SUPER GT:ARTA MUGEN NSX-GTがポール・トゥ・ウィン
2023年 SUPER GT 第5戦の決勝レースが8月27日(日)に鈴鹿サーキットで行われ、GT500クラスはポールポジションからスタートしたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が実質のトップを譲らず優勝。GT300クラスは、No.18 UPGARAGE NSX GT3(小林崇志/小出峻)が今季2勝目を挙げた。

中盤戦となる第5戦は、気温30度を超える炎天下の鈴鹿サーキットで行われた。序盤の路面温度は50度にも達し、途中3回のFCY(フルコースイエロー)が宣言される厳しい戦いとなった。

ポールポジションからスタートしたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GTの大津弘樹は序盤から着実にリードを広げていき、5周終了時点で2位を走るNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)に約3秒の差をつけた。この時点での3番手は予選3位のNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)だった。

一方、後方ではポイントリーダーとしてサクセスウェイトがリミット目前の98kgのNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)は6周目に、予選7位のNo.8 ARTA MUGEN NSX-GT(野尻智紀/大湯都史樹)が8周目に最初のピットインを行う作戦で上位進出を目論んだ。だが、3号車は思うように周回ペースが上がらず大きく順位を落とした。また8号車は最後のスティントで37号車との接触により車体にダメージを負い、その影響でコースアウトを喫し、さらには修復のためピットに戻ったため、両者のこの試みは結果を結びつくことは無かった。

トップの16号車は11周目に入ったところで、GT300車両にアクシデントが発生したとみるや、この日最初のFCYが宣言される寸前にピットレーンに飛び込み、最初の給油作業とタイヤ交換を行なってコースに復帰した。この時点で6番手のNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)も同様の作戦をとったものの、こちらはピット入り口閉鎖に間に合っていなかったとの判定を受け、60秒のペナルティストップによって大きく順位を落とした。

一方、16号車は大胆な策は見事に成功。これで全車が最初のピット作業を終えた時点で、16号車は2番手に30秒もの差をつけることに成功する。その後も16号車は安定したペースで周回を重ね、44周目に2度目の給油と福住仁嶺へドライバー交代を行なって、実質のトップを守ったままコースに復帰する。

これに対し2位の23号車は18周目と42周目にピット作業を行い、2度目の作業の際にドライバー交代を行なって16号車を上回るペースで追い上げを図ったが、最初のピット作業でつけられた差はあまりにも大きく、最後まで16号車のテールを捉えるには至らなかった。

対して最初のピット作業を27周目まで引っ張った17号車だが、早めのピット作業で上位進出を目論んだ3号車に3周にわたって行く手を阻まれ、ペースを上げられない間に15周目に最初のピット作業を行なったNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)の先行を許してしまった。

結局、レースはNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が2番手に10秒045の差をつけて77周を走り切り、ポール・トゥ・ウインを達成。福住は通算5勝目、大津は嬉しいSUPER GT初優勝を手にした。さらに今季からARTAの一員になった16号車としても初優勝。ARTAとHonda NSX-GTに今季初、何よりもHondaのホームコース鈴鹿サーキットで、NSX-GTが勝つのは2018年第3戦以来(8号車NSX-GT)で、来季からCIVIC TYPE-R GTにベース車両が変更されるとあって、鈴鹿ラストレースを最良の形で締めくくることができた。

2、3位はNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)とNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)で、2台のTOYOTA GR Supra GT500が入ることになった。

なお、2番手でゴールした23号車だが、レース後の車検でスキッドブロック(最低地上高を確保するパーツ)が規定以上に削れていたため、違反と判定されて失格となってしまった。これでNissan Z GT500勢の最上位、5位にはNo.1 MARELLI IMPUL Z(平峰一貴/ベルトラン・バゲット)が入った。

なお、ポイントリーダーとして鈴鹿入りしたNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)は結局13位、ランキング2位のNo.36 au TOM'S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)も11位と共にノーポイントだった。このためドライバーズランキングのトップ2は変動なし。そして今回優勝したNo.16 ARTA MUGEN NSX-GTの福住/大津組が3位に浮上している。

■GT500
No.16 ARTA MUGEN NSX-GT
福住 仁嶺
「大津(弘樹)さんが話してくれたんで、あまり僕が話すことはないのかもしれないですけど(笑)、まずは大津さん、僕、チームみんなでいいクルマに仕上げることができて、昨日の予選がトップだったっていうこともあって、一番前からスタートすることができたということも大きな勝因だったかなと思います。そのあとの大津さんの素晴らしい走りとチームワークで、僕が乗った頃には、15秒ほどのギャップがあったので、落ち着いて走ることができましたし、僕自身も約年ぶりくらいの優勝…だったかな? 確か。あれ? 去年、優勝しましたっけ!? (2022年第2戦優勝)ハーフポイントですよね!? あ、勝ってますね。完全に忘れてましたけど(苦笑)。今回、セーフティカーも出なかったってところも僕たちにすごく風が吹いていたなと思うし、ほんとにまずは16号車の(スタッフの)皆さん、大津さんに『初優勝、おめでとう』と言いたいです。シーズンも今回が折り返しのところだと思うんですけど、そのタイミングで一度優勝することができて、(シリーズ)ランキングとしても、3位、4位、5位あたりまでやっと戻ってくることができましたし、本来、僕らの持っていたポテンシャルっていうのは、その辺の順位ではあると思うので、今回のような、何事もなくいいレース…安定したレースというか、サーキット(コース)上でも何も大きなアクシデントがなかったっていうのもありますけど、全員がかなりフェアなレースができていたと思うし、今後のレースも、まだまだ僕らもチャンピオンを獲れる可能性は十分にあるということなので、(サクセスウェイトが)重い中で…僕はGT500クラスに上がってから…8号車時代から、いつも後半戦に(ランキングが)上がってくるようなシーズンしか過ごしたことがなくて。この段階で、この(サクセス)ウェイトで走れるっていうのも、なんとなく僕としてはなんか自信にもなってるし、いいことだと思います。次のレースは厳しいかもしれないですけど、(サクセスウェイトが)重たい中でどういうふうなパフォーマンスが出せるのか、次のレースまでそんなに時間はないと思うので難しいレースだと思うんですけど、大津選手とチームのみんなとともに、チャンピオン目指して、ここから這い上がりたいなと思います」

大津 弘樹
「SUPER GTに2018年にGT300クラスから参戦して、これまで2位、3位はあったものの勝つことができなかったんです。昨年までの3年間もGT500クラスに参戦して、ダンロップタイヤで伊沢(拓也)選手とともにナカジマレーシング(Modulo Nakajima Racing)で走っていて、2位はあったんですが、なかなか上位に絡むことがないレースが続いていました。今年、チームを移籍して、序盤こそ、もういろんなトラブル…ペナルティだったり、噛み合わないことがあったんですけど、今回ようやくみんなの意識…勝ちとか自分たちがミスしないっていうことにも全集中して臨めたからこその結果だと思いますし、今日は全員がノーミスで走り切れたことを、うれしく思います。自分のスティントは、スタート直後、ちょっと(タイヤの)ウォームアップが悪いかなというのを予測していたんですけど、1周目はなんとか押さえ切れて、2周目以降はタイヤに熱が入ったら、2番手の23号車に対してギャップをどんどん築けるようになっていったので、調子も良かったです。そのままのペースを維持しようとしていたところにFCYが入って、そのタイミングで(FCYが)入るかも、っていうときに、もう”セク4”(セクター4:130Rの200m手前からフィニッシュライン)に入っていたので、そのまま”BOX”の指示を経て(ピットに)入りました。絶妙のタイミングで入りましたし、ピットから出たあとは、ギャップもすごい…マージンはあったんですけど、タイヤ交換と燃料を入れたときに、燃料が想定よりも全然入ってなかったということで……。ギャップを築いていたんですが、『燃費走行をしないと持たない』って2周分以上稼がないとゴールできないっていうことだったので。マージンもありましたし、ずっと燃費走行して、その“貯金”を切り崩しながら、残り12秒くらい? 14秒くらい縮められたところで福住(仁嶺)選手に交代しました。自分のスティントとしては、できることはできたかなと思うので、それが結果に繋がって良かったです。(今季)前半戦を落としてしまった(結果が出せなかった)のも、これからさらに尻上がりに…上り調子になるための準備…まぁ今年発足したチームでもあるし、それぞれのミスはしょうがなかった部分もあるし、ミスが出尽くしたかなと思うんで……。もちろんミスはつきものなのでなんとも言えないんですけど、優勝したし、前回も3位と、どんどん良くなってる。調子、精度をさらに上げていって、シリーズタイトルを争うための戦い方っていうのもまた変わってくると思うので、そういうところを意識して、後半戦に挑みたいと思います」

■GT300
No.18 UPGARAGE NSX GT3
小林 崇志
「昨日の予選は調子良かったんですけれども、Q2はトラブルで出走できなくて16番手スタートになってしまい、僕自身落ち込みました。前回のスーパーフォーミュラ(第7戦)で小林可夢偉選手が「お腹いっぱい」という無線を飛ばしていたんですけど、本当に同じ気持ちで「もう、いいよ」というくらい「なんで、こんな大事なところで!?」って思っていたんですけど、今日、しっかりチームががんばってリカバリーしてくれました。作戦的にもFCYの良いタイミングでピットに入れましたし、ピット作業で87号車をパスすることができたので、昨日はクルマ的なトラブルがあったんですけど、逆に今日は完璧な仕事をチームがしてくれたので、本当にそこは嬉しいですし、感謝しています。僕のスティントは16番手スタートで、昨日出走していないニュータイヤということもあってペースがいいことは分かっていましたので、できるだけペースを上げて、前に追いついて、抜いていこうと思っていました。長いレースということもあって5周目にピットに入るクルマも多かったので、割とクリアな状態でペース良く走れていました。ただ、20周目ぐらいにタイヤに異常を感じて、もう少し走る予定ではあったんですけど、急遽、小出(峻)選手に代わることになり、結果的には良かったのかなと。その後も小出選手がタイヤをもたせて、最後まで(クルマを)運んでくれたので、本当に良かったなと、今はホッとしているという感じですね。開幕戦で優勝してからここ(第5戦)までノーポイントなんですが、スピードも足らなかったですし、トラブルもかなり多くなってしまった。開幕戦はいろんなラッキーもあって、今日もラッキーなんですけど、そういうなかでなかなか第2戦以降サクセスウェイトを積んだ状態でスピードを出せなかった、トラブルも起きたというところで、やっぱりチャンピオンシップを争ううえでは、今回「表彰台はマスト」という状態で、逆に今回、表彰台を獲れないと結構キツイなと思っていました。そういうなかで、昨日もトラブルがあったのでまだ万全ではないんですけど、今日はしっかりとチームが完璧な仕事をしてくれて、メカニックも頑張ってくれたので、そのなかで優勝という結果をチームにもたらすことができたので本当に良かったと思っています。メカニックも喜んでいると思います。ただ、残り3戦でランキングトップを維持しようと思うと……次は100kgのウェイトを載せることにはなるんですけど、そのなかでもポイントを獲っていかないといけないなとは思っています。今回の予選でのトラブルとか含めて、まだまだ課題はたくさんあるので、今回の優勝は優勝でとても嬉しいんですけど、チャンピオンを獲るためにはまだまだやることがたくさんあるのかなと僕個人は感じています。今回優勝したなかで改善点もたくさんあったと思うので、またそこをチームとしっかり話し合って、残りの3戦、しっかりと着実にポイントを獲って、最終戦のもてぎが終わった時にチャンピオンを獲れるようにがんばりたいなと思います」

小出 峻
「今日のレースはひとことで言うと“シンドかった”、本当にそれだけですね。昨日の予選はマシントラブルで走れなくて後方からのスタートということで、根拠はないんですけど、なんとなく開幕戦のようなレースができるんじゃないかなと思っていました。レース運びとしては小林(崇志)選手がしっかりいいペースで走って、順位を上げて僕にバトンをわたしてくれました。そこからロングスティントが予想されたので、タイヤもある程度もたせつつ走っていたところ、途中でFCYが入って……130Rで56号車が止まったのがちょうど見えたので、そのタイミングで“絶対にピットに入ろう”と思っていました。そこでちょうどいいタイミングでFCYが出て、その時のピット作業でチームがすごくいい仕事をしてくれて順位をトップまで上げることができました。そこから自分としては87号車の松浦(孝亮)選手との戦いでもあったし、自分自身との戦いでもあって、タイヤをしっかりもたせてチェッカーまで運ぶという、その仕事をしっかり完遂することができて、自分としてはホッとしています。まずは今回のこの優勝を喜びたいですし、これでランキングトップにもなって、次回からサクセスウェイトが100kg載るということで、もちろん今まで以上に厳しい戦いがここから始まるんだろうなとは思っています。でも60kgから100kgになったからとか、そんなのは関係なくて、常にその1試合1試合で自分のできること、チームのできることを最大限やれば、結果はあとからついてくると僕は思うので、今までどおり……もちろん今までもチームもいろいろとやってくれて、自分たちもやった結果、富士だとか鈴鹿だとかでリタイアということにはなったんですけど、これ以降もやることは変わらないと思うので、しっかりとやって、最後、もてぎが終わった時に笑えるようにがんばりたいと思います」

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カテゴリー: F1 / SUPER GT