F1カナダGP:記者会見 Part.2 - ヒュルケンベルグ、アントネッリ、ローソン

ヒュルケンベルグはスペインでの5位に手応えを示し、アントネッリはC6タイヤへの苦戦と精神面での学びを語った。ローソンはモントリオールへの期待を述べ、3人はルーキー・オブ・ザ・イヤーにハジャーの名を挙げたほか、F1映画や2026年レギュレーションにも言及した。
Q:ニコ、あなたから始めましょう。スペインGPでの5位フィニッシュおめでとうございます。2019年以来のベストリザルトであり、ザウバーにとっても2022年以来の最高順位でした。今シーズンはチームにとって過渡期だと思いますが、この結果はどれほど重要でしたか?
ニコ・ヒュルケンベルグ:そうだね、こういう結果はどんな時でも歓迎されるし、とてもポジティブだよ。メルボルンからバルセロナまでの間は正直ちょっと厳しかったし、結果が出ていなかったからね。今回の結果はチーム全体にとって、とても成功であり、士気を高める意味でも大きな意味があった。
バルセロナではアップデートを導入したんだけど、それが大きな効果を発揮して、パフォーマンスが大きく向上したんだ。もちろん、レース中の状況、例えば終盤のセーフティカーやキミのリタイアなど、いくつかの幸運もあった。でも、実力で得た結果だとも感じてる。ペースも良かったし、ポイントに値する走りだった。あの結果をしっかりものにできたことを嬉しく思っている。
Q:あのパフォーマンスはサーキット特有のものだったと思いますか?それとも今後も維持できると考えていますか?
ヒュルケンベルグ:それは今後見ていく必要があるね。バルセロナはハイスピードなサーキットだけど、ここ(モントリオール)は全く違う。ロースピードでバンピーだし、縁石も大きい。だからかなり違った条件になると思う。今は様子を見ながら、どうなるか確認する段階だね。
Q:キミ、次はあなたです。3連戦はメルセデスのあなたの側にとって厳しいものでした。この3戦で何を学びましたか?
キミ・アントネッリ:確かに、僕の側にとってはかなり厳しい3連戦だった。パフォーマンス面でもうまくいかなかったし、いくつかの問題もあった。でもその中でも学びは大きかった。特に、忙しい週末のマネジメントについて学んだよ。イモラは本当に忙しくて、しかも母国の観客の前だったからプレッシャーも大きくて、正直うまく対応できなかった。全体的に、僕にとっては望んでいたような内容ではなかったけど、それでも週末を通じて多くのことを吸収できた。3戦連続での厳しいレースの後に1週間の休みがあったのは助かったし、今はまた明日からの走行に向けて準備万端だよ。
Q:自分のパフォーマンスについてもう少し詳しく教えてください。イモラまではレースごとに順調に成長していたように見えましたが、この3戦では何が足かせになっていたのですか?
アントネッリ:一番大きかったのは、イモラとモナコで使われた新しいC6タイヤとの相性だったと思う。パフォーマンスを安定して引き出すのが本当に難しかった。C6はとにかく扱いがシビアなタイヤで、アウトラップからすでに正しいウインドウに入れてあげないといけない。それが本当に難しくてね。イモラではセッション間でパフォーマンスが大きく振れて、FP3では上位にいたのに、予選では突然コンマ5~6秒も遅くなってしまった。だから、タイヤの理解と使い方にすごく苦しんだ。それで自信も少し失ったしね。バルセロナでは少しリズムを取り戻せたけど、セッション序盤ではやっぱり時間がかかってしまった。それは前の2戦で難しい予選が続いていた影響もあると思う。これが主な問題だったかな。
Q:C6がまた今週モントリオールで使われますが、今回はうまく対応できそうですか?
アントネッリ:この1週間の間にファクトリーで何日かシミュレーター作業をして、C6について詳しく分析してきた。うまくいった時となぜうまくいったのか、うまくいかなかった時には何が違ったのかを細かく見直した。いろいろ理解できたと思う。モントリオールはまた全然違うサーキットで、路面も閉じているし、ロースピードが多いし、気温もかなり低くなる可能性がある。だからそういった点も踏まえて、今回はより良い対応ができるように準備してきたつもりだ。
Q:ありがとう。ではリアム、あなたに伺います。今週末に向けて、あなた自身やチームの自信はどれくらいありますか?昨年はリカルドが予選5番手、決勝8位と好走しましたね。
リアム・ローソン:去年クルマが速かったっていうのはもちろん良い材料なんだけど、正直言って最近は去年の結果がそのまま再現されることってあまりないんだよね。今年は、去年苦戦したコースで速かったり、逆に去年良かったところで苦戦したりしている。だから、どの週末もゼロから始めるつもりで臨んでる。
個人的にはこのコースをすごく楽しみにしてる。伝統ある場所だし、走るのが楽しそうなサーキットだ。先週ダニエルと話したんだけど、彼もこのコースのことをすごく気に入ってたよ。だから僕もすごくワクワクしてる。
Q:ダニエルからアドバイスはありましたか?
ローソン:たくさん縁石を使え、って言ってたよ(笑)。このコースは他とはちょっと違っていて、バンピーだし、縁石もかなり使う必要があるからね。そういう意味でもユニークで、ドライバーとしてはみんな楽しめる場所だと思う。僕も走るのが楽しみだよ。
Q:このサーキットはオーバーテイクも多くて、“エルボーを張れる”場所でもありますよね。あなたは今年、バーレーンでのニコとの件など、攻めの走りで注目されています。今回もその点を楽しみにしていますか?
ローソン:ああ、あれはペナルティを受けたやつだね(笑)。あれ以来、何度かそういうシーンがあったけど、ちょっと控えめにしなきゃいけないなとは思ってる。でもこのコースはバトルが起きやすいから楽しい。連続したDRSゾーンがあるし、大きなブレーキングゾーンもあって、例えばヘアピンへの進入なんかは絶好のチャンスになる。
あと天候も重要で、今は良さそうだけど、ここは過去にも急に天候が変わったりするから、しっかり備えておく必要があると思ってる。
記者からの質疑応答
Q:3人に質問です(ただし1人は対象外ですが)。仮に自分自身に投票できないとして、今シーズンここまでの「ルーキー・オブ・ザ・イヤー」を挙げるとしたら誰を選びますか?
アントネッリ:アイザック・ハジャーはかなり印象的だったと思う。特に予選での走りがすごく安定している。だから彼を選ぶね。確実に前の方で、いい仕事をしている。
ローソン:正直、僕も同意するよ。僕は彼と実際に戦ってる立場だから、よくわかってる。今年の彼は本当にいいパフォーマンスを見せてる。特に予選ではね。ここ最近の3連戦でも、すごく強かった。
ヒュルケンベルグ:うん、2人と同じ意見だね。アイザックはこれまでのところ、すごくいいシーズンを送ってると思う。もちろん、マシンの力もあるだろうけど、それも含めて良い流れに乗ってる。それに正直言って、今シーズンのルーキーたちはみんな良い仕事をしてるよ。グリッドのどこにいてもね。自分のデビュー当時を思い返すと、いろんな困難があったから、今の若手たちはみんなよくやってると思う。
Q:キミ、明らかにあなたのクルマは暑い気候を苦手としていますが、今回のように涼しいコンディションではチームとしてもっと戦えると考えていますか?また、あなた自身にとっても整った週末が必要だと思いますか?
アントネッリ:もちろん、整った週末にしたいよ。この3連戦は本当に厳しかったからね。気温が下がるのは僕たちにとっては良い方向に働くかもしれない。昨年、ここモントリオールではメルセデスはすごく強かった。でも、今年は違っていて、ちょっと予想外なところもある。
たとえばバーレーンのように気温が高い場所でも、ジョージは速かったし、チームとしての状況も異なる。今年は去年うまくいかなかったコースで良いパフォーマンスを出せていたり、その逆もあったりと、本当に不思議な傾向なんだ。
大事なのは、バランスをしっかり取って、マシンを正しいウィンドウに入れること。最近のマシンは非常にピーキーで、そのウィンドウに入れられるかどうかで結果が大きく変わってくる。だからセットアップの方向性が週末の進展にとって決定的なんだ。チームの雰囲気もすごく良くて、全員がベストなクルマを用意しようと努力してる。あとは僕がその期待に応える番だね。
Q:キミ、パドックではお父さんと一緒にいる姿をよく見かけます。レース週末にお父さんと話すのはいつ、どんなことを話すのですか?
アントネッリ:父は僕にとって大きな存在なんだ。子どもの頃、カートを始めた頃からずっと、すべてを教えてくれた。だから、F1のルーキーイヤーという新しい世界に飛び込んだ今、サーキットに彼がいてくれるのはとても心強い。
ここはまさに“サメのいる海”みたいな世界で、パフォーマンスが出なければすぐに食われる。精神的にも決して楽ではないよ。だから、集中力を保って、鋭くい続けるために父の存在は大きい。
普段は何でも話すよ。一緒にオンボード映像を見返したり、過去のレースのリプレイを分析したりして、次のセッションに向けてどう改善するかを考えている。
Q:ニコ、さきほどF1デビュー当時の話が出ましたが、今の時代と比べて、今のドライバーがF1に入るうえで「簡単になったこと」と「難しくなったこと」は何だと思いますか?
ヒュルケンベルグ:いい質問だね。テクニカルな面では、当時のほうがもっと自由度が高かったんだ。例えばギア比や重量配分など、設定項目が多くて、それらを理解して自分なりに最適化する必要があった。だから、ある意味では複雑だったと思う。
一方で、F1というスポーツ自体は今の方がはるかに大きくなってる。注目度も高いし、メディアの目も厳しい。だから精神的な面では、今の方が新しいドライバーには厳しいかもしれない。僕のデビュー当時は、もう少し小さな世界だったし、もっとリラックスした雰囲気だったと思うよ。
Q:今のマシンは2010年頃のマシンよりも運転が難しいですか?それとも違いますか?
ヒュルケンベルグ:正直、その時々によるかな。今のクルマは非常に速くて、ダウンフォースもすごい。だから、ある瞬間にはすごく安定していて、安全に感じることもある。でも、今のレースを見るとわかるように、接触やイエローフラッグの頻度は昔より少ないよね。ただし、ひとたびクラッシュが起きると、大きなものになる傾向がある。クルマが一気にスナップして、コントロール不能になるんだ。
2010年の頃とはかなり違うよ。うまく説明するのは難しいけど…。
アントネッリ:もっと軽くて、俊敏な感じでしたよね。
ヒュルケンベルグ:そう、小さくて軽くて、挙動も今とは違ってた。
Q:キミ、これまでで最も古いF1マシンを運転したことはありますか?2010年型のマシンには乗ったことは?
アントネッリ:いや、乗ったことない。乗ってみたいとは思ってる。どれだけ違うのか体感したいから。オンボード映像を見ると、クルマがすごく俊敏に動いてて、コーナーへの入りでもかなり動きがあるけど、すごく楽しそうなんだ。
ヒュルケンベルグ:けっこうオンボード見てるんだね(笑)
アントネッリ:うん、かなり見てる(笑)。今のクルマはダウンフォースが大きいから、動きが制限される部分もあるけど、昔のはもっと小さくて自由度が高かった。最近メルセデス・ヘリテージを見に行って、2010年型と今年のクルマのサイズの違いに驚いたよ。あのV8サウンドも、ぜひ体感してみたいな。
Q:ニコ、ルイスが先ほどF1映画について話していました。あなたもブラッド・ピットとの撮影などで関わったかと思いますが、作品についてどう感じましたか?また、F1人気の拡大につながると思いますか?
ヒュルケンベルグ:どう広がるかはこれからだけど、すでに少し映像を見せてもらっていて、とても興味深かったし、素敵な仕上がりだった。観客もきっと気に入ると思うよ。F1チームやドライバーが何をしているのか、レースの合間の準備がどれだけ大変かなど、いろんな側面が描かれている。個人的には、なかなかクールな作品だと思った。
Q:他の2人にも映画について聞かせてください。キミ、どう思いましたか?
アントネッリ:ニコが言ったことに付け加えることはあまりないけど、本当に現場の雰囲気をうまく捉えていたと思う。グリッドでの瞬間だけじゃなく、舞台裏やレース間の準備、フィジカル面だけでなくメンタルの準備、そしてメディア対応も含めて、F1の世界がリアルに表現されていた。観る人にとっては、とても興味深いものになると思う。
ローソン:うん、僕からも特に新しく言えることはないけど、これまでF1をあまり見てこなかった人たちにとっては、きっと良い入り口になると思う。ファンが増えるきっかけになるはずだし、映像もすごく印象的だった。ネタバレは避けるけど、臨場感があって、F1の迫力が伝わる仕上がりだったよ。とにかく、すごくクールだった。
Q:キミ、さっき“サメのいる世界”という表現をしていましたが、あなたのような若手ドライバーが、パフォーマンスを出すプレッシャーの中で学び続けるには、どんなバランス感覚が必要だと感じていますか?
アントネッリ:簡単じゃないね。一番学んでいるのは、「FP1からすでにトップパフォーマンスで臨む必要がある」ってことだ。そこを逃すと、すぐに遅れをとってしまうし、そこから挽回するのは本当に難しい。
でも、他のドライバーたちに気後れする理由はないと思ってる。F1で戦えるということは、世界最高の19人のドライバーたちと走っているということで、その中にはF1の歴史を作ってきた人たちもいる。でも、ルーキーとしてそういう相手と競うのはすごくワクワクする。自分の力を試せる絶好の機会だし、チャレンジでもある。
同時に、まだまだ学ぶべきことが多いのも事実。いろんな状況を経験して、さまざまなシナリオに直面する必要がある。今回の3連戦は、内容としては決して良くはなかったけど、学びとしては本当に大きかった。初めて「うまくいかない」瞬間を経験して、自信もなかったし、タイヤの扱いにも苦しんだ。でもその分、どう対応すべきかをしっかり学べたから、今後に向けて大きな糧になったよ。
Q:ニコ、今の世代のマシンと旧世代のマシンの違いについて話が出ましたが、来年2026年には小型化された新しいマシンが導入されます。現時点で何か感じていることはありますか?シミュレーターで試しましたか?
ヒュルケンベルグ:まだ来年のマシンについては、あまり触れてないんだ。今のところは理論や図面ベースの話ばかりで、実際に試したり、シミュレーターで走ったりした経験はない。
ただ、来年からマシンが大きく変わるというのは分かっているし、それによって全員が“再学習”を迫られることになると思う。特にシーズン序盤は、理解を深めて、どう最適化していくかがカギになるだろうね。いわゆる“スイートスポット”を見つけて、性能を引き出す作業が重要になるはず。今はまだ予測の域を出ないけど、間違いなく全員にとって大きなチャレンジになるよ。
Q:キミ、コンストラクターズ選手権ではフェラーリがわずかにリードしています。今後の戦いについてどう考えていますか?彼らを上回るのは簡単なことではないと思いますが?
アントネッリ:それは本当に簡単じゃないと思う。ここ最近のフェラーリはかなり強いからね。僕自身としても、またパフォーマンスを取り戻す必要がある。ジョージは素晴らしい仕事をしているし、僕はこの3戦で自分の力を発揮できなかった。それにすごく不満を感じてる。
だからこそ、今後は自分の調子を取り戻して、しっかりとした走りを見せることが重要だと思ってる。何よりも大事なのは安定性。毎戦安定して良い結果を出すこと。そのうえで、チームと協力してマシンをさらに良くしていく。そして僕自身もレースごとに成長していくこと。簡単な道のりじゃないけど、チーム一丸となって取り組めば、シーズン終盤までに十分達成可能な目標だと信じてる。
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