角田裕毅 F1シート喪失危機にディ・レスタ「結果を出せなければ終わり」

この厳しい現実を、元F1ドライバーであり現在は解説者を務めるポール・ディ・レスタがつづった。彼は角田裕毅の現状を「結果を出さなければ終わり」という冷酷な評価軸の上に置き、その未来に迫るタイムリミットを指摘する。
レッドブル育成プログラムは才能を迅速に昇格させる一方で、結果を残せない者を容赦なく切り捨てることで知られている。その冷酷な仕組みのなかで、角田裕毅に与えられた猶予は残りわずかだ。レッドブルのチーム代表ローラン・メキースは「我々は角田裕毅が力を発揮できるよう必要なものを与えている」と語るが、その言葉の裏には「今すぐにでも結果を示さなければ未来はない」という厳しい現実が潜んでいる。
2025年シーズンは角田裕毅にとって試練の連続だった。攻撃的な走りはときに光るが、一方で不安定さとミスを招き、イモラでのクラッシュは彼の自信を深く揺るがした。マシンRB21の競争力不足も指摘されるが、チームやメディアの視線は容赦なく彼自身に向けられている。F1では、ドライバーとマシンのシナジーがなければ勝負にならない。角田裕毅はその調和を見いだせずにいるのか、それともマシンに裏切られているのか──その議論は尽きない。
一方で、ライバルたちは存在感を強めている。アイザック・ハジャーはシーズン序盤から鮮烈な速さを見せ、「今年の発見」と称されるほどの成長を遂げた。リアム・ローソンもここ5戦で3度の入賞を果たし、計20ポイントを積み上げ、完全復活を印象づけた。両者の勢いは角田裕毅にとって脅威そのものであり、シート争いを一層熾烈なものにしている。

さらに、レーシングブルズは次世代ドライバーの登用に目を向けており、アービッド・リンドブラッドといった新鋭の名前も挙がっている。この流れのなかで角田裕毅の選択肢は狭まりつつある。残された希望は、ホンダとの強固な結び付きだ。2026年にアストンマーティンと提携するホンダが彼に道を開く可能性はあるが、2025年をシートなしで過ごすリスクを伴う。また、新規参入のキャデラックも候補には挙がるが、経験豊富なセルジオ・ペレスやバルテリ・ボッタスが優先されると見られている。
角田裕毅は今、レッドブル、ライバル、そして自分自身からの重圧を同時に背負っている。残されたレースは未来を賭けた最終試験であり、必要なのは凡庸な走りではなく、人々の記憶に刻まれるパフォーマンスだ。彼は証明しなければならない──自分はこの舞台にふさわしい存在だと。
「結果を出せなければ終わり」。その現実を最もよく知っているのは、他ならぬ角田裕毅自身だ。夢を救えるのは彼の走りだけであり、残りの一周一周がオーディションとなる。世界はいま、その結末を固唾を飲んで見守っている。
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