ザク・ブラウン F1イギリスGPでウィリアムズFW11Bによる禁断の“浮気走行”
マクラーレン・レーシングのCEOザク・ブラウンが、この夏のF1イギリスGPで“パパイヤ・プライド”をひとまず脇に置き、ライバルチームのマシンに乗り込むという異例の計画を明かした。しかも本人はこの“浮気”に大喜びだ。

F1チーム代表がライバルのマシンに乗ることは滅多にないが、シルバーストンの聖地を疾走するチャンスに、ブラウンは少年のような笑みを浮かべている

彼が選んだマシンは、自身のコレクションから取り出した1987年製ウィリアムズFW11B。盟友ナイジェル・マンセルが数々の勝利を挙げた伝説の1台である。

名車FW11Bで“原点回帰”
ESPN F1による自宅のレースコレクション取材で、ブラウンはこの計画を嬉々として語った。

「今年のイギリスGPでこれに乗るよ。ファンは絶対に喜んでくれるはずだ」と、マンセルが1987年のイギリスGPで勝利を挙げたその車の横で語った。

「来週スペインでこの車を走らせるんだ。実はまだ運転したことがなくてね」

「完全にレストアしたばかりで、シェイクダウンも済んでる。準備は万端だよ」

ブラウンは自らの“浮気行為”に、おどけた様子でこう付け加えた。

「イギリスGPでこの車を走らせたら、みんな喜ぶだろうけど、『なんでマクラーレンの人がウィリアムズに?』って少し困惑するかもね」

その頃、マクラーレンMP4/4はガレージの片隅で静かに涙を流しているかもしれない。

ウィリアムズ FW11B(F1マシン)

マンセルへの敬意、F1愛
ブラウンのFW11Bへの愛情は、彼のレース史への敬意そのものである。

「見て分かるように、僕はF1とインディカーの大ファンなんだ。だから当然、エマーソン・フィッティパルディも好きだし、マリオ・アンドレッティも。そしてもちろん、ナイジェル・マンセルもね」

「この車は1987年、マンセルが多くのレースに勝った。当時、彼が“人生で一番運転しやすかった”と話していた車だよ」

FW11Bはホンダ製ターボエンジンを搭載した伝説的マシンであり、歴史的瞬間の主役でもある。

「有名な1987年のイギリスGPを覚えてる?マンセルは途中でタイヤにパンクを抱えてピットインして、復帰後に17周連続でファステストを更新。最後はネルソン・ピケを最終ストレートで抜いて勝ったんだ」

「その時の車がこれ。このシャシーそのものなんだよ」

あの伝説のバトルを再現するように、ブラウンもまたシルバーストンを熱く駆け抜ける構えだ。

ザク・ブラウン マクラーレン F1

“マンセルの愛機”をどう手に入れた?
この珠玉のマシンを手に入れた経緯も、実に“ザクらしい”。

「ウィリアムズとのスポンサー契約を結んだとき、『何かお返しできないか』って言われて、『車を売ってくれ』って答えたんだ」

「プレゼントはダメだから販売という形でね。『どれが欲しい?』って聞かれて、『あれがいい』って即答した」

こうして、マンセルの“王者の戦車”は彼のガレージに加わった。

ブランドロイヤルティが重視され、発言もPR管理されるこの時代において、ザク・ブラウンはあっけらかんと“裏切り”を楽しんでいる。懐古とスピードへの愛を優先する姿勢は、むしろ清々しい。

今年のイギリスGP、シルバーストンではブラウンの“浮気走行”が大いに注目を集めるだろう。そして観客たちは、心からこの“裏切り”を楽しむに違いない。

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カテゴリー: F1 / マクラーレンF1チーム / ウィリアムズ・レーシング / F1イギリスGP