マックス・フェルスタッペン レッドブルF1残留の条件はホーナー更迭?
マックス・フェルスタッペンのレッドブルF1残留は、チーム代表クリスチャン・ホーナーの更迭または権限縮小を条件としている――。ドイツのAuto Motor und Sportによれば、契約解除条項が発動されない可能性がある中でも、フェルスタッペン陣営はチーム内の体制改革を強く要求しており、その焦点は絶大な権限を握るホーナーに向けられているという。2026年のメルセデス移籍の噂が根強く残るなか、フェルスタッペンの去就はチームの将来構想と密接に結びついている。

ランキング3位以下で発動する“窓口”と噂される契約解除条項
マックス・フェルスタッペンはF1で最も高額かつ最も優れたドライバーである。ジョージ・ラッセルでさえ最近、「彼が利用可能で、まだ空いているシートがあれば、どのチームでもマックスが最優先リストのトップに来るだろう」と語った。だが本来、フェルスタッペンは利用可能ではない。彼はまだ3年間レッドブルと契約を結んでいる。

ただし、チームを離れるための小さな窓口は存在する。そのためには、フェルスタッペンがドライバーズランキングで7月末までに3位以下に沈まなければならない。現時点ではそれに該当していない。しかし、ラッセルはわずか9ポイント差で迫っており、マクラーレン勢は手の届かない位置にいる。この状況がパドック内での憶測をかき立てている。

移籍をめぐる沈黙と揺さぶり
数週間前から、フェルスタッペンがもしかしたらメルセデスに移籍するのではないかという議論がなされている。本人は「この話はもうやめよう。去年僕が言ったことを繰り返そうか?同じ答えだよ。僕は運転に集中している。そのうち来年について考える時が来るさ」とうんざりした様子を見せている。

彼からレッドブルに対する明確なコミットメントを引き出すことはできず、また、メルセデスのチーム代表トト・ヴォルフと話し合いをしているかどうかの確認も取れていない。ヴォルフもまた、「すべては計画通りに進んでいる。契約交渉は公開の市民集会のような場では行われない」と語り、それ以上の言及を避けている。

ラッセルを排除する説得力は不足
トト・ヴォルフはフェルスタッペンとの接触について明言を避けている。だが、当然そのような接触は存在している。あらゆる選択肢を検討しないチーム代表などいない。ただし、現時点でジョージ・ラッセルを排除するだけの説得力に欠けることも事実だ。

ラッセルは現在、キャリア最高のパフォーマンスを見せている。フェルスタッペンとラッセルが同じチームに並べば、マクラーレンやフェラーリに対抗する強力な布陣となる。だが、アレックス・アルボンがかつて表現したように、それは「花火」が起きる危険もはらんでいる。

仮にラッセルがシートを失えば、メルセデスがフェルスタッペンを起用することで、アンドレア・キミ・アントネッリのキャリアを危険にさらす可能性がある。「マックスと比べると誰もが見劣りする。アントネッリにとって2年目でフェルスタッペンと組むのは早すぎる」とレッドブルのモータースポーツ顧問ヘルムート・マルコは語っている。

“ホーナーの処遇”が鍵となる第2の脱出路
基本的に、フェルスタッペンは自身をF1に導き、これまで11年にわたり所属してきたこのチームに留まりたいと考えている。しかし、それには条件がある。チームが戦略的に再編成されること。その中核にあるのが、クリスチャン・ホーナーの更迭、あるいは権限の大幅な縮小だ。

現在、ホーナーはレースチーム、技術部門、レッドブル・パワートレインズ、マーケティングのすべてを掌握している。マクラーレンのように、これらの役割を複数の責任者に分担させる体制が求められている。

株主間の圧力とイメージ悪化の懸念
これまでホーナーは、筆頭株主であるタイのヨービディヤ家から強い支持を受けてきた。だが内部の声によると、同家も今や再編成に完全に反対する立場ではなくなっているという。ザルツブルクを拠点とするもう一方の株主グループはブランドイメージの悪化を懸念している。

競争力の低下がチーム全体に不安をもたらしており、彼らはフェルスタッペンがいなければチームの価値が半減することを理解している。また、フェルスタッペンが2026年の新レギュレーション下で、レッドブル製エンジンよりメルセデス製PUに信頼を置いている可能性も無視できない。

ホーナー交代は簡単ではないが…
ただし、ホーナーを交代させるのは容易ではない。51歳のホーナーは単なる「名ばかりの代表」ではなく、毎日ファクトリーのオフィスに足を運ぶ実務家であり、21年の経験を持ち、政治的なネットワークにも優れている。

そのため、現実的な案としては、チーム運営の「ワンマン体制」を終わらせ、各部門を別のマネージャーに任せる方式が検討されている。すでに複数の名前が挙がっており、レーシングブルズのピーター・バイエル、元マクラーレン代表で現アウディF1責任者のアンドレアス・ザイドルなど、レッドブルと良好な関係を持つ人物が候補に挙がっている。

マックス・フェルスタッペン F1

夏休み前に去就決定へ
フェルスタッペンが2026年にどこで走るか、その決断は夏休みまでに下される見込みだ。トト・ヴォルフも、それ以上ドライバーを待たせたくないという考えを示しており、「我々はサディストではない。必要以上にドライバーを待たせることはしない」とオーストリアGP後に語っている。

その一方で、現行ドライバー体制に対する信頼も強調している。「我々は今の体制にとても満足している。ジョージは勝てるドライバーであり、メルセデスのジュニアでもある。我々はここ3年間、彼にタイトルを狙えるマシンを与えられなかった。しかし、マシンが良ければ彼はその実力を証明している。キミもまた着実に成長しており、将来のチャンピオンとして必要な資質をすべて備えている」

水面下の駆け引きとラッセルの忠誠
ホーナーは、メルセデスがすでにドライバーと合意しているにもかかわらず、それを発表せずにレッドブルを揺さぶろうとしているのではないかと見ている。「それに、ジョージは市場で十分に動いていない。自分のシートを心配しているのなら、もっと選択肢を探っているはずだ」と語る。それを裏付けるように、ラッセルもこう明かしている。「他のチームからの打診はあったけど、僕は全てのチームにメルセデスが第一希望だと伝えた」

レッドブル内戦の果てに待つ未来
レッドブルはこれまで「制御された混沌」の中でこそ輝いてきたが、現在の状況はもはや「制御なき崩壊」に近い。ホーナーとフェルスタッペンの蜜月関係は完全に冷戦状態へと突入し、経営陣も疲弊しつつある。

もしフェルスタッペン側の要求が通れば、ホーナーは華やかなセレモニーではなく、ひっそりとしたプレスリリースとともにチームを去ることになるだろう。

その場合、レッドブルは2026年の大規模レギュレーション変更を前に、内部からの再構築を迫られることになる。

すべては、マックス・フェルスタッペンのひとつの問いへの答えにかかっている。「残るか、去るか?」

それは、クリスチャン・ホーナーの未来であり、レッドブルの未来であり、そして次なるF1ワールドチャンピオンの未来でもあるのだ。

このエントリーをはてなブックマークに追加

カテゴリー: F1 / マックス・フェルスタッペン / レッドブル・レーシング