6戦中5勝を挙げてきたマクラーレン。FIAはイモラGP直前に、タイヤ管理とホイール周辺のボディワークに関する規則について明確化を行った。
しかしイモラではマックス・フェルスタッペンが優勝を果たし、この技術指令がマクラーレンのパフォーマンスに影響を与えたのではないかという見方が広まっている。とはいえ、マクラーレンは指令による変更を否定しており、イタリアでの勢力図に影響はなかったと主張している。
RacingNews365によれば、今回の技術指令はレッドブルがFIAに照会を行ったことが契機となったという。
ミルトン・キーンズ拠点のレッドブルは、最近のグランプリでマクラーレンのブレーキドラムの温度をサーモグラフィーカメラでモニタリングしていたとされる。
現在の仮説では、マクラーレンは「PCM(相変化材料)」と呼ばれる微細なメッシュ構造をブレーキドラム内部に用いている可能性があるという。
これは、小さなチューブ内に金属合金を封入した構造で、使用される合金によって120〜200度の融点を持つ。この合金は、絶縁被覆を施した鉄線の断面のようなもので、電気配線のようなマイクロワイヤーにも見える。それがドラムとチャンネル内部に薄い膜状で配置されている。
この構造によって温度が制御され、タイヤ温度の上昇を抑制。結果としてマクラーレンはタイヤのウォームアップを素早く行うことができ、熱管理に優れた大きなアドバンテージを得ていたと考えられている。
F1では常套手段:他チームの戦略を潰す質問
このように、F1の世界では他チームの技術的優位性に対してFIAに照会を行い、規則の明確化を促すことで相手に変更を強いるのは珍しいことではない。今回レッドブルも、マクラーレンに言及することなく「RB21のブレーキに似たシステムを導入することは合法か」とFIAに質問したとされる。
その結果、FIAが今回のような技術指令を通じて規則を明確化する――というプロセスが進むことになる。
FIAは、今回の件でタイヤ管理およびホイール周辺のボディワークに関して、使用可能な材料や概念も含めた新たな指針を示した。これによって、いくつかのチームは設計の変更を迫られる可能性がある。
ただし、現時点でマクラーレンが実際に何かを変更したという証拠はなく、同チームはイモラGP前の段階で「調整はしていない」と明言している。むしろ、レッドブルの「驚くべきパフォーマンス」の方に注目すべきだと主張している。
イモラ・サーキットの特性もまた、レッドブルRB21にとって有利だったとされている。このマシンは高速コーナーでの挙動に優れており、これがフェルスタッペンの勝利に繋がったとも解釈できる。
マクラーレンのペース低下か、次戦モナコで明らかに
とはいえ、現時点でマクラーレンが本当にパフォーマンスを落としたかどうかは判断が早い。次戦モナコGPでその変化が見えてくる可能性がある。
加えて、次々戦スペインGPからはフロントウイングの柔軟性に関する規則が厳格化される予定であり、技術指令の影響と混同される恐れもある。
いずれにせよ、もし今後も勢力図に大きな変化がなければ、今回の技術指令とそれを取り巻く騒動は「嵐の前の茶番(storm in a teacup)」だったと見なされることになるだろう。
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