スーパーGT:au TOM’S GR Supraが予選12位から大逆転で今季2勝目!
2023 スーパーGT 第7戦『AUTOPOLIS GT 450km RACE』の決勝レースが、10月15日(日)に大分県のオートポリスで行われ、GT500クラスは予選12位から大逆転でNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)が今季2勝目を挙げ、最終戦(11/4~5)を前にドライバーランキングの最上位に立った。GT300クラスはNo.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT(吉田広樹/川合孝汰/野中誠太)が前戦に続き連勝し、ランキング1位で最終戦に臨むことになった。

曇り空ながら時折青空ものぞく、決勝日のオートポリス。午後1時30分に大分県警察の白バイ5台、パトロールカー3台の先導によって交通安全啓発のパレードラップを行なった後、フォーメーションラップ1周を経て、第7戦の決勝レースは450kmに及ぶ激戦の幕が切られた。

レース序盤はポールポジションからスタートしたNo.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が安定したペースでトップを快走。後続を徐々に引き離して一時は18秒のリードを築き上げる。その後方では予選3番手のNo.39 DENSO KOBELCO SARD GR Supra(関口雄飛/中山雄一)が2位に浮上する。その一方、予選2位のNo.19 WedsSport ADVAN GR Supra(国本雄資/阪口晴南)は1周目からペースが上がらず、1周目で3番手、6周目にはNo.17 Astemo NSX-GT(塚越広大/松下信治)に抜かれ、7周目にはNo.14 ENEOS X PRIME GR Supra(大嶋和也/山下健太)、No.37 Deloitte TOM’S GR Supra(笹原右京/ジュリアーノ・アレジ)らも抜かれてしまい、徐々に順位を落としていった。

9周目にはNo.38 ZENT CERUMO GR Supra(立川祐路/石浦宏明)の立川は、37号車と14号車を次々に抜き去って4位に浮上する。37号車の笹原も10周目に14号車を捉えて5位に。GT500のレースは残り2戦、オートポリスは最後のレースとなる立川は14周目にも17号車と39号車を次々に攻略し、2番手に浮上し、観客を沸かせた。17号車も同じ周の第2ヘアピンで39号車をオーバーテイク。37号車もそれに続いて39号車を抜いて4番手に浮上。その後は17号車を追い上げにかかる。

19周目に入るとトップの16号車に38号車と17号車が、そしてNo.23 MOTUL AUTECH Z(松田次生/ロニー・クインタレッリ)が21周目に最初のピットイン。これで37号車が暫定トップに浮上。その後方では予選9位スタートのNo.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)が14号車を捉え、2番手に浮上してきた。14号車の後ろにはなんと予選12位のNo.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)が上がってきていた。この2台は間にいたチームが早めのピット作業を行なったことによって上位に繰り上がった格好だ。3号車は29周目、37号車は30周目、そして36号車は34周目に最初のピット作業を行う。ここで36号車は坪井翔から宮田莉朋に交代した。

35周を終えた時点の順位はトップが16号車、最初のピット作業を燃料給油なしで手早く済ませた23号車(燃料給油なしは義務ピットイン回数にならないため作戦と思われる)が2番手につけ、以下17号車、38号車、3号車の順。この時点で36号車は11番手だったが、宮田はそこから着実に順位を上げていき、39周目にはNo.24 リアライズコーポレーション ADVAN Z(佐々木大樹/平手晃平)を抜いて8位に。さらに23号車が40周目に2度目のピット作業を行なったことで7位に繰り上がった。

その後は50周目には38号車が2度目のピット作業を行なって立川から石浦に交代。これを皮切りに上位陣が次々にピットイン。これで36号車は、63周目に3号車が2度目のピット作業を行なったことで暫定トップに浮上、65周目にピット作業を行なって17号車の後ろ、5番手でコースに復帰する。

一方、3号車は67周目に38号車を捉えて2番手に浮上すると、トップを走行する16号車との差を徐々に詰めていった。36号車も70周目に38号車を捉えて3番手に。さらに3号車との差を縮めにかかり、2周でそのテールに迫る。この時点でトップの16号車とも3.9秒だった。

そこからは3号車と36号車の宮田による熾烈なドッグファイトがコースの各所で繰り広げられ、宮田は77周目の第1ヘアピンで抜き放って2番手をゲット。そのペースは落ちずにトップの16号車背後に喰らいついた。

そして87周目の第2ヘアピンで宮田は16号車を抜き去ってトップに躍り出る。その後は徐々にリードを広げて97周を走り切って見事11台抜きを達成。No.36 au TOM’S GR Supra(坪井翔/宮田莉朋)が第2戦富士以来の今季2勝目をものにした。

3号車も16号車を激しく追い立てたが、16号車は最後まで3号車の先行を許さず。No.16 ARTA MUGEN NSX-GT(福住仁嶺/大津弘樹)が2位でフィニッシュ。No.3 Niterra MOTUL Z(千代勝正/高星明誠)は3位で表彰台を獲得した。

これによりドライバーランキングは36号車の坪井/宮田組が69ポイントとなり、3号車の千代/高星組の62ポイントを上回ってトップに立った。16号車の福住/大津組も53ポイントとなり、ランキング3位となった。11月4、l5日のモビリティリゾートもてぎで開催される最終戦では、この上位3組がGT500クラスのタイトルを争うことになった。

GT500
No.36 au TOM’S GR Supra
坪井翔
「オートポリスでの450kmレースが初めてということで、どうなるのかなという(思いがあった)。300kmでも結構大変なのに、450kmになるとさらに大変になるんじゃないかなということは予想されていたので、ある程度それを見据えた上でレースを組み立てて、(サーキットに)来ました。昨日の予選では、アタックしていないクルマに引っかかってしまうということが起きて、ちょっと残念な予選になってしまって。まさかQ1で敗退しちゃったんで、予選12位からどこまであがれるかっていうのは結構未知数なところでした。表彰台まで行ければ“御の字”かなっていう風に思っていたんですけど、僕のスティントが始まってみると、最初ちょっと接触があって、前のカウルがちょっと壊れてしまって…。ただ、走りには影響なかったのでそのまま走っていました。すごくペースがいいのはわかっていたんですけど、GT500(車両)がまだいっぱい前にいたので、落ち着いて、ピット(作業)で(タイムを)稼げるところは稼いだりとか、しっかりタイヤをマネージメントして、なるべくスティント(の周回数)を引っ張るとことができたので、全車ほとんどピットに入っていくなかで、ドライバーミニマム(規定周回数)の33周かな? を超えるところまではうちらは唯一引っ張れたので、そこはすごい大きかったかなと思います。最後、宮田(莉朋)選手が怒涛の追い上げで、ズバズバ前(のクルマ)を抜いていってくれたんで、もう見ている側としては最高の気持ちで見ていましたけど、まさか12位から優勝できるとはちょっと思ってもいなかったので、非常に嬉しい結果になりました。(最終戦のコース)もてぎに対してはあまりいい印象を持っていないので、どちらかというと、ここで3号車(Niterra MOTUL Z)を逆転してポイントリーダーで最終戦を迎えたいなという気持ちはありました。まさか、(ポイントが)7点差まで広がって(最終戦に)行けるとは思っても見なかったので、それはすごく嬉しいですし、多分、もてぎに向けてTGR勢、BS(ブリヂストン)勢としてもすごく士気が上がった結果だと思います。最終戦……僕は2年前にチャンピオンを獲りましたけど、そのときはちょっと“他力本願”というか、自力ではチャンピオンを獲れない状況でした。今年は自力でチャンピオンを獲れる位置に来て最終戦を迎えられるので、そこは自信を持って……、ただ油断するとすぐやられてしまうので、チャンピオン(獲得)に向けて気を引き締めて、最終戦を勝って(タイトルを)決めたいなと思います」

宮田莉朋
「今日は12番手からのスタートで、坪井(翔)選手は“大人の対応”をして予選アタックで引っかかった車両のことを言ってないですけど、引っかかったというか、僕的にはもう絶対、SF(スーパーフォーミュラ)ならペナルティを受けるようなことを16号車(ARTA MUGEN NSX-GT)にやられて……。僕は(レースの結果で)絶対やり返すと思っていたんです。みんなこのオートポリスは抜くことが無理だから、多分4位以内が現実的だろうっていう感覚だったんですけど、実は去年も、僕が予選でQ2を担当する予定が、Q1でちょっとドライバーがミスしてピットスタートになっちゃって。それでも8番手まで追い上げたので、その状況を考えると、7台抜けたっていうことを考えれば、1スティント目に坪井選手が7台抜いてくれれば、3スティントあるので、計算上は勝てるなってずっと思っていたので。僕は心の中で密かに『絶対、今日は勝つ』って思っていました。もう絶対に借りを返したいって思ったし、坪井選手も昨日Q2に繋げられなかったことをすごく悔しがっていたというか、自分のポテンシャルが足りなかったとかではなく、そういう環境的な要因でタイムを残せなかったところで、歯がゆかったと思います。それに応えるのがチームメイトだと思っていたので、今日はもうそういう意味でも絶対(16号車の)前でゴールすることしか考えていなかった。それが実現できて本当に嬉しいですし、そこまでいいクルマ、そしてピット作業を完璧にこなしてくれたチームのスタッフ、また応援してくださっているTGRだったりスポンサーの皆さんに本当に感謝しています。今回、ポイントトップで最終戦を迎えたいという思いでこのオートポリスに入りました。今まで燃料流量リストリクター(の影響)で、なかなかこう……クルマが良くてもそのハンデで結果を残せないっていうレースがずっと続いていたので。逆に、3号車(Niterra MOTUL Z)は“タラレバ”を言うと、鈴鹿の1回目のレース(第3戦)で赤旗のときにトップになっちゃって。それで、僕からするとあんまり十分なペナルティじゃないような位置で戻ってこられたというのと、あとは雨の(第4戦)富士で、ミシュラン(タイヤ)の強さで逆転もされて、しかも結構大きなポイント差で離されていたので……。そこを考えると、今、ランキングトップになれたというのは、ずっと1ポイントでも(多く)獲ろうという努力がようやく実になった(と思う)。今回、燃料リストリクターも外れましたし、それもあってトップになれたと思うので。次のもてぎ(最終戦)も……昨年はちょっともてぎでGR SupraとBS(ブリヂストン)が苦戦したので、そういう意味では、今回のオートポリスで優勝できたっていうのはデカいですし、もてぎでもポールポジションで優勝を目指してがんばりたいなと思います」

GT300
No.52 埼玉トヨペットGB GR Supra GT
吉田広樹
「自分たちのチームは(埼玉トヨペットの)店舗から来たメカニックがタイヤ交換をしてくれているんですが、今回もばっちり完璧な作業で送り出してくれました。自分のスティントが49周か50周ぐらいだったと思うんですけど、初めは自分の周りに戦っている相手というのが見えていなくて、その見えていない相手と戦いつつ、そこでタイヤをもたせなくてはいけないということを意識して走っていました。僕らはタイヤを2回に分けて走っていたんですけど、同じ(ブリヂストン)タイヤで2位を走っていた2号車は3スティントに分けてきていて……ピットから出たら、やっぱりその分(タイヤがフレッシュなので)すごい勢いで、結構早い段階で後ろにつかれてしまいました。(その時点で)自分の感覚的にはまだ残り30周ぐらいあったので、正直、そこから残り30周ぐらいを抑え切れるのかという気持ちがちょっとあったんですけど、前日にロングのテストをやってペースを確認できていましたし、川合(孝汰)選手が50周近く走って(その)パフォーマンスも見えていたので、自分がミスせずしっかり走ろうと。チームも500クラスのマシンが来るタイミングを細かく無線で伝えてくれたり、最後にはラップダウンになるチームに走っていって状況を伝えたりしていろいろ動いてくれたので、決して楽なスティントではなかったんですけど、チームのサポート含めてギリギリ乗り切れて、最高のカタチで終われたのでチームみんなで喜べるし、良かったなと思います。(チャンピオン争いに関しては)20ポイントいう余裕ができてすごく嬉しいんですけど、去年も(チャンピオン争いに)絡んではいたものの、自分たちの順位というか周り次第みたいなところがあったので、今年に関しては自分たちで決められそうなところに今いるので、いつもどおり思いっ切りやりたいなと。あまり意識すると普段やらないことをやっていろいろなミスが(出る)というふうになるので、いつもどおり“1戦1戦ベストを尽くして”というカタチで戦えたらとは思っています。ただ、20ポイント差で2位にいるのが2号車だと思うんですけど、9月のもてぎのテストですごく速くて……ポールポジションを獲られてもおかしくなさそうな速さを感じました。そういう意味では本当に油断せずに、僕らも軽い状態で久しぶりに戦えるのでポール(ポジション)も獲りたいですし、レースも全力で優勝目指して、(その結果)チャンピオンがついてくればいいかなと思っています」

川合孝汰
「予選ではサクセスウェイトが重いなかで一番いいポジションを獲れたと思うんですけど、思った以上に1、2、3(位)との差があって、それがいったい何が原因かというところが分からなかったんです。でも、決勝ペースに関しては自信があって、今回もタイヤ1回交換の作戦を獲ったんですけど……やっぱりピックアップもあったので、序盤に4台(2号車、61号車、31号車)で争うなかで2号車に離されてしまうかなと思った矢先に(2号車が)離れていったので、ちょっとヤバイなと思っていました。その後、タイミングもあったんですけど、うまく前の2台を抜けてトップに立つことができたので、そこに関してはあまり引っかかること(ロス)もなく、それが(優勝できた要因として)ひとつ大きかったかなと思います。ただ、その後、周回を重ねる時に、タイヤの(パフォーマンスの)落ちみたいなので(周回遅れに)引っかかったり、タイムを落としてしまったりというのがありました。最後、吉田(広樹)選手のパートが長い方向だったので、マージンをなるべく削りたくないなと思いながらも(周回遅れに)引っかかってしまったことが悔しかったなというのはあります。(最終戦では)チャンピオンどうこうというのは意識していないです。1戦1戦、しっかり優勝することに重きをおいているので、変わらず次も優勝にこだわりたいと思っています」

野中誠太
「まず、今回この場にいられるのも、関係者のみなさまの協力があってのことで、このような優勝のタイミングでいろいろと学ぶことがたくさんありました。昨日からチームに帯同して、いろいろな戦略であったりとか(を見て)、手堅く、この優勝を狙えていたのかなという部分はドライバーとしても勉強になりました。今回、乗る機会はありませんでしたけど、おふたりのドライビングやレースの組み立て方など、自分の今後につながることがたくさんあると思うので、この経験を糧に、僕自身もまた乗るチャンスがあれば、がんばりたいと思います。スーパー耐久でもご一緒させていただいて、埼玉トヨペットチームの強さというのを身をもって感じています。最終戦はJAF(GT300規定車両)のGR Supra勢にとっては厳しい戦いになるとは思うんですけど、今日のような安定した戦略であったりとか、手堅く結果を獲りにいく姿勢というのは、間違いなく“ナンバーワン(のチーム)”だと思っているので、最終戦も信じて応援しています!」

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カテゴリー: F1 / SUPER GT