F1スペインGPでスチール製スキッドブロック初テスト 火災対策でFIAが主導

4月のF1日本GPでは、通常使用されているチタン製スキッドブロックから発生した火花がコース周辺の乾燥した芝に引火し、小規模ながら火災が発生した。これを受けて、今後のレースでも同様の問題が起きるのではないかという懸念が高まっている。
特に2025年シーズンは、各チームがマシンをより地面に近づけて走らせており、その結果スキッドブロックが地面と接触して火花が出る頻度が高まっている。この火花が芝生の火災の要因と見られており、FIAは対策として「スチール製」への切り替えを模索している。
FIAは、鉄の削れカスはチタンとは異なる反応を示すため、火災リスクを低減できると考えている。チタン製の削れカスは白熱し、長時間高温を保つ性質があるため、着地後も乾燥した草を燃やしてしまう危険性がある。一方、鉄はそこまで高温にならず、冷えるのも早いため、火災を引き起こす可能性が低くなるとされる。
このアイデアは最近のF1コミッションの会議でも議題に上がったが、チーム側の賛同は得られていない。スチール製スキッドブロックはチタンよりも重く、マシン1台あたり約750グラムの重量増となるうえ、チタンほど耐久性がないため摩耗が早いという欠点がある。これにより車高を高く設定し直さなければならず、車高に敏感な設計のマシンにとってはさらなる技術的課題となる。

また、チーム側からは「コース周辺の芝に水を撒いたり、耐火スプレーを散布する方が安価かつ現実的だ」という意見も出ている。
それでもFIAはこの取り組みを前進させる意向であり、スペインGPの金曜プラクティスで各チームの1台にスチール製スキッドブロックを装着してテストを行う予定だ。これにより、性能や安全性に関するデータを収集し、今後の正式導入の判断材料とする。
FIAはチームへの初期通知の段階で、今後のカレンダーにおいて「芝生による火災リスクが高いサーキットではスチール製」「そうでない場所では従来のチタン製」というふうに使い分ける方針を提示していた。
今回のスペインでのテスト結果が良好であれば、2025年シーズン後半のスキッドブロック使用方針は以下のように分かれる見込みだ。
■ スチール製スキッドブロック使用予定のレース
カナダ、オーストリア、イギリス、ベルギー、ハンガリー、オランダ、イタリア、アメリカ、メキシコ、ブラジル
■ チタン製スキッドブロック継続使用予定のレース
アゼルバイジャン、シンガポール、ラスベガス、カタール、アブダビ
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