キミ・ライコネン フェラーリF1時代の"乾いた路面でフルウェット”事件の真相

当時は「なぜあの判断を下したのか」と長年語り草となっていたが、スメドレーはポッドキャストで、雨雲を読み違えた結果、ピットウォールが混乱状態に陥っていたことを率直に振り返っている。
雨を先読みしたフェラーリの賭けが裏目に
2009年当時は給油が認められていたため、各チームは燃料搭載量に応じたピット戦略を組んでいた。
ライコネンも18周目前後で予定されたピットストップを迎えるタイミングだったが、セパン上空には黒い雨雲が迫っており、フェラーリ首脳陣は「まもなくモンスーン級の豪雨が来る」と判断した。
その結果、通常のレインタイヤではなく、最も排水性能の高いフルウエットタイヤを装着してコースへ送り出すという大胆な戦略を選択した。
しかし、雨は予想どおりには降らず、ライコネンは完全に乾いた路面をフルウエットタイヤで走行することになった。
「これは大混乱だ」ピットウォールで感じた違和感
当時フェリペ・マッサ側のエンジニアだったロブ・スメドレーは、ポッドキャスト『High Performance Podcast』で当時を次のように振り返った。
「同僚を悪く言うつもりはないが、あのマシンは僕の担当ではなかった」
「クリス・ダイヤーとアンドレア・ステラが『雨が降り始めた』『ウエットタイヤにしよう』と話しているのが聞こえた」
ところが実際には通常のウエットタイヤではなく、フルウエットタイヤを装着する決断が下されたという。
スメドレーは、その瞬間に「これは大混乱になる」と感じたと明かした。
さらにレーダー画面を見ると、確かに雨雲は存在していたものの、本格的な豪雨はまだ20分ほど先だったという。
ライコネンも思わず困惑「何なんだこれは」
当然ながら、ライコネン本人も状況を理解できなかった。
スメドレーによると、ライコネンはピットレーンを出た直後に思わず驚きの声を上げたという。
一方、当時ライコネンのレースエンジニアだったアンドレア・ステラ(現マクラーレンF1代表)は、「もうすぐ雨が来るからタイヤを労わって走ってほしい」と無線で説明し、ドライバーを落ち着かせようとした。
しかしライコネンは納得せず、不満を漏らしながら周回を重ねた。
乾いた路面ではフルウエットタイヤは急速に摩耗し、ライコネンは1周あたり約10秒も失う苦しい走行を強いられた。
雨は来たが時すでに遅し
約3周後、ようやく本格的な雨が降り始めた。
だが、その頃にはフルウエットタイヤはすでに使い物にならないほど傷んでおり、フェラーリはライコネンを再びピットへ呼び戻してインターミディエイトタイヤへ交換するしかなかった。
雨のタイミングを完璧に当てれば戦略的な成功例となるはずだったが、実際には約3周早すぎた判断が裏目に出てしまった。
結果としてライコネンは最後尾まで順位を落とし、最終的には14位でレースを終えた。
17年経っても語り継がれるフェラーリ屈指の戦略ミス
この2009年マレーシアGPは、その後モンスーンによる赤旗中断でレースが再開されず、ハーフポイントが与えられたことでも知られている。
その中でもライコネンの「乾いた路面でフルウエットタイヤ」という判断は、F1史に残る戦略ミスのひとつとして語り継がれてきた。
今回のスメドレーの証言によって、その背景には雨雲レーダーへの過信や現場での意思決定の混乱があったことが改めて明らかとなり、フェラーリ史に残る失策の舞台裏がようやく関係者自身の口から語られることになった。
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