セバスチャン・ベッテル
2度目のF1ワールドチャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルがインタビューに答えた。インタビュアーはデビッド・クルサード。

2度目の世界チャンピオンタイトル獲得から何時間も経っていないから、まだ優勝を実感できていないのでは?
そんな時間はないよ! まだ1日も経っていないからね。正直に言うと、あまり寝てないんだ。フィニッシュラインを越えた時は本当にほっとしたけれど、実感が湧くまでには時間がかかるだろうね。初優勝の時と同じように、まだ混乱しているみたいだ。理解するまでにはしばらくかかると思う。言葉では、どう説明したら良いか分からないけれど。

昨夜は素晴らしい夜だった…チームとカラオケに行って楽しんだので、まだ声がちょっと枯れているんだ。タイトル獲得は祝ったけれども、大々的にはやっていない。まだ、これから韓国に行かなければならないからね。

初優勝の時とは違う?
初タイトルは永遠にスペシャルなものだね。初めてのグランプリ優勝と、とても良く似ている。 でも、去年と今年は全く違う。昨年度は、最後に1度チャンピオンシップをリードしただけだったけれど、今年はずっとリードしていたからね。最高のシーズンだよ。しかも、まだシーズンは終わっていないんだ。まだ4戦残っているので、勝利を目指して戦い、最高の結果を残したいと思う。それが終わったら、来年度の作業に集中するよ。

今、チームは本当に高いパフォーマンスレベルをキープしている。昨年と同じメンバーだけれども、違うチームのようだ。レベルアップしているんだ。誰もが去年よりも成熟していて、状況が危うくなっても、揺らぐことなく前進している。

地に足がついた君の様子にはいつも感心するのだけれども、それは努力しているの?それとも、そういう人なの?
両方だと思う。今の自分が自分だ。人は変わるし、成長するし、生活も変わる。昔の自分を簡単に思い出せないこともある。でも、周りにいる人の影響もあるのだと思う。彼らがいるから、僕は地に足をつけていられるんだ。

昨日は除いて、今年の個人的なハイライトシーンは?
いっぱいあるよ。優勝はどれも特別だけれども、モナコの公道で優勝したのは ― あなたも何度か優勝しているけれど ― 本当に、本当にスペシャルだった。スパでの優勝もだ。歴史あるサーキットで優勝するのは、色んな意味で特別だ。感動的な場面は沢山あったよ。表彰台に立てなかったレースはドイツだけ!でも、来年また挑戦するよ。

ドイツは4位でのフィニッシュだったけれども、考えてみると、うまくいかなかった他のレースでも2位、3位、4位でフィニッシュしている。それが力になったのだと思う。それがあったから、本当に力強いチャンピオンシップを戦うことができたんだ。もちろん、優勝したレースもチャンピオンシップ優勝の助けになったけれども、表彰台を目指して全力で得点をかき集めようとした他のレースのお陰かもしれない。そういったレースも重要なんだ。今年はまだリタイヤしたレースはないし、ルノーが供給してくれたエンジンの1基では、マークも僕もトラブルを一度も経験していないないんだ。驚異的な記録だよ。

昨年チャンピオンタイトルを獲得した時には、チェッカーフラッグを受けた後も、他のドライバーたちがフィニッシュするまでそれが確定しなかったけれども、今回のレースでは簡単に計算することができた。グランプリの最中もそのことを考えていた?
今年のシンガポールは、アブダビの時の気持ちと似ていたね。大丈夫だとは思っていたけれども、他のドライバーのフィニッシュポジション次第だった。シンガポールでフィニッシュラインを越えた時は、もちろん優勝を願っていたけれども、無線で「1ポイント足りない!」という声が聞こえてきた。

でも鈴鹿は違う。チャンピオンシップのことはあまり考えていなかったんだ。レースに集中していた。もちろん、どういう意味があるレースか分かっていたけれども、他のことで忙しかった。フィニッシュラインを越えた時はある意味、驚いたよ。難しいレースだし、レースの最中はアドレナリン全開だからね。1時間半もレースに集中してチェッカーフラッグを受けると本当にほっとする。その後、すぐにお祝いモードに切り替えるなんて、簡単にできることじゃない。だから、たくさん時間が必要だと思うんだ。

レース終了後は本当に素敵だったね。君がインタビューを受けた後に8人の歴代の世界チャンピオンの映像が流れていた。最後は目が潤んでいたように見えたけど?
あんな人たちと同じ画面にいる自分を見るのは…すごいことだよ。感動的だった。時々、ポーズボタンを押さないと、何が起きているのか理解できないことがある。その瞬間を生きているからね。でも、それは良いことだと思う。じゃなきゃ、レースなんてできない。でも、その後に歴代の世界チャンピオンの映像が流れた。僕はF1の歴史は好きだから、良く知っているビッグネームばかりだった。

妙な気分だった。自分がその一部だということを理解できないんだ。世界チャンピオンシップ優勝は、僕の人生の究極の目標だった。それを達成することができた…。F1の歴史とか統計みたいなものにも何かしらの意味があるのだろうけれども、一番重要なのは、鏡の中の自分を見た時にできると思えるかどうかだろうね。それがとてもスペシャルなことだと思う。

鏡の自分はどう映る?
哲学的になりすぎるのは嫌だよ!

なるべきだよ…
ポイントは、鏡の中に見える自分に満足すべきだということ。良い選択をすることもあるし、悪い選択をすることもある。正しい決断じゃないこともあるし、フェアじゃないことをすることもあるかも知れない。そういう時は、自分と向き合うのが難しい。自分が素晴らしい仕事ができたシーズンが終わって、鏡を見つめた時に、正しい、自分たちなりのやり方で頂点に立てたと思えるのは、何にも代え難い気分なんだ。

画像

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / セバスチャン・ベッテル / レッドブル・レーシング