「ターン15は角田裕毅に非がある」 F1アメリカGPベアマン接触にバトン見解
元F1世界王者でスカイスポーツF1の解説者を務めるジェンソン・バトンが、2025年F1アメリカGP決勝で発生した角田裕毅(レッドブル・レーシング)とオリバー・ベアマン(ハースF1チーム)の接触未遂について分析した。

バトンはターン15での攻防を「角田裕毅に非がある」と評しながらも、彼のレース全体の戦いぶりについては一定の評価も示した。

ターン15の攻防──「リアクション・ムーブ」に見えた防御
問題となったのはレース終盤、7位を巡るバトルだった。

ベアマンは34周目、角田裕毅のイン側にマシンを差し込み、オーバーテイクを試みた。しかし直後にスピンを喫し、ポジションを失った。

スカイスポーツF1の解説中でバトンは、その瞬間をこう分析した。

「彼(角田裕毅)はオリー(ベアマン)の動きをミラーで見ながら反応していた。左に寄りすぎて芝生に乗りかけて、慌てて戻っていた。完全に後ろの動きに反応していた」

「しかもあのコーナーでは非常に早くブレーキを踏んでいた。それも後続にとって危険だ」と続け、角田裕毅のライン変更を“リアクション・ムーブ(reactive move)”とみなした。

F1では高速域のブレーキングゾーンで進路を変える行為が禁止されており、FIAは過去にも同様の動きに対して厳しく警告を出している。バトンはこの点を強調し、事故に至らなかったのは「運が良かっただけ」と警鐘を鳴らした。


角田裕毅のスタートを評価「ターン1では完璧な攻め」
ただしバトンは、角田裕毅のレース全体を否定したわけではない。特にスタート直後のターン1で見せた積極的な走りを高く評価した。

「スタートでブレーキを遅らせて多くのポジションを稼いだ。あれは素晴らしい動きだったし、合法的な攻め方だ。問題はベアマンとのあのシーンだけだ」とコメント。

彼の見解は、ドライバーとしてのリスクマネジメントと攻撃的な防御の“線引き”を明確に示すものとなった。

【動画】 角田裕毅 F1アメリカGP決勝スタートでローソンを“意地”のブロック

オリバー・ベアマン「危険な動きだった」
この一件について、当事者のオリバー・ベアマンはレース後に角田裕毅を厳しく批判した。

「僕にとって彼の動きは不公平だった。ルールにも、レースの精神にも反している。あのスピード域でブレーキング中に動くのは本当に危険だ」とスカイスポーツF1に語った。

「2周にわたって彼と戦っていた。僕の方が速かったし、ターン12でも13でも15でもインを狙ったけど、彼は僕の動きに反応してラインを変えていた。最終的にスピンを喫したけど、大クラッシュにならなかったのは幸運だった」

さらにベアマンは、「彼は週末を通して苛立っていたように見えた」と付け加え、角田裕毅のドライビングを“感情的だった”と評した。

角田裕毅「ルール違反ではない。僕はコントロールしていた」
角田裕毅はベアマンの批判に反論した。

「ブレーキング中に動いたとは思っていない」と語り、行為そのものを否定。

「彼がスピンしたのは残念だけど、いいバトルをしていた。あれで終わってしまったのは不運だっただけだ」と述べた。

そして印象的な一言が続く。

「僕は彼のF1チームメイトじゃない。トップ10を目指して戦っているだけだと思う」

この発言には、「同じチーム同士のように遠慮する必要はない」という明確な姿勢が表れている。角田裕毅はあくまで“正当なバトル”の一環として自らの動きを正当化した。

角田裕毅(レッドブル・レーシング)とオリバー・ベアマン(ハースF1チーム)

強気の防御か、危険な反応か──評価が分かれた攻防
今回の一件は、F1における防御の境界線を改めて浮き彫りにした。

ブレーキング中のライン変更は禁止されているが、ドライバーによっては「わずかな修正」「ターン進入の姿勢変更」と捉える場合もあり、解釈に幅がある。

ベアマンはそれを“危険な動き”と受け取り、角田裕毅は“正当な防御”と主張。バトンは両者の間で「反応した事実はあった」と指摘した。

この三者三様の視点が示すのは、F1における“フェアバトル”の定義がいかに繊細であるかという点だ。わずか数メートルの判断が、レース後の議論を巻き起こす。

今後への影響──角田裕毅の評価とメキシコGPへの注目
角田裕毅は今季、レーシングブルズからレッドブル・レーシングへ昇格して以降、チームメイトのマックス・フェルスタッペンと比べられる厳しい立場に置かれている。
しかし、夏休み明け以降は5戦中3戦で入賞を果たしており、安定感を取り戻しつつある。

今回の騒動は彼の攻撃的なドライビングスタイルを改めて浮き彫りにしたが、同時に“抜かせない強さ”を示した一幕でもある。

ベアマンの批判、バトンの分析、角田裕毅の反論──それぞれの視点が交錯したアメリカGPのバトルは、次戦メキシコGPでも再び注目の的となりそうだ。

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カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / レッドブル・レーシング / ジェンソン・バトン / F1アメリカGP / オリバー・ベアマン