アルファタウリ・ホンダF1:2020年 第1戦 F1オーストリアGP プレビュー
アルファタウリ・ホンダF1は、2020年のF1世界選手権の開幕戦オーストリアGPにピエール・ガスリー、ダニール・クビアトという布陣で挑む。

昨年、トロロッソとして2回の表彰台を獲得したチームは、今年からレッドブルの衣料ブランドを宣伝するためにアルファタウリへとチーム名を変更。新たなネイビー&ホワイトのカラーリングへの変更は好評で、2020年F1マシン『AT01』はF1公式サイトのファン投票で“最も格好いいカラーリング”に選ばれている。

ホンダF1とのパートナーシップも3年目を迎えて円熟味を増しており、ミッドフィールドでの拮抗したバトルが期待される。

ピエール・ガスリー(アルファタウリ・ホンダ)
「オーストラリアGPが中止になったあと、第2戦が行われるバーレーンへ移動する前にドバイに寄り、様子を見るために2~3日滞在しようと思っていた。しかし、イタリアの空港が閉鎖されて戻ることができず、フランスに戻って家族を危険にさらしたくないという気持ちもあった。そこで、トレーナーと共にドバイに滞在することを決断し、2カ月間の合宿を行った。ドバイではヨーロッパ同様の規制が敷かれ、外出時にはマスクと手袋の着用が義務付けられていた。結局、5月中旬にフランスに戻らなかったが、その際ドバイの空港は人気がなく閑散としていて、フランスへの直行便が飛んでいなかったのでドイツのフランクフルトを経由せざるを得なかった。なにもかもが遅れ、電車にも乗り遅れてしまい、家に帰るために7時間も車を運転した。それでも普段はなかなか会えない家族と時間を過ごせたのはよかった。いつもは数日おきに飛行機に乗って移動するため、こんなに長い休みを取れない。10歳くらいの頃から、2カ月以上同じ場所で過ごしたことがなかったので。ドバイでは60日中58日くらいはトレーニングをしていたので、肉体的には今までで最高の状態にある。時々、友人とオンラインゲームをしたり、イタリア語を磨こうとオンラインレッスンを受けたりしていた。その他には船の免許を取るための勉強や、レーシングカート、ゴルフなどをしていた。フランスの自宅に戻ってからもカートは続けていたし、バーチャルでF1やルマンのレースにも参加した。とても楽しく充実した時間を過ごせた。もちろんチームとも連絡を取っており、毎週チーム代表のフランツ(トスト)やエンジニアと話していた。そしてようやく6月末のフィルミングデーにイモラ・サーキットでリアルなF1マシンをドライブすることができた。最初に2018年のマシンに乗り、次に今年のマシンをドライブした。イモラで最後にレースをしたのは12年だが、僕のお気に入りのサーキットだ。その地でマシンを走らせることができて最高にハッピーだった。レースの興奮、競り合い、スピードが恋しい。レースが再開されるのは最高の気分だ。これからは毎週のようにレースが行われるので忙しくなるだろう。今はそのことにワクワクしている。最初の数レースが無観客で行われるのは残念だが、シーズンをできる限り早く、そして安全にスタートすることを優先したのだと思う。あと数カ月で事態が改善することを期待している。安全面では万全の措置が取られるだろう。移動や人との会話においては厳格に制限されていて、健康面ではしっかりと管理されている。一筋縄ではいかないが、必要な予防措置はすべて講じている。僕たちドライバーがマシンをドライブしている場面は今までと全く変わらないでしょう。しかし、その裏側ではさまざまな対応が行われている」

ダニール・クビアト(アルファタウリ・ホンダ)
「メルボルンでのレースが中止になり、できるだけ早く帰国し、大変な時期を家で過ごしたいと思った。帰るとすぐにロックダウンが始まったので、モナコの自宅で自主隔離生活を送った。なにもせずにただ座っているのではなく、スポーツなど、なにかできることをやろうとした。ある面ではそれほど悪い状況ではなかっただろう。実際、いつもよりも少し多く眠ることができたからね。しかし、しばらくすると日々は単調なものになった。F1から離れていた1年間を除き、最も長い期間、実際のレーシングカーをドライブしていない。5月初旬にカートコースが再開すると、すぐに向かった。うれしくてたくさん運転した。ドライビングやレースの感覚を確認するのに役立ったし、楽しかった。ロックダウン中もエンジニアのマッティア(スピニ)とは連絡を取り合っていた。実は家に小さなシミュレーターがあり、彼とは何度か一緒に予選のシミュレーションをした。iPadで彼と繋がって予選のセッションを行ったけど、実際のサーキットを走っているかのように話しかけてくれた。それが僕たちにできる最善の方法だった。他のF1ドライバーの多くもシミュレーションレースをやっていたのを知っている。ただ、実際のマシンを運転しているようには感じられず、正直なところ僕には向いていなかった。移動制限があるためイギリスへ行ってチームのシミュレーターを使うことができていないけど、2~3週後には状況は改善していると願っている。実際のレースや今シーズンの展開については、レースごとに判断していくことになるだろう。大会の運営側が安全だと判断した場所でレースをしていく。大会の管理状況や運営カレンダーを信頼しているし、不測の事態が起こらないことを願っている。コース上でのマスクの着用について、先日のフィルミングデーでも同じような状況で作業を行ったが、ヘイローが導入されたときのようにすぐに慣れると思う。あとは無観客レースにも慣れる必要がある。無人の観客席は奇妙に感じるだろう。どんなスポーツでも観衆は大事だからね。この状況をどう乗り切るかについてはなんともいえない。トラックデータは、冬のバルセロナのものしかない。オーストリアのレッドブル・リンクに向けてしっかりと計画を立てて臨むことになるだろう。レッドブル・リンクは好きなサーキットだ。高速コーナーが多い伝統的なレイアウトで、ここでのレースは楽しい。ダブルヘッダーなので、長い間サーキットにいることになるだろう。田園地帯の素敵な場所で、新鮮な空気の中でトレーニングをすることができる」

田辺豊治(ホンダF1 テクニカルディレクター)
「当初開幕戦となるはずだった3月のオーストラリアGPが走行中止になって以降、長い期間を経て、再びサーキットに戻れることをホンダのメンバー一同が非常にうれしく思っています。この中断期間中には、急きょ改定されたF1レギュレーションにともない、日本のHRD Sakuraと英国ミルトンキーンズでファクトリーシャットダウンを実施しました。その期間を除き、我々はパワーユニットの開発を継続し、今回の2020年初戦に向けた準備を進めてきました。このレースで使用するパワーユニットはオーストラリアで使用する予定だったものから、信頼性とパフォーマンス両面でのアップデートが施された仕様になります。いまだにウィルス感染が収まりきっていない状況下でここから欧州各地を転戦する戦いが始まります。レースを確実に実施するためにはメンバー・関係者の安全が最優先となることはいうまでもなく、そのために各チームともに参加人数を最低限とし、F1が定めた感染防止ルールに従いレース運営を進めていきます。ホンダにおいても、マシンを走行させるのに必要なエンジニア・メカニックといった要員は通常時と同人数が帯同するものの、マーケティングや広報、一部のマネジメントといった間接スタッフは帯同せず、リモートでオペレーションを行う形になります。レース帯同メンバーは2つのパートナーチームと共にそれぞれ行動し、同じホンダ内であっても担当チームが異なるメンバー同士では接触しないかたちでレース運営を行います。第1戦、第2戦が同じオーストリアのレッドブル・リンクで行われるため、移動の負担はいくらか軽減されますが、多くの制約をともなう形での3週連続のレース開催は、精神的・肉体的にもタフなものになると考えています。開幕の地となるオーストリアのレッドブル・リンクは、昨年ホンダがF1復帰後初優勝を挙げた地で、我々にとって相性のいいサーキットです。今年はレッドブル・レーシング、アルファタウリ・ホンダ共にシーズン通して昨年よりもさらに上の成績を目指して戦いますので、その目標に向かって勢いをつけるべく、開幕戦で好成績を挙げられるようにチーム一丸となって挑みます」

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カテゴリー: F1 / スクーデリア・アルファタウリ / ホンダF1 / F1オーストリアGP