F1シンガポールGP FP3展開:フェルスタッペン最速 角田裕毅は苦戦18番手

■ セッション序盤:中団勢が先行、角田裕毅が暫定トップに
セッション開始直後、最初にコースへ出たのはハース勢。中団チームが次々と続き、角田裕毅(レッドブル)もミディアムタイヤで周回を開始する。序盤はトラック表面のグリップが低く、各車が慎重にデータ収集を進めた。
角田が1分33秒743をマークして暫定トップに立つ。前日の2セッションで好調だった流れを引き継ぎたいところだったが、彼の周囲には多くの変数があった。各チームが異なるプログラムを走行し、特にメルセデスとウィリアムズは予選シミュレーションに備え、ソフトタイヤの投入タイミングを慎重に見極めていた。
■ ローソン、2日連続のクラッシュで再び赤旗
17時40分、ローソンがターン7出口で縁石に乗り上げ、マシンがアウト側へ跳ねる。リアがスナップし、ウォールへと激しく接触。フロントウイングと右フロントサスペンションが破損した。直後に赤旗が掲示され、セッションは一時中断。
ピットに戻ったローソンは無線で落胆の声を漏らす。「リアが出た、止まらなかった……」。彼にとってはバクーでのキャリア最高位(P5)後の難しい週末となり、マリーナ・ベイではまさに試練の連続。チームは同じ側の修復を再び強いられることとなり、メカニックたちは2日連続の徹夜作業を覚悟した。
元F1ドライバーのジョリオン・パーマーはF1TVでこう評した。
「おそらく昨日のクラッシュの遅れを取り戻そうと、早い段階で攻めすぎた。もし予選でQ1突破できたら奇跡だろう。」
■ 赤旗解除後:ノリスとサインツが接触寸前、混沌とする中団
セッション再開直後、カルロス・サインツがスロー走行中のランド・ノリスの後方から迫り、接触寸前まで詰め寄る。かつてのチームメイトであり親友の二人だが、危ういシーンに観客も息をのむ。ノリスは昨日のFP2でもピットレーンでルクレールに接触されたばかりで、シンガポールでは“災難続き”の様相だった。
アストンマーティン勢はこの時間帯、タイヤのヒートサイクルを意図的に行い、決勝を見据えた準備に専念。ストロールとアロンソはそれぞれハードとミディアムで1周のみ走行し、再びピットへ戻った。
■ アントネッリが首位に立つ、メルセデスが復調気配
赤旗解除から10分後、メルセデス勢が動く。キミ・アントネッリがソフトタイヤでセクター2に紫表示を点灯させ、1分30秒760を記録。これでノリスを0.261秒上回りトップに躍り出た。
メルセデスは高温環境が苦手とされていたが、このコンディションで好調を示したのはポジティブな兆しだ。ルイス・ハミルトンもミディアムで4番手につける。パドックでは「温度変化に対するマシンの挙動改善が進んだ」との声も上がった。
■ フェルスタッペンがトップ浮上、ピアストリが0.017秒差
18時20分、フェルスタッペンがレッドブルRB21を完璧に操り、1分30秒148をマークして首位に立つ。クラッシュ翌日のジョージ・ラッセルが0.049秒差で続き、2台のメルセデスが上位に割り込む。
アントネッリがさらに更新して2番手(+0.040秒)、そこへピアストリが再びタイムを伸ばし、フェルスタッペンとの差わずか0.017秒。マクラーレン勢の速さも健在で、上位5台が0.089秒以内という驚異の接戦となった。
パーマーは解説で「アントネッリは昨日のクラッシュで時間を失ったが、ペース自体はかなり高い。今日は本来の速さが見えている」と語った。
■ 角田裕毅は伸び悩み、18番手に沈む
金曜の好感触を持ち込んだ角田裕毅だったが、この日はセットアップが噛み合わず苦戦。ソフトタイヤでのクリーンラップを得ながらも、思うようにグリップが立ち上がらず18番手。レッドブルの一員として注目を浴びる中、ヘルムート・マルコが「来季確定はフェルスタッペンとハジャーのみ」と語った直後というタイミングだけに、予選へのプレッシャーが高まる。
無線でも「全体的にリアの安定感が足りない」と訴えており、チーム側は予選前のセットアップ修正に追われる見通しだ。
■ ハースが上昇、アロンソは失速
ニコ・ヒュルケンベルグ(ハースF1チーム)がここで上位進出。シルバーストンでの初表彰台以来、チームメイトに後れを取っていたが、再び調子を取り戻した。これに対し、アストンマーティンは苦しい状況。フェルナンド・アロンソは14番手、ランス・ストロールは18番手に沈み、前日の勢いを維持できず。「ペースを出せない」と無線で苛立ちを見せた。
■ FP3終了:接戦のまま予選へ
チェッカーフラッグが振られた瞬間、アントネッリがラストラップでタイムを更新し、わずか0.040秒差でチームメイトの背後へ。最終的にフェルスタッペンがトップ、ピアストリが0.017秒差の2番手、ラッセルが3番手。アントネッリとノリスが同タイムで4・5番手を分け合った。
トト・ヴォルフはセッション後、「非常に僅差だ。特に市街地サーキットでこれほど詰まるのは珍しい。予選がどうなるか楽しみだ。我々も混戦の中にいる」と語った。
上位5台が0.089秒差という異常な接戦。フェラーリ、ウィリアムズ、レーシングブルズもトップ10を狙える位置におり、「ストリート・サタデー」の名にふさわしい激戦の予感が漂う。
次は予選へ。開始は現地21時(日本時間22時)
ライトに照らされた夜のマリーナ・ベイ。フェルスタッペンの悲願の初勝利か、それともマクラーレン勢の逆襲か。チーム間の差はわずか数百分の一秒。手に汗握る予選が待っている。
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