WEC:トヨタ 2021年 第4戦 ル・マン24時間レース プレビュー
トヨタは、ル・マン覇者としての防衛と、ハイパーカーでの歴史を作るべく、8月21日(土)から22日(日)にかけて行われる第89回ル・マン24時間レースに挑む。

トヨタはTS050 HYBRIDと共に、2018年のル・マン初勝利以来、3連覇しており、今年は新たなハイパーカー GR010 HYBRIDで初めてサルト・サーキットに挑み、チームの連勝記録を伸ばすと共に、ハイパーカーでのル・マン初勝利を目指す。

GR010 HYBRID 7号車をドライブする、世界チャンピオンのマイク・コンウェイ、小林可夢偉、ホセ・マリア・ロペスにとって、ここ数年のル・マンは厳しい戦いだった。特に2019年と2020年は、車両トラブルに見舞われるまではレースを支配する強さを見せており、今年こそ、の思いとともに前戦モンツァ6時間レース勝利の勢いに乗り、シーズン最大のイベントに挑む。

2018年、トヨタに初のル・マン勝利をもたらしたセバスチャン・ブエミと中嶋一貴は翌年のル・マンも制し、そして昨年はブレンドン・ハートレーとのトリオで3連覇という輝かしい記録を達成した。この8号車の3名は、今季開幕2戦目のスパ6時間とポルティマオ8時間レースを制し、ドライバーズ選手権首位でル・マンを迎える。

ル・マン24時間レースは、FIA世界耐久選手権(WEC)1戦の一つだが、通常の倍のポイントが与えられるため、タイトル争いにおいても重要なレース。トヨタは、今季全6戦中の3戦を終えた時点で、チームタイトル争いで2位のアルピーヌに30点差の首位に立っており、ドライバーズタイトル争いでは、8号車のドライバーが、チームメイトである7号車のドライバーに対し6点差でリードしている。

トヨタにとって、今年のル・マンは4連覇を目指すというだけでなく、トヨタがハイブリッド車でWECに挑戦して10度目という記念すべき大会でもある。トヨタはこれまで9回のレースで、3度の勝利と5度のポールポジション、そして9つの表彰台を獲得している。

今年のル・マンでは、ハイパーカークラスのライバルとしてスクーデリア・キャメロン・グリッケンハウスから2台、そしてLMP1車両のアルピーヌが出場する。しかし、ル・マン24時間というレースの難しさは、競合チームとの争いだけでなく、レースそのものの過酷さにもある。

公道区間を含む長距離コースを24時間に渡って戦う間に、レースカーは約4000kmをほぼスロットル全開で走行。その間におよそ2万5千回に渡るギアチェンジを行い、またタイヤは200万回転以上し、ル・マンは真の耐久テストの場になる。

今季、ル・マンへ向けての準備は、昨年2020年10月、GR010 HYBRIDにおける初めての走行テストから始まった。以来8回のテストとレース3戦を経て、車両のパフォーマンスと信頼性の最適化を行ってきた。この準備作業の最終段階が、来る15日(日)、公道部分を含む13.626kmのサルト・サーキットで唯一行われる公式テストとなる。

その後、24時間の決勝レースへ向けた2日間に渡る準備は、18日(水)の5時間の練習走行と予選セッションで開始される。19日(木)にはさらなる計5時間の練習走行が行われるが、2回の練習走行に挟まれる形で30分間のハイパーポールセッションが、現地時間9時から行われる。トヨタはこのハイパーポールで、5年連続のポールポジション獲得を目指す。

第89回ル・マン24時間の決勝レースは、21日(土)の現地時間午後4時(日本時間午後11時)、5万人に制限された観客が見守る中で、スタートが切られる。62台のレースカーと、186人のドライバーが、1923年から続く歴史の一ページを刻むべく、24時間の長い戦いに挑む。

村田久武(TOYOTA GAZOO Racing WEC チーム代表)
ル・マンに参戦できることは大変名誉であり、また3連覇のタイトルを持って再びここに戻って来られることを誇りに思っています。ハイパーカーで初のル・マン勝者として、さらに連勝記録を伸ばせるよう、我々は全力を尽くしてきていますし、また、ル・マンで勝つことを常に目標に、エンジニアとメカニックはドライバーと連携しながらここまで車両を仕上げてきました。今シーズンはここまで、ハイパーカーのライバルたちと激しい戦いを繰り広げている上、GR010 HYBRIDにとって初のル・マンでもありますので、当然簡単なレースにはなりませんし、技術的にも大きなチャレンジと言えるでしょう。ファンの皆様がサーキットに戻ってきて、あの特別な雰囲気に包まれたル・マンが帰ってくることを大変楽しみにしています。有観客でのレース開催を実現いただいたACOの皆様へ深く感謝するとともに、今回のル・マンが、ファンの皆様の記憶に残る素晴らしいレースになると確信しています。

小林可夢偉(GR010 HYBRID #7)
ル・マンはシーズンハイライトですし、そのために努力してきているので、毎年楽しみなイベントです。ル・マンを走るのは素晴らしい経験で、特に予選は新しいタイヤと軽い燃料で走ることができるため、最高です。私自身、3度のポールポジションを獲得していますが、もちろん最大の目標はレースに勝つことです。過去数年のレースで7号車は本当に強かったのですが、いつも何かが起き、最後までノートラブルで走り切っていません。だからこそ、今年はトラブル無くパーフェクトなレースへ向けてプッシュし続けます。我々はレースに向けて集中していて、今年こそ勝利できると思っています。

マイク・コンウェイ(GR010 HYBRID #7)
シーズン1年を通してのハードワークは、全てこのレースのためであり、GR010 HYBRIDでの走行が待ちきれません。近年のル・マンはスプリントレースのようになってきており、24時間ずっと、可能な限り全力で走り、レースをコントロールしなくてはなりません。これまでの経験から、様々な要素が絡んでくることは分かっていますし、我々7号車は過去不運に見舞われたこともありました。しかしドライバーとしてル・マンへの取り組み方は変わりません。過去と同様、一生懸命レースへ向けて、できる全ての準備を進めていきます。そして最後に、勝利の女神が我々に微笑んでくれることを願うだけです。

ホセ・マリア・ロペス(GR010 HYBRID #7)
我々は辛い戦いを経て、強くなったと思いますし、それが7号車をル・マン勝利へ導いてくれると信じています。もう過去は振り返らず、来るレースを楽しみにしていますし、チームとして、ドライバーとして、常に向上を目指しています。マイク、可夢偉、そしてエンジニアやメカニックとはまるで家族のようで、我々全員がル・マン勝利という、同じ目標に向かっています。チームとしてこれまでで最高の状態だと感じていますし、何をすべきかも分かっています。ル・マンは決して簡単なレースではなく、今年も間違いなく厳しい戦いになると思いますが、全力を尽くします。

中嶋一貴(GR010 HYBRID #8)
ル・マンの雰囲気は信じられないほど素晴らしいです。初めてル・マンで戦った2012年、ファンの歓声と情熱に圧倒されました。昨年は残念ながら無観客での開催だったので、今年、観客が戻ってくるのは嬉しいです。ル・マンが世界一チャレンジングなレースだということは、経験からとても良く分かっていて、何が起こっても不思議ではありません。我々はGR010 HYBRIDと共に、初のハイパーカー勝者となるべく、全力で挑みます。自分のすべきこと全てに集中し、運も味方してくれることを祈ります。予想は全くできませんが、表彰台の中央に立つため全てを尽くします。

セバスチャン・ブエミ(GR010 HYBRID #8)
ル・マンは私にとって特別な場所であり、特別なレースです。1960年代には私の祖父がレースをしていたと聞いたことがあり、家族の一部のような親しみを感じています。子供の頃、ジュネーブモーターショーに行って、トヨタTS020と一緒に写真を撮ってもらったことを覚えています。その時は、私自身がル・マン3度のウィナーとしてここにいることになるとは、想像もできませんでした。今年もまた新たな挑戦の機会を得られたことを嬉しく思っていますが、新しいクルマと、強力なライバルにより、大変な挑戦になることは間違いありません。勝つために何が必要かは明白であり、着実に走行プランをこなし、ミス無く走りきることです。あとは日曜日の結果を待つだけです。

ブレンドン・ハートレー(GR010 HYBRID #8)
初めて訪れた瞬間からル・マンが大好きになりました。雰囲気は最高ですし、一つの目標に向かって全員で協力し合う、そのチームの一員として働けることも楽しんでいます。全てのエンジニアとメカニックが懸命な努力をしており、ドライバーも一緒に協力し合って情報を共有しています。成功のためには、一つの大きなチームとして動く必要があり、新型のGR010 HYBRIDでこの偉大なレースに挑むために我々はそれをやってきました。皆がル・マンでの勝利を夢見てこの地にやってきます。その最高のチャンスをつかむために、これからの1週間でやるべきことがたくさんあります。

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カテゴリー: F1 / トヨタ / ル・マン24時間レース / WEC (FIA世界耐久選手権)