佐藤琢磨、終了間際のスピンは「ちょっと欲張りすぎた」
佐藤琢磨が、インディカー 第15戦 ワトキンス・グレンのレース週末を振り返った。
待望久しかったインディカー・シリーズのワトキンス・グレン戦が開催された。インディカーがこの地を訪れるのは6年ぶりのこと。ここでNo.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダを駆る佐藤琢磨は後方グリッドから8番手まで挽回し、トップ6が狙えそうな展開となりながら、スピンしてそのチャンスを失うというドラマチックなレースを演じた。
ニューヨーク州の緑多いサーキットで事前のテストに参加しなかったのはAJフォイト・レーシングだけ。しかも、このコースは路面の再舗装を行ったばかりで、エンジニアにとってもドライバーにとっても手がかりとなるような情報はないも同然だった。
ちなみに佐藤琢磨はここで2010年に1度だけレースを戦ったことがあるが、チームメイトのジャック・ホークスワースにとっては初めてのイベントとなった。
「ただし、エンジニアたちは入念に準備してくれました」と佐藤琢磨は語る。「また、ホンダ・パフォーマンス・デベロップメントからは必要なデータが提供され、これもとても役に立ちました。最初のプラクティスでは初期のセッティングに集中しましたが、時間はとても短いものでした。そして僕はワトキンス・グレンがどれほどチャレンジングなコースであるかを再発見しました。僕はこのサーキットが本当に好きです。コーナーに進入するときのスピードは、普通のサーキットに比べると信じられないくらい速いので、とにかく自信を持っていないと走れません」
「再舗装が行われたことで、前回インディカー・サースが開催されたときに比べるとラップタイムは5秒か6秒ほど速くなっていたので、走っているときの感覚はまったくの別物でした! 施設はアメリカのサーキットとしてはベストなもののひとつですし、路面のスムーズさに関していえば並ぶものがありません。とりわけ路面はスパ-フランコルシャンを思い起こさせるほどスムーズで、完全にF1スペックのサーキットだといえます。きっと、誰もがこのコースでの走りを楽しんだと思います」
「すべてのコーナーは横Gが3.5Gから4Gに達し、なかには4Gを越えるコーナーもありました。こうなると肉体的にも厳しく、何人かのドライバーは首が痛いといっていました。まるで速かった時代のF1のようです!」
合計2時間で行われたプラクティスにおいて、佐藤琢磨は最初のセッションで14番手、次のセッションでは12番手に浮上した。「運のいいことに、通常のイベントよりもセッションは長めに設定されていました。唯一の制約はタイヤの使用本数に制限がかかっていることだけです。だから、かなり恵まれた環境だったわけですが、それでもモータースポーツの世界ですべてのことをやり尽くそうとすると、どんなに時間があっても十分ということはありません! リザルトを見ただけでは、僕たちがどれだけ速さに満足していたかはわからないでしょうが、確実にトップとの差を詰めていることは実感していました」
土曜日に行われた最後のプラクティスでは、路面コンディションが改善されたこともあってチームはさらなる前進を果たし、佐藤琢磨は15番手のタイムをマーク。予選に向けて自信を抱いていたが、期待されたような結果を残すことなく、最後尾の22番グリッドからスタートすることが決まる。
「細かなトラブルがいくつか起きました。予選でトップ10に入る自信があり、僕たちは予選中のタイヤ戦略について検討しました。コースの全長が長いので、時間内に走行できる周回数は少なくなります。そこで最初のセグメントでは、硬めのブラック・タイヤを装着してからレッド・タイヤに交換するのではなく、最初からレッド・タイヤで走り始めたほうが好ましいと考えられました。フリープラクティスでは、ブラック・タイヤでもグレイニングやブリスターの兆候が見られましたが、僕自身はグループ2から参加することが決まっていた予選では、最初からレッド・タイヤを履いてグループ1の予選に挑んだドライバーが路面コンディションの改善に助けられてタイムをぐんぐんと縮めていく様子を目の当たりにしました。そこで、僕たちも同じ戦略で挑むことを決めました」
「不運にも、このとき僕のHANSデバイスは正しい位置に装着されていませんでした。こんなことは初めてでしたが、安全確認の為にピットストップを行い、これでインラップとアウトラップの時間をロスすることになりました。これですべてが終わりになったわけではありませんが、余裕のない展開となったのは事実です。それでも、レッド・タイヤでいい感触を掴んだ僕はアタックを開始します。セクタータイムはコンペティティブなもので、走行中のペースからラップタイムを予測するシステムがあるのですが、それによると、2番手に位置していたとエンジニアは教えてくれました。しかし、僕はミスを犯してスピンを喫します。あとになってクルマに小さな問題があったことが確認されましたが、あれはコントロールできたかもしれないと思うと、悔しくて仕方ありません。メカニックたちには本当に申し訳ないことをしてしまったと思います」
これで佐藤琢磨はグリッドの最後尾に並ぶことになったが、好スタートを決めると、カオスに陥ったオープニングラップでライバルたちを次々とパスし、6つポジションを上げることに成功する。
「コーナーはどれも高速かつ大きく曲がり込むレイアウトなので、ヘビーブレーキングを行う場所がなく、オーバーテイクは簡単ではありません。このため、1コーナーには3ワイドや4ワイドとなって進入し、順位を上げようとするのが一般的です。僕は隊列の最後方にいたので、アクシデントに巻き込まれないように気をつけながら、いくつか順位を上げることができました」
佐藤琢磨が最初のピットストップを指示されたのは8周目という早い段階。これは他のドライバーたちとは異なるピット戦略を選択したことを意味しており、その成果はレース終盤に現れるはずだった。佐藤琢磨のマシンは好調だったが、それでもワトキンス・グレンでライバルをオーバーテイクするのは容易ではなく、したがって戦略を駆使するのが順位を上げるうえではもっともいい方法なのである。レースの大半を佐藤琢磨は15番手ないし16番手で周回していたが、他のドライバーがピットインしたときには順位を上がられると期待された。実際、60周のレースの32周目には3番手まで浮上。そして佐藤琢磨自身が最後から2番目となるピットを行うと15番手に後退した。そして39周目にウィル・パワーがクラッシュし、今回のレースを決定づけることになるイエローが提示されると、佐藤琢磨は2番手へと返り咲いたのである。
ほとんどのドライバーがここでピットインし、フィニッシュまで走り続ける戦略を選択したが、カルロス・ムニョスと佐藤琢磨はステイアウトを決め込んだ。これでムニョスはトップ、佐藤琢磨は2番手に浮上したものの、ふたりはもう1度ピットストップを行わなければならない。レースは43周目に再開、佐藤琢磨はトップを目指して戦い続けた。
「僕たちはダウンフォースの設定がややコンサバティブで、空気抵抗が大きいように感じられました。このため、バスストップ・シケインに向かうところでスピードは伸び悩み、ギア設定もショートだった為にエンジンが回りきってしまい、難しい状況でした。僕はスリップストリームとプッシュ・トゥ・パスを使いましたが、スリップストリームから抜け出すと空気の壁に突き当たり、まるで減速するように感じられます。さらにカルロスは信じられないくらいのレイトブレーキを繰り出しました。コーナーでは僕をアウト側に押し出すようにして、コースのギリギリのところまで追いやられました。このとき縁石を乗り越え、いくつか順位を落とすこととなります」
「それでもチームがいい戦略を考え出してくれました。このときのイエローは本当にクリティカルなタイミングだったのです。この後、燃費走行で走り続ければフィニッシュまでたどり着けないこともありませんでしたが、それは極めてリスキーでした。もしも僕たちがほかのドライバーと同じ戦略を選んでいたら、燃費走行をしながら1周あたり1台をオーバーテイクしなければならなかったでしょう。ただし、ライバルたちの少なくとも半分はもう1度ピットインすることがわかっていたので、これはいい判断でした」
残り12周となったところで、佐藤琢磨は最後のピットストップを実施。ムニョスは1周あとでこれに続いた。佐藤琢磨はコロンビア人ドライバーを素早くパスすると15番手に浮上。その後は駆け上がるようにして順位を上げていった。
「僕はアタックを繰り返しました。これは最高に楽しかったです。何人かのドライバーはギリギリまで燃料をセーブしながら走っていたため、ラップタイムは3秒も遅くなっていました。けれども僕はレッド・タイヤを履いてプッシュし続けます。マシンはやや不安定な状況でしたが、僕は残り周回数が減っていくのを数えていました。トップ10、トップ8……。ある周回では、バスストップの進入で1度に2台をパスしました。ライアン・ハンター-レイがRCエナーソンをオーバーテイクしようとしてスリップストリームから抜け出したとき、ふたりの間に飛び込んだのです。あれは本当に楽しかったです!」
ファイナルラップの1周前、佐藤琢磨がアレクサンダー・ロッシをパスして8番手となったところで悲劇は起きた。
「ちょっと欲張りすぎたのかもしれません。僕はついに7番手となり、シモン・パジェノーの背後につきました。いまになってみれば、僕のあのスピードでは次のストレートまで待つべきだったといえますが、あと2周で次のグループに追いつくためには、できるだけ早くオーバーテイクしたかったのです。ターン7でパジェノーはデフェンス気味の動きを見せたので、ターン8で彼をオーバーテイクすべく、マシンを大きく振ってスロットルを早めに開けました。ところが、僕は路面の汚れた部分に足を踏み入れてグリップを失い、リアが滑り始めてスピンを喫しました。あんなことを自分がしたなんて、信じられません。完全に自分のミスです」
その後は集団の間を彷徨うようにして佐藤琢磨は17位でフィニッシュ、極めて残念な結果に終わった。しかし、少なくともシーズン最終戦のソノマに向けてはいい兆候になったといえないこともない。なお、カリフォルニアのサーキットでは間もなくテストが行われることになっている。
「僕たちのパフォーマンスは示すことができました。決して最速だったわけではありませんが、僕たちはコンペティティブで、多くのポイントを獲得できる程度には強力でした。これはとてもいいサインです。ソノマでは是非、反撃に転じたいですね。テストも予定されているので、速いクルマを作ることに集中したいと思います。このサーキットでは、昨年も僕たちはいい戦いができたので……」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー
待望久しかったインディカー・シリーズのワトキンス・グレン戦が開催された。インディカーがこの地を訪れるのは6年ぶりのこと。ここでNo.14 AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダを駆る佐藤琢磨は後方グリッドから8番手まで挽回し、トップ6が狙えそうな展開となりながら、スピンしてそのチャンスを失うというドラマチックなレースを演じた。
ニューヨーク州の緑多いサーキットで事前のテストに参加しなかったのはAJフォイト・レーシングだけ。しかも、このコースは路面の再舗装を行ったばかりで、エンジニアにとってもドライバーにとっても手がかりとなるような情報はないも同然だった。
ちなみに佐藤琢磨はここで2010年に1度だけレースを戦ったことがあるが、チームメイトのジャック・ホークスワースにとっては初めてのイベントとなった。
「ただし、エンジニアたちは入念に準備してくれました」と佐藤琢磨は語る。「また、ホンダ・パフォーマンス・デベロップメントからは必要なデータが提供され、これもとても役に立ちました。最初のプラクティスでは初期のセッティングに集中しましたが、時間はとても短いものでした。そして僕はワトキンス・グレンがどれほどチャレンジングなコースであるかを再発見しました。僕はこのサーキットが本当に好きです。コーナーに進入するときのスピードは、普通のサーキットに比べると信じられないくらい速いので、とにかく自信を持っていないと走れません」
「再舗装が行われたことで、前回インディカー・サースが開催されたときに比べるとラップタイムは5秒か6秒ほど速くなっていたので、走っているときの感覚はまったくの別物でした! 施設はアメリカのサーキットとしてはベストなもののひとつですし、路面のスムーズさに関していえば並ぶものがありません。とりわけ路面はスパ-フランコルシャンを思い起こさせるほどスムーズで、完全にF1スペックのサーキットだといえます。きっと、誰もがこのコースでの走りを楽しんだと思います」
「すべてのコーナーは横Gが3.5Gから4Gに達し、なかには4Gを越えるコーナーもありました。こうなると肉体的にも厳しく、何人かのドライバーは首が痛いといっていました。まるで速かった時代のF1のようです!」
合計2時間で行われたプラクティスにおいて、佐藤琢磨は最初のセッションで14番手、次のセッションでは12番手に浮上した。「運のいいことに、通常のイベントよりもセッションは長めに設定されていました。唯一の制約はタイヤの使用本数に制限がかかっていることだけです。だから、かなり恵まれた環境だったわけですが、それでもモータースポーツの世界ですべてのことをやり尽くそうとすると、どんなに時間があっても十分ということはありません! リザルトを見ただけでは、僕たちがどれだけ速さに満足していたかはわからないでしょうが、確実にトップとの差を詰めていることは実感していました」
土曜日に行われた最後のプラクティスでは、路面コンディションが改善されたこともあってチームはさらなる前進を果たし、佐藤琢磨は15番手のタイムをマーク。予選に向けて自信を抱いていたが、期待されたような結果を残すことなく、最後尾の22番グリッドからスタートすることが決まる。
「細かなトラブルがいくつか起きました。予選でトップ10に入る自信があり、僕たちは予選中のタイヤ戦略について検討しました。コースの全長が長いので、時間内に走行できる周回数は少なくなります。そこで最初のセグメントでは、硬めのブラック・タイヤを装着してからレッド・タイヤに交換するのではなく、最初からレッド・タイヤで走り始めたほうが好ましいと考えられました。フリープラクティスでは、ブラック・タイヤでもグレイニングやブリスターの兆候が見られましたが、僕自身はグループ2から参加することが決まっていた予選では、最初からレッド・タイヤを履いてグループ1の予選に挑んだドライバーが路面コンディションの改善に助けられてタイムをぐんぐんと縮めていく様子を目の当たりにしました。そこで、僕たちも同じ戦略で挑むことを決めました」
「不運にも、このとき僕のHANSデバイスは正しい位置に装着されていませんでした。こんなことは初めてでしたが、安全確認の為にピットストップを行い、これでインラップとアウトラップの時間をロスすることになりました。これですべてが終わりになったわけではありませんが、余裕のない展開となったのは事実です。それでも、レッド・タイヤでいい感触を掴んだ僕はアタックを開始します。セクタータイムはコンペティティブなもので、走行中のペースからラップタイムを予測するシステムがあるのですが、それによると、2番手に位置していたとエンジニアは教えてくれました。しかし、僕はミスを犯してスピンを喫します。あとになってクルマに小さな問題があったことが確認されましたが、あれはコントロールできたかもしれないと思うと、悔しくて仕方ありません。メカニックたちには本当に申し訳ないことをしてしまったと思います」
これで佐藤琢磨はグリッドの最後尾に並ぶことになったが、好スタートを決めると、カオスに陥ったオープニングラップでライバルたちを次々とパスし、6つポジションを上げることに成功する。
「コーナーはどれも高速かつ大きく曲がり込むレイアウトなので、ヘビーブレーキングを行う場所がなく、オーバーテイクは簡単ではありません。このため、1コーナーには3ワイドや4ワイドとなって進入し、順位を上げようとするのが一般的です。僕は隊列の最後方にいたので、アクシデントに巻き込まれないように気をつけながら、いくつか順位を上げることができました」
佐藤琢磨が最初のピットストップを指示されたのは8周目という早い段階。これは他のドライバーたちとは異なるピット戦略を選択したことを意味しており、その成果はレース終盤に現れるはずだった。佐藤琢磨のマシンは好調だったが、それでもワトキンス・グレンでライバルをオーバーテイクするのは容易ではなく、したがって戦略を駆使するのが順位を上げるうえではもっともいい方法なのである。レースの大半を佐藤琢磨は15番手ないし16番手で周回していたが、他のドライバーがピットインしたときには順位を上がられると期待された。実際、60周のレースの32周目には3番手まで浮上。そして佐藤琢磨自身が最後から2番目となるピットを行うと15番手に後退した。そして39周目にウィル・パワーがクラッシュし、今回のレースを決定づけることになるイエローが提示されると、佐藤琢磨は2番手へと返り咲いたのである。
ほとんどのドライバーがここでピットインし、フィニッシュまで走り続ける戦略を選択したが、カルロス・ムニョスと佐藤琢磨はステイアウトを決め込んだ。これでムニョスはトップ、佐藤琢磨は2番手に浮上したものの、ふたりはもう1度ピットストップを行わなければならない。レースは43周目に再開、佐藤琢磨はトップを目指して戦い続けた。
「僕たちはダウンフォースの設定がややコンサバティブで、空気抵抗が大きいように感じられました。このため、バスストップ・シケインに向かうところでスピードは伸び悩み、ギア設定もショートだった為にエンジンが回りきってしまい、難しい状況でした。僕はスリップストリームとプッシュ・トゥ・パスを使いましたが、スリップストリームから抜け出すと空気の壁に突き当たり、まるで減速するように感じられます。さらにカルロスは信じられないくらいのレイトブレーキを繰り出しました。コーナーでは僕をアウト側に押し出すようにして、コースのギリギリのところまで追いやられました。このとき縁石を乗り越え、いくつか順位を落とすこととなります」
「それでもチームがいい戦略を考え出してくれました。このときのイエローは本当にクリティカルなタイミングだったのです。この後、燃費走行で走り続ければフィニッシュまでたどり着けないこともありませんでしたが、それは極めてリスキーでした。もしも僕たちがほかのドライバーと同じ戦略を選んでいたら、燃費走行をしながら1周あたり1台をオーバーテイクしなければならなかったでしょう。ただし、ライバルたちの少なくとも半分はもう1度ピットインすることがわかっていたので、これはいい判断でした」
残り12周となったところで、佐藤琢磨は最後のピットストップを実施。ムニョスは1周あとでこれに続いた。佐藤琢磨はコロンビア人ドライバーを素早くパスすると15番手に浮上。その後は駆け上がるようにして順位を上げていった。
「僕はアタックを繰り返しました。これは最高に楽しかったです。何人かのドライバーはギリギリまで燃料をセーブしながら走っていたため、ラップタイムは3秒も遅くなっていました。けれども僕はレッド・タイヤを履いてプッシュし続けます。マシンはやや不安定な状況でしたが、僕は残り周回数が減っていくのを数えていました。トップ10、トップ8……。ある周回では、バスストップの進入で1度に2台をパスしました。ライアン・ハンター-レイがRCエナーソンをオーバーテイクしようとしてスリップストリームから抜け出したとき、ふたりの間に飛び込んだのです。あれは本当に楽しかったです!」
ファイナルラップの1周前、佐藤琢磨がアレクサンダー・ロッシをパスして8番手となったところで悲劇は起きた。
「ちょっと欲張りすぎたのかもしれません。僕はついに7番手となり、シモン・パジェノーの背後につきました。いまになってみれば、僕のあのスピードでは次のストレートまで待つべきだったといえますが、あと2周で次のグループに追いつくためには、できるだけ早くオーバーテイクしたかったのです。ターン7でパジェノーはデフェンス気味の動きを見せたので、ターン8で彼をオーバーテイクすべく、マシンを大きく振ってスロットルを早めに開けました。ところが、僕は路面の汚れた部分に足を踏み入れてグリップを失い、リアが滑り始めてスピンを喫しました。あんなことを自分がしたなんて、信じられません。完全に自分のミスです」
その後は集団の間を彷徨うようにして佐藤琢磨は17位でフィニッシュ、極めて残念な結果に終わった。しかし、少なくともシーズン最終戦のソノマに向けてはいい兆候になったといえないこともない。なお、カリフォルニアのサーキットでは間もなくテストが行われることになっている。
「僕たちのパフォーマンスは示すことができました。決して最速だったわけではありませんが、僕たちはコンペティティブで、多くのポイントを獲得できる程度には強力でした。これはとてもいいサインです。ソノマでは是非、反撃に転じたいですね。テストも予定されているので、速いクルマを作ることに集中したいと思います。このサーキットでは、昨年も僕たちはいい戦いができたので……」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー