名門ウィリアムズの名前がF1から消滅する可能性
ウィリアムズF1は、従業員の将来を守るために家族の名前“ウィリアムズ”を冠したチームの支配権を放棄する覚悟はできている副チーム代表のクレア・ウィリアムズは語る。

40年以上前にフランク・ウィリアムズが設立したウィリアムズF1は、フェラーリとマクラーレンに次いでF1で3番目に成功したチームであり、長年にわたってウィリアムズ家によって運営されてきた。

これまで114勝を挙げてきたウィリアムズF1だが、過去2年間は最下位でのレースが続いていた。それに呼応するようにチームの財政状態は悪化した。

今年に入ってHSBCからの借金を2つのローンへの借り換えを実施。チームの土地と建物、ファクトリーと機械、ウィリアムズの42年の歴史の“文化遺産”である100台を超えるF1マシンが抵当に入れられた。ローンの1つはニコラス・ラティフィの父親マイケル・マティフィが所有する会社が請け負っている。

また、2019年末には収益性の高いWilliams Advanced Engineeringの過半数株式を売却。それによって2020年のF1世界選手権に参戦するための資金はなんとか確保された。

クレア・ウィリアムズは「今年の残りの期間を通じて、サーキットに戻ることができるようになり、いつでもレースを続けることができます」と語っている。

しかし、ウィリアムズは5月29日(金)に“2021年に始まるF1の新たな時代をうまく利用するため適切な位置付け”を確保するための“新しい戦略的方向性”を追求するため、象徴的なF1チームの少数株主または過半数株式の売却を検討していることを発表。これはウィリアムズという名前はF1界から消える可能性を意味する。

しかし、クレア・ウィリアムズは、チームを売却する可能性は決して自暴自棄な決断ではないと語る。2019年の通期決算でウィリアムズは1300万ポンド(約17億2000万円)の損失を示した。

「自暴自棄になっての行動だとは思っていませんし、適切で賢明な行動だと思っています。私たちウイリアムズ家は、常にF1チームを最優先にしてきました」とクレア・ウィリアムズはオンライン記者会見で語った。

「フランクは常に、チーム、ビジネス、そして社員を第一に考えていましたし、それが現在私たちが行っていることです」

「このような情勢で対内投資を求めることは、私たちが常に掲げてきた哲学、つまり、チームの将来を保護し、私たちのために働く人々を保護するという理念に完全に一致していると強く感じています」

戦略的レビューでは、新しい投資の確保から会社全体の売却の可能性まで、すべてのオプションが検討される。クリア・ウィリアムズは、従業員を保護するためであれば、何も除外することはないとしながらも、すぐに売却が実現しなかった場合にウィリアムズF1チームが消滅する危険に晒されているのではないかとの質問には明言を避けた。

「私は必要な投資が見つかると確信しています」と語るクレア・ウィリアムズは、2020年のシーズンを停滞させ、収益に大きな影響を与える新型コロナウイルスのパンデミックなどの主要な要因によってレビューが進められたわけではないと語り、今後3~4か月で現在の状況を脱したいと述べた。

クレア・ウィリアムズによると、チーム創設者である78歳のフランク・ウィリアムズは、日常業務から離れているが“スピード感”があり、“協力的”だと語る。

「フランクは常にできるだけ競争力を持ちたいと考えています。これを行う主な理由の1つは、2021年に予定されている新しいレギュレーションを活用してこのチームを編成するために、チームに対内投資を誘致することです。成功するために最適な立場にあり、最終的にはそれが私たちにとって重要なすべてです」

「皆さんがご存じのように、率直に言って、フランクは、チームの日々の業務における運用上の関与はありませんが、取締役会が行うすべての決定に常に気を配り、それに対応しています。彼は彼のチームの将来の成功を確実にすることを望んでおり、今が対内投資を求める適切な時期であることを理解し、同意しています」

「私たちの野心のためには今が投資機会を評価するための絶好な時期です。このチームを私たち全員が望んでいる場所、過去にいた場所に戻さなければならないという私たちの野心にはお金がかかります。そして、私たちが達成したいことを達成し、F1に抱く野望を支援するためには、対内投資が必要です」

F1は、2021年にトップチームと他チームとのグギャップを減らすために1億4500万ドルの予算上限が導入され、2020年にはより見応えのあるレースを目指して、F1マシンは完全に新しいものに生まれ変わる。

クレア・ウィリアムズは、新型コロナウイルスのパンデミックが世界に経済的に与えた影響を考えると投資を見つけるのは困難な時期であるものの、それらの変化によってF1はブランドにとって魅力的なものになると信じていると語る。

「世界はまったく異なるものになるでしょう。ですが、私たちのスポーツでチームをスポンサードしたいという意欲はあると確信しています」とクレア・ウィリアムズは語る。

「様々なレギュレーションがあり、主に支出が原因で、このスポーツは私たちに親切ではありませんでした。今後、新たなレギュレーションにより、それがある程度変化するように設定されています。大きな変化を遂げているスポーツであり、特に技術規則を中心に良い方向に変化しています。それは、F1を今よりもエキサイティングなものにしてくれるはずです」とクレア・ウィリアムズは語る。

「私たちのスポーツは非常にエキサイティングなものだと思っています。世界中の大きなブランドを引き付け、彼らのブランドを紹介し、ウィリアムズが現在行っている旅を共有するものになるはずです」

「このチームには、将来と再びこのスポーツで成功する能力があると本当に自信を持っています。なぜなら、競争できる環境が変化しているからです。私たちが望む全てのことを達成し、私たちが実施してきた全ての計画を達成しさらに前進させるために、投資を調達するという決定を下したのは事実です。ウイリアムズの歴史の中で、こうした判断をするのに絶対に正しいタイミングです」

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カテゴリー: F1 / ウィリアムズ・レーシング