佐藤琢磨、20番グリッドからの復活劇 「笑顔がこぼれた」
佐藤琢磨が、インディカー 第12戦 トロントのレース週末を振り返った。
結果的に佐藤琢磨はベライゾン・インディカーシリーズのトロント戦で5位入賞を果たし、去る4月に行われたロングビーチ・グランプリと並ぶ今シーズン・ベストの成績を残した。
それは素晴らしい週末の締めくくり方だったが、No.14AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダの悪い流れを変えるのに必要ないささかの幸運にも恵まれたのも事実。
「最終的にはいい週末になりましたが、ある時点ではちょっとした心配もしていました」 佐藤琢磨もそう語っている。
今年もトロントで開催された市街地レースにおいて、先ごろ開発されたばかりのセッティングを採り入れた佐藤琢磨は走り始めから好調だった。このためには、ピットレーンがアウトサイドに移設され、コース終盤のターン9、10、11がモディファイされた新しいコースレイアウトに適合することも必要だった。
「新しいピットレーンを建設するために、オフィシャルはターン9、10、11にコンクリートウォールを築き、コース幅を半分ほどにしてしまいました。かつてピットレーンとして使われていた部分はレースコースとなっています。おかげでずっとタイトなうえにコース幅が狭く、とてもツイスティーなセクションに生まれ変わりました。以前はターン9が70mph(約112km/h)、ターン10は80mph(約128km/h)、ターン11は100mph(約160km/h)で通過していましたが、コーナリングスピードは大幅に低下しています。さらに、ターン9の中央にはコンクリート・パッチが作られ、とても滑りやすくなりました。右コーナーのターン10には大きなバンプが生まれたうえ、5度から7度ほどのひどい逆バンクとなった影響で、進入ではアンダーステアが出やすくなり、出口付近ではトラクションがかかりづらいコーナーとなりました。ターン11は複合コーナーで、奥に行くにしたがってコーナーはきつく、そして幅は狭くなります。プラクティスでふたりのドライバーがここでアクシデントを起こした際には、ウォールの間でまるでピンポンのようにマシーンは跳ね返されていました。さらにはサポートレースでも事故が起きていたので、ここには何かしらの問題が潜んでいると僕たちは考えるようになりました」
しかし、佐藤琢磨は高い戦闘力を発揮、最初のフリープラクティスで4番手となる。続く2回目のセッションでは14番手になったものの、まったく心配はしていなかった。
「セッション開始直後はトップ3に入っていて、マシーンも好調。4番手という結果にも勇気づけられました。2回目のセッションでもセッティングを煮詰めていきましたが、途中で赤旗が提示されます。当初はセッションの最後にニュータイアを装着する予定でしたが、複数の赤旗の影響でテストメニューの一部を割愛し、比較テストを行うために使い古した1セットのタイアを履き続けました。僕たちにスピードがあることは、このときすでにわかっていました」
ところが、土曜日のプラクティスを迎えると状況は悪化し始めてしまう。佐藤琢磨は当初トップ5に食い込んでいたが、「やがてマシーンのバランスに問題が生じ始め、十分なグリップが得られなくなりました。ラップタイムは一向に速くならず、タイアのドロップオフが限界ではないかと僕たちは疑いました。そこでニュータイアを装着してベースラインを取り直そうとしましたが、驚いたことに古いタイアと大して変わらないタイムしかマークできません。何が原因か、まるでわかりませんでした。しかも、このコースの路面は場所によって様々なため、攻めすぎるとタイムが伸び悩み、それ以上、速く走れなくなってしまうのです」
「僕たちは手持ちのリソースを使い果たしてしまったので、予選にはおそらくこれがいいだろうと思われるセッティングで臨みました。けれども、これでもうまくいきません。アンダーステアがひどいうえに、スナップ・オーバーも頻繁に顔を出します。まったく出口が見えない状態で、あれほど好調だったデイ1の次にこんな日がやってきたことが信じられないほどでした」
予選を20位で終えた佐藤琢磨のマシーンには、なんらかの作業を行う必要があった。チームはフロントウィングがストールして十分なダウンフォースを発生していない可能性を見いだす。つまり、メカニカルなセッティングとエアロのセッティングがマッチしていなかったのだ。さらに、ダンパーのひとつにもトラブルがあったことが判明。そして直観に頼ることなく、最初のセッティングに戻すことを決断する。通常、アンダーステアを解消するには、フロントのスプリングを軟らかくしてバランスをリア寄りにするものだが、今回実施されたのは、フロントを固めてより大きなエネルギーを生み出すというもの。バンプが多いトロントでは、このセットアップが効果的なのだ。
「アンダーステアの度合いは変わりませんが、フロントがしっかりと支持されるようになった結果、よりブレーキングを攻め込むことができ、安定するようになりました。おかげで僕たちは速くなりました。これはマシーンのパフォーマンスとサーキット環境のコンビネーションによるものであり、フロントのライドハイトをどうコントロールするかに関わることです」
最後のプラクティスで佐藤琢磨はトップとわずか0.145秒差で6番手となる。状況は好転し始めたのだ。
レースが始まると、序盤にしていくつかのイエローが提示されたため、佐藤琢磨は16番手に浮上。さらにグリーン中にアレクサンダー・ロッシをオーバーテイクして15番手へと駒を進める。「この種のコースでは、長いサバイバルレースになることが往々にしてあります。85ラップのレース中、フルコーションは平均して20ラップにもなるのです! だから、もしもポジションを上げるチャンスがあれば素晴らしいことですが、かりにそうでなかったとしても心配する必要はありません」
プライマリーのブラックタイアでスタートした佐藤琢磨は、続くふたつのスティントを柔らかめのレッドタイアで走行する予定だったが、通常とは異なる試みによって状況をさらに改善することを目指し、早めにピットストップする戦略が検討された。そしてピットストップの際にレッドタイアを装着したところ、ラップタイムが向上する。これが45ラップ目にイエローが提示される前のことだった。
「ここが分岐点となりました。レースの残りは40ラップ、ただし1度に給油できる燃料の量は最大でも30ラップ分しかありません。したがって40ラップの連続走行は現実的ではありませんが、途中でイエローが提示されれば可能になるかもしれません。それは試してみる価値のあるギャンブルでした」
「レッドタイアは20周目を過ぎるとデグラデーションが起きるので、ラリー・フォイトが無線で『残り40ラップだ』と伝えてきたときには、冗談だろうと思いました! それでも、まずはやってみることにしましたが、そのためにはブラックタイアが必要で、イエロー中も燃料をセーブすることにしました。僕がノーマルのマッピングを使ったのはリスタートのターン3までで、その後はミクスチャーを薄くし、徹底的に燃料をセーブしながら走りました」
「使える燃料は驚くほどわずかでしたが、それを守らなければならず、いっぽうでチームは順位を落とすなと指示してきました。もう、まるで信じられないような状況です。けれども、これも素晴らしいチャレンジですし、こういうことが僕は嫌いではありません」
次にイエローが提示されるまの間には、結果的にこのレースで3位に入るジェイムズ・ヒンチクリフとバトルを演じる一幕もあった。前方を走るマシーンがピットインを行うと、佐藤琢磨は自分が4番手まで浮上していることに気づく。
「僕の前にいたのはトニー・カナーン、ウィル・パワー、ヒンチクリフの3名だけだったので、ヘルメットのなかで笑顔がこぼれました。ただし、燃料は相変わらず不足していました」
続くリスタートではエリオ・カストロネヴェスから猛チャージを受ける。
「とても厳しい戦いでしたが、10ラップ以上は彼を抑え続けました。パドックでもっともリスペクトされているエリオとのバトルは本当に楽しいもので、コース上のバトルで彼との間に問題が起きたことはこれまで一度もありません。そして3度目のアタックで、エリオは僕を追い抜いていきました」
レース終盤にはカナーンがスプラッシュ&ゴーを実施、ミカエル・アレシンの猛攻を受ける佐藤琢磨の直前でコースに復帰した。
「彼はとてもアグレッシブで、何度もサイド・バイ・サイドになりました。一度、ターン3で完全に追い抜かれたこともありましたが、僕はインサイドにいたので、“スーパーレイト・ブレーキング”で順位を守り抜きました。何度か軽い接触もしましたが、心配すべきダメージはひとつもありませんでした」
待望のイエローが提示されたのはレースが最終盤に入ってからのこと。そして、信じられないような低燃費で走り続けた佐藤琢磨は、ファイナルラップに入ったところでカナーンへのアタックを開始する。
「残り1周で、まだプッシュ・トゥ・パスが5回分残っていたので、できる限りこれを使おうと思いました。僕はバツグンのリスタートを切り、ターン1に進入するときはカナーンのまさに直後につけていました。ターン2からの脱出も完璧に決まったところでプッシュ・トゥ・パスのボタンを押しましたが、僕は最悪のタイミングでオーバーブーストの問題を抱えることになります。これまでの84周、なにひとつ問題はなかったのに、ここで起きたのです。ある状況下で、エンジン回転を低く抑えたままスロットルペダルを踏み続けると、この種のトラブルが発生するのです。オーバーブーストはエンジンのパワーを制限します。僕の視界からはTKが徐々に遠ざかっていきましたが、幸いにも後から追ってくるドライバーはいませんでした」
「それでも、20番グリッドから5位でフィニッシュするなんて誰にも想像できなかったはずです。ピットストップを含め、チームの働き振りは本当に素晴らしいものでした! ラリーと僕のエンジニアは素晴らしい判断を下すとともに、苦戦した予選の後で素晴らしいマシーンを作り上げてくれました。イエローが出たことはラッキーでしたが、これまで何度も不運を経験してきたので、今回くらいはいいでしょう」
次戦は2週間後に開催されるミドオハイオ戦で、今週の後半にはこのコースでテストを行なう予定になっている。ロードアメリカで強い手応えを掴んだ佐藤琢磨は、このレースを楽しみにしているようだ。
「このコースでも僕たちのセッティングは最高のパフォーマンスを発揮してくれるはずなので、僕たちの奮闘を見届けて欲しいと思います。テストでどんな成果が得られるのか、いまから楽しみで仕方ありません」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー
結果的に佐藤琢磨はベライゾン・インディカーシリーズのトロント戦で5位入賞を果たし、去る4月に行われたロングビーチ・グランプリと並ぶ今シーズン・ベストの成績を残した。
それは素晴らしい週末の締めくくり方だったが、No.14AJフォイト・レーシング・ダラーラ・ホンダの悪い流れを変えるのに必要ないささかの幸運にも恵まれたのも事実。
「最終的にはいい週末になりましたが、ある時点ではちょっとした心配もしていました」 佐藤琢磨もそう語っている。
今年もトロントで開催された市街地レースにおいて、先ごろ開発されたばかりのセッティングを採り入れた佐藤琢磨は走り始めから好調だった。このためには、ピットレーンがアウトサイドに移設され、コース終盤のターン9、10、11がモディファイされた新しいコースレイアウトに適合することも必要だった。
「新しいピットレーンを建設するために、オフィシャルはターン9、10、11にコンクリートウォールを築き、コース幅を半分ほどにしてしまいました。かつてピットレーンとして使われていた部分はレースコースとなっています。おかげでずっとタイトなうえにコース幅が狭く、とてもツイスティーなセクションに生まれ変わりました。以前はターン9が70mph(約112km/h)、ターン10は80mph(約128km/h)、ターン11は100mph(約160km/h)で通過していましたが、コーナリングスピードは大幅に低下しています。さらに、ターン9の中央にはコンクリート・パッチが作られ、とても滑りやすくなりました。右コーナーのターン10には大きなバンプが生まれたうえ、5度から7度ほどのひどい逆バンクとなった影響で、進入ではアンダーステアが出やすくなり、出口付近ではトラクションがかかりづらいコーナーとなりました。ターン11は複合コーナーで、奥に行くにしたがってコーナーはきつく、そして幅は狭くなります。プラクティスでふたりのドライバーがここでアクシデントを起こした際には、ウォールの間でまるでピンポンのようにマシーンは跳ね返されていました。さらにはサポートレースでも事故が起きていたので、ここには何かしらの問題が潜んでいると僕たちは考えるようになりました」
しかし、佐藤琢磨は高い戦闘力を発揮、最初のフリープラクティスで4番手となる。続く2回目のセッションでは14番手になったものの、まったく心配はしていなかった。
「セッション開始直後はトップ3に入っていて、マシーンも好調。4番手という結果にも勇気づけられました。2回目のセッションでもセッティングを煮詰めていきましたが、途中で赤旗が提示されます。当初はセッションの最後にニュータイアを装着する予定でしたが、複数の赤旗の影響でテストメニューの一部を割愛し、比較テストを行うために使い古した1セットのタイアを履き続けました。僕たちにスピードがあることは、このときすでにわかっていました」
ところが、土曜日のプラクティスを迎えると状況は悪化し始めてしまう。佐藤琢磨は当初トップ5に食い込んでいたが、「やがてマシーンのバランスに問題が生じ始め、十分なグリップが得られなくなりました。ラップタイムは一向に速くならず、タイアのドロップオフが限界ではないかと僕たちは疑いました。そこでニュータイアを装着してベースラインを取り直そうとしましたが、驚いたことに古いタイアと大して変わらないタイムしかマークできません。何が原因か、まるでわかりませんでした。しかも、このコースの路面は場所によって様々なため、攻めすぎるとタイムが伸び悩み、それ以上、速く走れなくなってしまうのです」
「僕たちは手持ちのリソースを使い果たしてしまったので、予選にはおそらくこれがいいだろうと思われるセッティングで臨みました。けれども、これでもうまくいきません。アンダーステアがひどいうえに、スナップ・オーバーも頻繁に顔を出します。まったく出口が見えない状態で、あれほど好調だったデイ1の次にこんな日がやってきたことが信じられないほどでした」
予選を20位で終えた佐藤琢磨のマシーンには、なんらかの作業を行う必要があった。チームはフロントウィングがストールして十分なダウンフォースを発生していない可能性を見いだす。つまり、メカニカルなセッティングとエアロのセッティングがマッチしていなかったのだ。さらに、ダンパーのひとつにもトラブルがあったことが判明。そして直観に頼ることなく、最初のセッティングに戻すことを決断する。通常、アンダーステアを解消するには、フロントのスプリングを軟らかくしてバランスをリア寄りにするものだが、今回実施されたのは、フロントを固めてより大きなエネルギーを生み出すというもの。バンプが多いトロントでは、このセットアップが効果的なのだ。
「アンダーステアの度合いは変わりませんが、フロントがしっかりと支持されるようになった結果、よりブレーキングを攻め込むことができ、安定するようになりました。おかげで僕たちは速くなりました。これはマシーンのパフォーマンスとサーキット環境のコンビネーションによるものであり、フロントのライドハイトをどうコントロールするかに関わることです」
最後のプラクティスで佐藤琢磨はトップとわずか0.145秒差で6番手となる。状況は好転し始めたのだ。
レースが始まると、序盤にしていくつかのイエローが提示されたため、佐藤琢磨は16番手に浮上。さらにグリーン中にアレクサンダー・ロッシをオーバーテイクして15番手へと駒を進める。「この種のコースでは、長いサバイバルレースになることが往々にしてあります。85ラップのレース中、フルコーションは平均して20ラップにもなるのです! だから、もしもポジションを上げるチャンスがあれば素晴らしいことですが、かりにそうでなかったとしても心配する必要はありません」
プライマリーのブラックタイアでスタートした佐藤琢磨は、続くふたつのスティントを柔らかめのレッドタイアで走行する予定だったが、通常とは異なる試みによって状況をさらに改善することを目指し、早めにピットストップする戦略が検討された。そしてピットストップの際にレッドタイアを装着したところ、ラップタイムが向上する。これが45ラップ目にイエローが提示される前のことだった。
「ここが分岐点となりました。レースの残りは40ラップ、ただし1度に給油できる燃料の量は最大でも30ラップ分しかありません。したがって40ラップの連続走行は現実的ではありませんが、途中でイエローが提示されれば可能になるかもしれません。それは試してみる価値のあるギャンブルでした」
「レッドタイアは20周目を過ぎるとデグラデーションが起きるので、ラリー・フォイトが無線で『残り40ラップだ』と伝えてきたときには、冗談だろうと思いました! それでも、まずはやってみることにしましたが、そのためにはブラックタイアが必要で、イエロー中も燃料をセーブすることにしました。僕がノーマルのマッピングを使ったのはリスタートのターン3までで、その後はミクスチャーを薄くし、徹底的に燃料をセーブしながら走りました」
「使える燃料は驚くほどわずかでしたが、それを守らなければならず、いっぽうでチームは順位を落とすなと指示してきました。もう、まるで信じられないような状況です。けれども、これも素晴らしいチャレンジですし、こういうことが僕は嫌いではありません」
次にイエローが提示されるまの間には、結果的にこのレースで3位に入るジェイムズ・ヒンチクリフとバトルを演じる一幕もあった。前方を走るマシーンがピットインを行うと、佐藤琢磨は自分が4番手まで浮上していることに気づく。
「僕の前にいたのはトニー・カナーン、ウィル・パワー、ヒンチクリフの3名だけだったので、ヘルメットのなかで笑顔がこぼれました。ただし、燃料は相変わらず不足していました」
続くリスタートではエリオ・カストロネヴェスから猛チャージを受ける。
「とても厳しい戦いでしたが、10ラップ以上は彼を抑え続けました。パドックでもっともリスペクトされているエリオとのバトルは本当に楽しいもので、コース上のバトルで彼との間に問題が起きたことはこれまで一度もありません。そして3度目のアタックで、エリオは僕を追い抜いていきました」
レース終盤にはカナーンがスプラッシュ&ゴーを実施、ミカエル・アレシンの猛攻を受ける佐藤琢磨の直前でコースに復帰した。
「彼はとてもアグレッシブで、何度もサイド・バイ・サイドになりました。一度、ターン3で完全に追い抜かれたこともありましたが、僕はインサイドにいたので、“スーパーレイト・ブレーキング”で順位を守り抜きました。何度か軽い接触もしましたが、心配すべきダメージはひとつもありませんでした」
待望のイエローが提示されたのはレースが最終盤に入ってからのこと。そして、信じられないような低燃費で走り続けた佐藤琢磨は、ファイナルラップに入ったところでカナーンへのアタックを開始する。
「残り1周で、まだプッシュ・トゥ・パスが5回分残っていたので、できる限りこれを使おうと思いました。僕はバツグンのリスタートを切り、ターン1に進入するときはカナーンのまさに直後につけていました。ターン2からの脱出も完璧に決まったところでプッシュ・トゥ・パスのボタンを押しましたが、僕は最悪のタイミングでオーバーブーストの問題を抱えることになります。これまでの84周、なにひとつ問題はなかったのに、ここで起きたのです。ある状況下で、エンジン回転を低く抑えたままスロットルペダルを踏み続けると、この種のトラブルが発生するのです。オーバーブーストはエンジンのパワーを制限します。僕の視界からはTKが徐々に遠ざかっていきましたが、幸いにも後から追ってくるドライバーはいませんでした」
「それでも、20番グリッドから5位でフィニッシュするなんて誰にも想像できなかったはずです。ピットストップを含め、チームの働き振りは本当に素晴らしいものでした! ラリーと僕のエンジニアは素晴らしい判断を下すとともに、苦戦した予選の後で素晴らしいマシーンを作り上げてくれました。イエローが出たことはラッキーでしたが、これまで何度も不運を経験してきたので、今回くらいはいいでしょう」
次戦は2週間後に開催されるミドオハイオ戦で、今週の後半にはこのコースでテストを行なう予定になっている。ロードアメリカで強い手応えを掴んだ佐藤琢磨は、このレースを楽しみにしているようだ。
「このコースでも僕たちのセッティングは最高のパフォーマンスを発揮してくれるはずなので、僕たちの奮闘を見届けて欲しいと思います。テストでどんな成果が得られるのか、いまから楽しみで仕方ありません」
カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨 / インディカー