マクラーレン失格:無線が示すプランク摩耗管理の試み / F1ラスベガスGP

ランド・ノリスとオスカー・ピアストリは、マシン下面のプランクの過度な摩耗によって失格となった。レース中にこれを避ける最善策は、最もダメージが発生しやすい区間でペースを落とすことだった。彼らはこれを試みたが、2台とも成功には至らなかった。
ライバルに悟られないよう“直接的な言及”を避けた無線
ノリスとピアストリのレースエンジニアは、プランクに関する懸念を直接伝えることはなかった。これはライバルに問題を悟らせないためだったと思われる。
この点において、マクラーレンは一定の成功を収めた。レース終盤にノリスが急激にペースを落とし、初めて問題が露わになった際でさえ、レッドブルはマックス・フェルスタッペンに「何か問題があるようだ」としか伝えていなかった。
しかし、FIAの失格説明文書と両ドライバーが受け取った無線を照合すると、マクラーレンが3つの特定コーナーでプランクへのダメージを抑えようとしていたことが見えてくる。
その3か所とは 5コーナー、11コーナー、17コーナー である。ノリスはこれら3つについて最も多くの指示を受け、ピアストリも特に5コーナーと11コーナーについて頻繁にペース管理を求められていた。17コーナーは少なかったが、ピアストリはレース中盤に「17コーナーでもリフトし続けるべき?」と確認しており、継続的に実施していたことがうかがえる。
3つのコーナーが“危険地帯”だった理由
ピアストリは5コーナーについて「バンプがあるためリフト&コーストが必要」と念押しされていた。マクラーレンのマシンはレース中、この区間で激しくスパークしていた。
11コーナーと17コーナーはコース上で最も高速の左コーナーであり、左コーナーでは右側のプランクがより摩耗しやすい。実際、マクラーレンのプランクの違反箇所は右側に集中していた。
ノリスのプランクは右側前方で0.12mm、右側後方で0.07mm不足していた。ピアストリは同じ箇所で0.26mmと0.1mm不足しており、さらに左前部でも0.04mmの不足が確認されていた。
タイヤ管理、燃料節約、オーバーヒート対策などの理由でチームがペース調整を指示するのは珍しくない。しかし、マクラーレンが特定の3コーナーに集中して警告したという事実は、プランク問題との関連性を明確に示している。
FP2赤旗や雨が“兆候を隠した”とマクラーレンは説明
マクラーレンは、FP2が赤旗で中断され、金曜走行が雨に見舞われたため、摩耗の兆候を事前に把握できなかったと説明した。雨天ではコーナリングスピードが低下するため、プランク摩耗も小さくなる。また、初日の走行後にピレリがタイヤ内圧を変更したことで状況がさらに複雑化した。
もちろん、こうした要因はいずれも、他9チームが避けられた問題をマクラーレンが犯してしまったことを免罪するものではない。
マクラーレンは「レース中に問題を発見した」と述べているが、実際にはレース前のインスタレーションラップの時点で初期兆候を掴んでいた可能性が高い。中盤に発見してドライバーに初めて知らせた形跡はない。
レース終盤のノリスの失速は燃料ではなく“プランク保護”だった
ノリスがレース終盤に大幅にペースを落としたことで、燃料不足説が浮上した。実際に燃料に関する無線も1回あったが、失格理由が判明した今となっては、それはチームの“偽装”だったことが分かる。
ノリスが「やるべきことを全部教えて」と尋ねた後、急速にペースを落とし始めたことは決定的だ。ノリスは フェルスタッペン追撃が不可能であると判断し、後方との大差を利用してプランク摩耗抑制を優先した と見られる。しかしそれでも失格を避けるには至らなかった。

ノリスとピアストリが受け取った無線
Lap 5/50 NOR: 1’36.965 PIA: 1’37.624
ジョセフ「そして、6コーナー、11コーナーで少し多めにリフトしてほしい」
Lap 6/50 NOR: 1’36.777 PIA: 1’37.098
ジョセフ「そして、3コーナーでペースのチャンスがある」
スタラード「後ろはルクレール。可能なら10コーナーで早めに深いリフトを提案する」
スタラード「何か変化があれば教えて」
ピアストリ「いや、今は問題なく感じるよ」
Lap 7/50 NOR: 1’36.777 PIA: 1’37.098
スタラード「5コーナー良くなったよ、オスカー。今のラップの5コーナーは良かった。ブレーキを使いたいことを覚えておいて」
Lap 8/50 NOR: 1’36.966 PIA: 1’36.741
ジョセフ「ランド、ストラット7にして。ストラット7。理想としては17コーナー、5コーナー、12コーナーで少しリフトを入れてほしい」
Lap 11/50 NOR: 1’36.345 PIA: 1’36.705
ノリス「うーん、フロントが少し悪くなってきてる。それが心配なところだ」
Lap 12/50 NOR: 1’36.264 PIA: 1’38.447
ジョセフ「ランド、今はフェルスタッペンとほぼ同じ状況だと思う。ラッセルのほうがわずかに良いけど、ほんの少しだ」
ノリス「フロントかリア?」
ジョセフ「フロントだ」
Lap 13/50 NOR: 1’36.298 PIA: 1’37.290
ジョセフ「ランド、今は君が最速だ。できれば17、5、12コーナーで少し大きめのリフトを」
Lap 14/50 NOR: 1’35.962 PIA: 1’37.579
ジョセフ「ランド、今は“プランB+5”を考えてる。“プランB+5”だ」
ノリス「了解」
ジョセフ「11コーナーでのリフト量は良い。もう少し早めにリフトを入れて」
Lap 18/50 NOR: 1’35.591 PIA: 1’36.282
ジョセフ「これはチャンスだ。ペースを上げよう」
スタラード「オレンジ・トルク1を提案する。オレンジ・トルク1。オスカー、可能なら5コーナーでリフト&コースト、5でリフト&コースト。それから11のディフ」
ノリス「うん、やってるよ。クリーンエアは段違いにいいから……」
ジョセフ「了解、そのままステイアウトで」
ノリス「了解」
Lap 19/50 NOR: 1’35.769 PIA: 1’36.426
スタラード「ルクレールと同じ、サインツは36.7」
スタラード「オスカー、リフト&コーストで、5コーナーのブレーキングにチャンスがある」
Lap 20/50 NOR: 1’35.680 PIA: 1’36.707
ジョセフ「ランド、17、5、12でまたリフトが必要だ」
Lap 21/50 NOR: 1’36.320 PIA: 1’40.682
ノリス「うん、ペースは落ちるよ」
ノリス「フロントがもう少し悪くなってきてる」
ジョセフ「了解」
Lap 22/50 NOR: 1’41.141 PIA: 1’51.292
ノリス「了解」
Lap 23/50 NOR: 1’51.904 PIA: 1’35.921
ノリス「2つだけ教えてほしい。今は自分のレースをしてるの? それとも前に行くレースなの?」
ジョセフ「ランド、みんな“プランB”にしていると思う。前に行きたいけど、ラッセルを倒す方法は終盤だ。終盤でタイヤを良い状態にしておきたい」
Lap 24/50 NOR: 1’35.860 PIA: 1’36.118
ジョセフ「だから、5、11、17でのリフトがそのタイヤを守るのに役立つ」
Lap 26/50 NOR: 1’35.603 PIA: 1’35.226
スタラード「オスカー、10のリフトはフェードアウトしていい。ただし11では続けて」
Lap 27/50 NOR: 1’35.624 PIA: 1’35.521
ジョセフ「ランド、11ではトグルを使い続けて、リフトも入れて。オスカーは3コーナーで早めのリフト、フロント保護だ」
ジョセフ「ランド、今のラップの17、5、11は良い。続けてほしい」
Lap 28/50 NOR: 1’35.375 PIA: 1’35.074
ノリス「うん、でもそれのせいで遅いんだよ」
スタラード「5コーナーで少しリフト&コーストを、バンプがあるから」
ジョセフ「ランド、最大のチャンスは依然として3コーナーだ。出口に集中しよう。タイヤには良くないけど……」
ピアストリ「17でもリフト続ける? どうする?」
スタラード「17では必要。11も必要。10は任意。でも5ではリフト&コースト」
Lap 30/50 NOR: 1’35.074 PIA: 1’34.895
スタラード「1コーナー、早めのスロットルで。3コーナーはアンダーステアを避けるために早めにリフト」
Lap 31/50 NOR: 1’34.693 PIA: 1’35.138
スタラード「オスカー、方向転換のところで11の早めリフトを」
スタラード「1コーナーはとても良かった」
Lap 32/50 NOR: 1’34.442 PIA: 1’35.433
ノリス「ジョージはグレイニングした? 何か言ってた?」
ジョセフ「苦しんでる。彼らはもっとセーブを求められてる。DRS圏内に入ろう。メルセデス2台ともだ」
Lap 33/50 NOR: 1’34.845 PIA: 1’34.873
ノリス「DRS使うべき? それとも抜くべき?」
ジョセフ「抜け。抜くんだ。マックスを獲りに行く」
Lap 34/50 NOR: 1’34.834 PIA: 1’34.684
ジョセフ「早めのオーバーテイクが使える」
ジョセフ「素晴らしい。じゃあマックスを獲りに行こう。ただし17、5、11は続けて」
Lap 35/50 NOR: 1’34.437 PIA: 1’34.848
ジョセフ「ジョージはDRSを持っている」
スタラード「可能なら5コーナーでさらにリフト&コースト」
Lap 36/50 NOR: 1’34.980 PIA: 1’34.637
ノリス「マックスを獲れって何? 遅いんだけど」
ジョセフ「マックスには全マネージメントを減らすよう指示されてる。そして僕らは遅くない。直前のラップは彼より速かった」
Lap 37/50 NOR: 1’34.216 PIA: 1’34.743
ジョセフ「ランド、14での“レイト・オーバーテイク・プレス”を毎周やってほしい」
Lap 38/50 NOR: 1’34.209 PIA: 1’35.581
ジョセフ「ランド、チャンスがある。1コーナーの最小速度を上げて、3コーナーのラインを開ければ、3コーナー出口で助けになる。あと14のオーバーテイクを毎周」
Lap 40/50 NOR: 1’34.399 PIA: 1’34.570
ジョセフ「14でのレイトブレーキに気をつけて」
Lap 41/50 NOR: 1’33.965 PIA: 1’34.643
ジョセフ「そしてオーバーテイクのリマインド。シルバーD4を提案。フロントはこのタイヤでより堅牢に見える。オーバーテイクを忘れずに」
Lap 42/50 NOR: 1’34.081 PIA: 1’34.641
ジョセフ「そしてシルバーD4だ。フロントはこのタイヤでより堅牢に見える。それからオーバーテイク」
ノリス「分かった。やるべきこと全部やろう。だから全部教えてくれ」
ジョセフ「OK。その場合はもっとやって」
Lap 43/50 NOR: 1’34.271 PIA: 1’34.499
ノリス「10コーナーはどうする? もっとリフトすると悪く感じるときがある」
ジョセフ「10は大きな違いはない。11と12の方が重要。次にできるのは17を早めにすること」
Lap 46/50 NOR: 1’35.534 PIA: 1’34.588
ジョセフ「そしてオーバーテイク。それから10でのリフトを試してみてもいい」
ジョセフ「あと4周だ」
Lap 47/50 NOR: 1’36.128 PIA: 1’34.086
ノリス「全部うまくいってる? さらに必要? どうする?」
ジョセフ「ランド、14でオーバーテイクは続けて。17では早めに、11ではもっと大きめにリフトしていい。残り3周で2秒失っても構わない」
Lap 48/50 NOR: 1’37.702 PIA: 1’34.165
ジョセフ「オーバーテイク、そしてそのリフトを」
Lap 49/50 NOR: 1’37.734 PIA: 1’34.466
ジョセフ「ランド、今は少し戻していい。燃料は問題なさそうだ」
スタラード「ラスト1周。アントネッリに近づけないなら、5と11でリフトを戻して」
カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / F1ラスベガスGP
