F1スペインGP:フロントウイング規制もマクラーレンの速さ揺るがず

「マクラーレンのスピードが明らかに落ちていたね」と語ったのはメルセデスのジョージ・ラッセル。皮肉たっぷりの口調だった。
「だから、まあ…いいニュースだね」
今週末のスペインGPを前に、「エアロエラスティシティ(空力的な弾性)」の問題はF1界隈で最大の話題となっており、金曜朝のメディアセンターからピットレーンを見渡すと、各TVメディアの解説者たちが前ウイングを指し示しながら熱心に説明する姿があちこちに見られた。
ここ数か月間、前後ウイングのしなりによって空力的な利益を得ていることが大きな議論の的となってきた。FIAはこの問題に対応するため、車速の出ている状態でウイングの挙動を監視する高解像度カメラを導入し、許容範囲をさらに厳しく制限するなど、段階的に規制を強化してきた。
その一連の対応が「段階的すぎる」と不満を抱く上位チームもあり、なかでもレッドブルはマクラーレンが素材特性を利用して空力性能を高めているとして最も声高に批判していた。スペインGPでの新テスト導入は「遅すぎる」とする意見もあったが、一方で「開幕直後に既存設計を無駄にすることは経済的に現実的ではなかった」とする説明には一定の理解もあった。
とはいえ、新テストによって勢力図が即座に塗り替えられることを期待していた人々にとっては、金曜の結果は明らかに落胆を誘うものだった。マクラーレンは2回のプラクティスで両方ともトップを獲得。パドック全体には「何も変わっていない」もしくは「さらなるデータが必要」といった反応が広がった。
フェルナンド・アロンソは「クルマの感触は同じだと思う」と語った。
「競争力もここ最近のレースと同じような感じで、特に大きな変化はないと思う」
エステバン・オコンも「その点では非常に似たようなものだった。大きな変化はなかったと思う。いつも通りという感じだ」と述べた。
マックス・フェルスタッペンも、新指令の影響について尋ねられた際に「順位表を見ても、それほど大きな変化はないと思う」とコメント。
「でも、それも正直なところ想定内だった」

この先、どうなるのか?
フェルスタッペンは今シーズン初めから、マクラーレンとレッドブルの差は、マクラーレンのウイングの柔軟性ではなく、RB21の扱いづらさにあると明言してきた。マクラーレンが「魔法の解決策」を見つけたというストーリーを繰り返してきたのは、むしろレッドブルの首脳陣側だ。
実際には、各チームが仮に「エアロエラスティシティ」を活用していたとしても、その効果は極めて微細なものにとどまる。テレビで見るとウイングがしなっているように見える映像も確かに派手だが、複合素材でできたパーツが完全に硬くならないのは当然で、多少のたわみは避けられない。問題はそのたわみの「程度」と、それをどれほどパフォーマンスに結びつけているかという点だ。
ほんのわずかな変位が問題なのだ。
例えばフロントウイングで直線スピードが向上するように平面がしなる場合でも、それは副次的な効果であり、各チームが主に狙っているのは「マシンバランスの改善」だ。現代のグラウンドエフェクトカーは、特定のコーナーでアンダーステアから急にオーバーステアに転じる傾向があり、ウイングのたわみによる空力バランスの調整は、その挙動を和らげる手段のひとつとされている。
今回の剛性規制が即座に明確な変化をもたらさないのは当然で、しかも今季マシンはこのバルセロナ・サーキットでまだ一度も走っていないため、チーム側も以前のデータと比較する術を持たない。さらに、今季の傾向として、サーキットの特性によって優位性を持つチームが入れ替わることが多く、バルセロナはマクラーレンではなく、むしろレッドブル向きの「洋ナシ型(pears)」サーキットだと、アンドレア・ステラ代表が表現することもある。
よって、金曜の1日だけをもってして新たなフロントウイング規制の効果を断言することは不可能だ。特に今回、複数のチームが規制への対応だけでなく純粋な性能向上を狙って新型ウイングを導入しており、その影響も混在している。
「現時点では効果について判断するのは時期尚早だ」と語るのはフェラーリのチーム代表フレデリック・バスール。
「でも最終的には、チーム間のラップタイムに大きな差が出るようなものではない」
カテゴリー: F1 / F1スペインGP / マクラーレンF1チーム / FIA(国際自動車連盟)