FIA、F1アメリカGPで「ヒートハザード」宣言 冷却ベスト義務化へ議論
FIA(国際自動車連盟)は、テキサス州オースティンで開催されるF1アメリカGPにおいて「ヒートハザード」を宣言した。これにより、前戦シンガポールGPに続き、ドライバーは特別設計の冷却ベストを使用できるようになる。

ドライバーはレーシングスーツの下に冷却ベストを装着することで、コクピット内の高温環境でも体温を下げ、集中力を維持することができる。一方、使用を選ばない場合は、公平性を保つため同等の重量のバラストを積む必要がある。

今回の警告は、F1公式気象サービスによる予報で週末の最高気温が摂氏31度に達する見込みとなったことを受けて発令された。

木曜日に発表された声明でFIAは「スポーティングレギュレーション第26.19条に従い、公式気象サービスからスプリントまたは決勝のいずれかでヒートインデックスが31.0℃を超えると予測されたため、ヒートハザードを宣言する」と説明した。

FIAが同様の宣言を出したのは、前戦シンガポールGPに続いて2戦連続。冷却ベストを使用するか否かは各ドライバーの判断に委ねられたが、暑さが過酷だったカタールGP(2023年)での経験を踏まえた措置とされる。

当時、ウィリアムズのローガン・サージェントは体調不良でリタイアし、アストンマーティンのランス・ストロールはレース後に失神しかけて倒れ込むなど、ドライバーへの負担が深刻化していた。

F1 冷却ベスト

2026年から義務化の可能性も
FIAは2026年シーズンから「ヒートハザード」が宣言されたレースで冷却ベストの着用を義務化する計画を検討している。しかし、この方針には一部ドライバーから反発の声も上がっている。

マックス・フェルスタッペンはシンガポールGP予選後、次のように語った。

「僕はベストを使っていないし、今後も使うつもりはない。これはドライバーの選択に任せるべきだと思う」

「もちろんFIAは『安全のため』と言うだろうけど、安全面で改善すべき点は他にもたくさんある。ピット入口の設計などのほうが優先度は高いと思う。僕はあのベストが好きじゃない。体にチューブが巻き付いていて、シートベルトの近くにあるのが嫌なんだ。デザインの問題だと言われるかもしれないけど、そうは思わない」

「ドライバーが自分の判断で選べるようにすべきだ。使いたい人もいれば、使いたくない人もいる。それでいい。個人の好みの問題だよ」

安全と自由のせめぎ合い
FIAが進める冷却ベスト義務化は、健康と安全を重視する近年の潮流の延長線上にある。一方で、フェルスタッペンが指摘するように、装備の装着感や操作性への影響も無視できない。特に、ベルトとの干渉や体への密着感に不快を感じるドライバーが多く、改良なしでの強制適用は反発を招く可能性がある。

今後の焦点は、冷却システムの軽量化や快適性の向上、そして安全対策としての効果の科学的裏付けだ。義務化に向けた技術的改善とドライバー側の納得の両立が、2026年以降の課題となるだろう。

Source: ESPN

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カテゴリー: F1 / F1アメリカGP / FIA(国際自動車連盟)