F1アメリカGP 決勝:持ちタイヤ数&タイヤ戦略予想

土曜日のサーキット・オブ・ジ・アメリカズは、レッドブル・レーシングとマックス・フェルスタッペンにとって記念すべき一日となった。スプリントで勝利を収め、予選でも約0.3秒もの差をつけてポールポジションを獲得。しかし、数字の上では圧倒的に見えるこの状況も、果たしてそのまま日曜の決勝に直結するのだろうか。
フェルスタッペン自身は楽観視していない。マクラーレン勢のロングランペースの強さと、高温コンディションが「パパイヤカラー(マクラーレン)」に有利に働く可能性を強調している。
気温30℃、路面温度48℃が予想される今大会では、ピレリが今年新たに導入した「ハードとミディアムの間に位置するブリッジコンパウンド」が戦略の鍵を握る。
昨年のレースを振り返る
昨年のアメリカGPでは、ワンストップ戦略が主流だった。上位15台が「ミディアム→ハード」または「ハード→ミディアム」で完走し、前者が主流。トップ5のうち7台がミディアムスタートを選んでいた。
ピットストップのタイミングも広く分かれ、シャルル・ルクレールが26周目、カルロス・サインツJr.が21周目、フェルスタッペンが25周目にピットイン。マクラーレン勢のランド・ノリスとオスカー・ピアストリはそれぞれ31周目と32周目まで引っ張った。
後方からは、ハードスタート勢が追い上げた。ジョージ・ラッセルはハード→ミディアムで6位完走。リアム・ローソン(19番手スタート→9位)、フランコ・コラピント(15番手スタート→10位)も同戦略でポイントを獲得した。
今年の最速戦略は?
2025年仕様では、ピレリの“コンパウンドブリッジ”が戦略に本物のジレンマを生んでいる。C1ハードは耐久性抜群だが遅く、ミディアム→ハードの1ストップが理想形。しかし、ミディアム→ソフトで走る場合はタイヤ管理が極めてシビアになる。
一方、ミディアムとソフトを組み合わせた2ストップ戦略は明らかに速いが、1回多いピットロスを取り戻すだけのペースが得られるかが課題だ。
ピレリのシモーネ・ベッラ主任エンジニアはこう説明する。
「明らかにC1とC3〜C4の間には大きな性能差があるが、我々のシミュレーションでは約2秒の差を想定していた。だが実際のFP1では1.4秒程度で、予想よりも良い傾向だった」
つまり、ミディアム→ハードの1ストップが“現実的な最速案”だ。理想のピットウインドウは20〜26周目。ただし、アンダーカット効果が強く、隊列がばらけた際には早めのピットが連鎖する可能性もある。

上位勢の別解:ソフトスタート戦略
2ストップ戦略を選ぶなら、ソフトスタートが有効だ。
■ ソフト→ミディアム→ミディアム(ピット時期:12〜18周目/32〜38周目)
■ ソフト→ミディアム→ソフト(ピット時期:12〜18周目/36〜42周目)
スタート直後のグリップを最大化できるほか、序盤にセーフティカーが入れば、残りをミディアム2本で走り切る柔軟性もある。

後方勢の選択肢
昨年有効だった「ハード→ミディアム」の逆張り戦略は、今年は非推奨だ。C2に代わって導入されたC1が序盤では遅すぎ、セーフティカーにも対応しづらい。
その代わり、後方勢にとって注目なのは「ミディアム→ソフト」。前半を長めに引っ張り、終盤にソフトで勝負する形だ。ピットウインドウは28〜34周目。ただしソフトでのロングランはリスクが高く、温度とグリップの管理が問われる。

天候と決勝の見どころ
決勝は週末で最も涼しいが、それでも気温は30℃、路面温度は48℃前後。北東からの強い風が吹き抜ける中、デグラデーション(タイヤ摩耗)は避けられない。
つまり、勝敗を分けるのは純粋な速さではなく「タイヤをいかに持たせるか」。
フェルスタッペンの4度目のアメリカGP制覇は目前に見えるが、日曜のCOTAは“戦略勝負”の舞台になりそうだ。

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