佐藤琢磨、角田裕毅にエール「僕のF1の1年目は酷かったですから(笑)」
佐藤琢磨が、今年アルファタウリ・ホンダF1でデビューを果たした角田裕毅に先輩ホンダドライバーとしてエールを送った。

日本人がF1にレギュラードライバーとして出場するのは、2014年シーズンまで参戦していた小林可夢偉以来7年ぶり。ホンダのドライバー育成プログラム出身者としては、2002年から2008年まで参戦していた佐藤琢磨以来13年ぶりとなる待望の日本人F1ドライバーとなる。

デビュー戦では9位入賞とポテンシャルを示した角田裕毅だが、その後はノーポイントのレースが続いている。そして、無線での暴言やインタビューでの発言がチーム批判と捉えられるなど、コース内外で悪い流れが続いている。

インディ500を目前に控えてオンラインで記者会見を行った佐藤琢磨が、F1で苦戦する角田裕毅、そして、FIA-F3を戦う岩佐歩夢について語った。

「やっぱり常に気持ちを強く持ち続けるってのはすごく大変なんです。2~3戦であればすぐに流れを変えられる、あるいはこうすればというのありますけど、それがずっと長く続いてしまうとなかなかそこから抜け出すのは心理的には難しくなる」と佐藤琢磨は語る。

「とはいえ、僕たちはもちろん体もバイオリズムが多少ありますけど、やっぱりマシンスポーツであり、チームスポーツなので、遅い、速い、強い、上手くいかない、といったことにはすべて科学的根拠と理由があるんです。だから、そこはチーム一丸となって見つけて、改善していくことに全力を注げば、必ず結果は出ると自分でも信じてます」

「もう一つ流れを変える大きなきっかけになるのは環境の変化です。僕はレースで言えば、開催地が変わる、今回で言えばインディ500というすごく大きな、シーズンの中では転換期になります」

「角田選手にしても、岩佐選手にしても、初めてのシーズンで初めての体験で本当に大変だと思います。世界に慣れていくだけでも大変ですし、もちろん角田選手はセンセーショナルなバーレーン、特にQ1で2番手タイムというのはすごい鮮烈だったと思います。F1の世界でも、ファンの誰もが本当にトップレベルで走れる選手だということをそこで確認できたと思います。とにかくがんばってもらいたいですね」

「いろいろなプレッシャーを感じているかもしれないのですが、まだまだ1年目ですし、僕のF1での1年目は酷かったですから(笑)。鈴鹿に戻るまで時間がかかっったし、自分としては鈴鹿でようやくいいレースができたという感じだった」

「まだまだ全然これからと思ってますし、チームもアルファタウリですけど、辿っていけばミナルディですし、自分もトロロッソをテストしたときは、半分以上ミナルディのメカニックが残っていました。たぶん、今でも同じような雰囲気だと思いますし、ドライバーを中心に一緒にやっていくチームです」

「もちろん、レッドブルの系列で厳しい側面もあるとは思いますけどね。1年目としては最高の環境でできていると思うので、自分自身を信じて、スタッフを信じて、がんばってもらいたいと思います」

鈴鹿サーキットレーシングスクールのプリンシパルを務める佐藤琢磨は、岩佐歩夢の育成により深く携わっている。岩佐歩夢について語っていくなかで、最近の角田裕毅の発言で話題となったチームとドライバーの関係について興味深い話が聞けた。

「歩夢に関しては、細かくLINEしながらいろいろ話したりしてるんですけど、やっぱりジュニアフォーミュラ独特の難しさがありますね」と佐藤琢磨は語る。

「チームも、ドライバーに対する対応が、ドライバー中心にはなっていないのかなという感じがします。特にハイテックはそこそこ実績もありますし、トップチームの一つなので、余計にそういうチームを自分の方向に変えていくというか、なにかチームと作り上げていきたいことがあれば、協力してやっていく必要があるし、それを納得させるためには、走りも一つなんですけど、走りだけではなくて、説得させるための要素が必要になる」

「先ほども言った科学的根拠です。『これがあるからこうなった。だから、自分はこうするべきだと思っていて、チームにもこういうふうにしてもらいたい』という組み立てなんですけど、それをちょっと話しました」

「特にジュニアフォーミュラだと、ドライバーのウェイトがクルマのパフォーマンスに対してずっと大きくなるので、そこは歩夢が説得してやるしかない。『いくつかどうしてもやってみたいことがあるんだけど、チームとしてはそこはやる必要ない』と言われてしまったと言うので『それだったら自分がどう思うか、クルマを科学的に考えてこういう挙動だから、こういうふうになるから、テストだからこそそこをやりたい』と言ってみなという話をしました」

「そしたら、翌日のテストでトップタイムを取ったんで面白いなと思いましたね。本当に彼はすごく知的だし、静かな中にすごい熱いものを持ってるんですけど、冷静にいろいろなことを判断できる本当に珍しいドライバーだと思います」

「だから、もちろん角田選手もすごい若いんですけど、歩夢選手もSRSで1年間見てきて、絶対飛び級させたいと言って一気にフランスに持っていきました。その経験が活かされて、本当に知らない環境の中で自分をうまく作っていくということができるような気がしてます」

そんな若手の活躍に佐藤琢磨も刺激を受けているようだ。

「やはり若い勢いというか、特に先ほどの話、角田選手の予選のパフォーマンスだったり、F2時代に見せたうまさと鋭さみたいなのは、僕らドライバーから見てもやっぱりすごいと思います。あと若さもあるなと思うので、そういう若さと勢いのあるとこですね」と佐藤琢磨は語った。

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カテゴリー: F1 / 角田裕毅 / 佐藤琢磨