フェルナンド・アロンソ 腰痛対策でF1マシンに“空気式ランバーサポート”導入
フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)は2026年F1カナダGPのスプリントレースを途中リタイアしたが、その背景には長年抱える腰痛と、マシン振動への苦肉の策があった。

今回、スペイン紙『Marca』のマルコ・カンセコ記者によって明らかになったのは、アロンソ専用に開発された“空気式ランバーサポート”の存在だ。シート内部に仕込まれた簡易的なエアクッションによって腰への負担を軽減しているという。

アロンソ専用に導入された“空気式ランバーサポート”
アストンマーティンは、アロンソの背中とカーボン製シートの間に膨張式クッションを配置し、走行中の振動による負担を和らげている。

この装置には細いチューブが接続されており、ガレージ内では空気圧を調整する様子も確認されている。構造自体は非常にシンプルで、血圧計のようなポンプ式ノブを使ってサポート量を微調整する仕組みだという。

F1マシンにおいてシートは単なる座席ではない。ステアリングやペダルと並び、ドライバーがマシン挙動を感じ取る重要な接点でもある。

しかしアロンソは近年、背中への強い負担を繰り返し訴えており、特にホンダ製パワーユニットとの統合後に発生している振動問題が、身体へのダメージを増幅させているとみられている。

今回の装置は、その負担を少しでも軽減するための現場対応型のソリューションだった。

“数ミリ”のズレが激痛につながる現実
ただし、このシステムは根本解決ではない。

空気式クッションは縁石通過や路面からの振動によって徐々にズレが生じるため、メカニックがセッションごとに手動調整を行っているという。

わずか数ミリの位置変化でも、アロンソにとっては“耐えられる痛み”と“走行不能レベルの苦痛”を分ける重要な違いになる。

カナダGPスプリントでは、その不安定さが限界を迎えた。

アロンソはレース中に違和感の悪化を訴え、ポイント圏外を走行。さらに天候変化による戦略チャンスも見込めなかったことから、チームは無理を避けてリタイアを選択した。

「残念ながら周回を重ねるごとに、どんどん不快感が強くなっていった」

「ポジション的にもポイント圏から遠く、雨の可能性もなかった。だから苦痛を終わらせることにした」とフェルナンド・アロンソは語った。

“寝かせすぎ”コクピット設計との関連
決勝後には、アストンマーティンF1が今季型「AMR26」で採用した新たなコクピット設計が、アロンソの不快感に影響していたことも明らかになった。

チームは重心低下と空力効率向上を狙い、ドライバーの着座姿勢を従来以上に寝かせたレイアウトを採用。しかし、その変更がアロンソの腰や背中への負担を増幅させていた可能性がある。

マイク・クラックは、問題が単なるシート調整ではなく、設計思想そのものに関係していることを認めている。

「彼は以前から不快感を抱えていた。今までは走れなくなるほどではなかったが、圧迫されるポイントがあって、それがどんどん悪化していくような状態だった」

「こうしたマシンでは可能な限り低い位置に座らせようとする。近年のF1ではドライバーはどんどん寝た姿勢になっている」

「だが、おそらく我々は一歩進みすぎたのかもしれない」とマイク・クラックは語った。

アストンマーティンは次戦に向けて新しいシート投入も準備しており、コクピットポジションの見直しを進める方針だ。

現代F1マシンの過酷さを示した一件
今回の“空気式ランバーサポート”問題は、現代F1マシンがドライバーの身体へ与える負荷の大きさを改めて浮き彫りにした。

特に2026年型マシンでは、電動化強化による重量増加やエネルギー回生特性の変化もあり、各チームが振動対策に苦戦している。

アストンマーティンとホンダも、シーズン序盤から振動問題への対応を続けており、ホンダ側はハードウェア変更やレイアウト修正を進めているとされる。

ただ、今回明らかになった“空気式ランバーサポート”は、そうした根本対策が完成するまでの暫定措置にすぎない。

なお、アロンソはその後の決勝レースでもリタイアを喫しており、モントリオールの週末は肉体面とマシン面の双方で厳しい戦いとなった。

44歳となったアロンソは依然として高い競争力を見せているが、その裏ではF1マシンとの“身体的な戦い”も続いている。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / フェルナンド・アロンソ / ホンダF1 / F1カナダGP / アストンマーティンF1チーム