佐藤琢磨
佐藤琢磨が、インディ500のレース週末を振り返った。

佐藤琢磨は、IZODインディカー・シリーズのポイントリーダーとして伝統的な「マンス・オブ・メイ」を迎え、AJフォイト・レーシングのダラーラ・ホンダを駆り、13位でレースを終えた。インディ500に通算4回出場した佐藤琢磨にとってこれは過去最高の成績であり、ここから連続週で集中的にレースが開催されるシーズン中盤戦にマルコ・アンドレッティに続くチャンピオンシップ2位で突入することになる。

インディ500で4度の優勝という伝説的な記録を持つフォイトのチームに所属しているだけでも多くの関心を集めたが、さらに琢磨はポイントリーダーでもあったことから、その注目度は否が応にも高まった。

「本当に心地よい気分でした」と佐藤琢磨はコメント。

「たくさんのファンに応援してもらい、いたるところで名前を呼んでもらいました。AJのチームの一員としてインディにやってきたことで、とても心強い気持ちになれました。メディアの取材やスポンサー・イベントもたくさんあって大忙しでした!」

佐藤琢磨は、プラクティスが始まった当初から全長2.5マイル(約4km)のトラックで力強い走りを示した。

「開幕当初からエキサイティングなシーンがたくさんあったので、僕たちは大きな期待を抱いてインディにやってきました。勢いもありましたが、新しいチャレンジに向けて気持ちを切り替える必要がありました。僕たちはロードコースや市街地コースでは強力でしたが、今回はオーバル、それもインディ500という、これまでとはまったく違う環境で戦うことになるのです」

「昨年、チームがダラーラDW12に用いていたセッティングをベースにし、そこから開発を進めていくことにしました。チームは本当にやる気満々で、一致団結して仕事に取り組んでいました」

「天候はまずまず安定していたので、作業は順調に進み、セットアップがどんな働きをするかも確認できました。1日だけちょっと間違った方向に進んだ日がありましたが、それを除けば毎日、期待のできる状況が続いていました」

予選を迎えると、ホンダ・ユーザーはトップ9にひとりも食い込めず、2012年と同じようにシボレー・ユーザーがアドバンテージを有していることが明らかになる。佐藤琢磨は18位となり、インディ500ウィナーでインディカー・シリーズ・チャンピオンに輝いたこともあるスコット・ディクソンやダリオ・フランキッティ(ともにホンダ・ユーザー)と並ぶ6列目グリッドからスタートすることになった。

「予選でトップ9に入れなかったのは残念でした」

「けれども、チップ・ガナッシ勢と同じ6列目グリッドだったことは興味深いと思います。僕たちはなにひとつミスを犯しませんでした。できることはすべてやりきったのです」

「翌日のバンプデイで、僕はついに大きなパックとなった集団のなかで走ることができました。僕たちは、たとえば5台をエントリーするアンドレッティ・チームが常に集団走行を行っていたような贅沢なことを、これまでのプラクティスでは経験できなかったので、これはとても重要でした。自分たちに欠けている領域がどこなのかを確認できて、とてもよかったと思います。なにしろ、混雑した状況で起きる激しいタービュランスのなかでマシーンがどうなるかを、それまでは知る手立てがなかったのです」

「それまでのマシーンの仕上がりは良かったのですが、トラフィックのなかでのフィーリングに関しては不満が残りました。スタビリティをもっと向上させると同時に、しっかりと向きが変わるマシーンに仕立てる必要がありましたが、これはセッティングを変更することでうまく対応できました。この作業は決勝レース2日前の金曜日に行われるカーブデイまで続きました。あとほんの少しだけ仕上げたいところでしたが、まずまずのレベルまで到達していると思われました」

だが、このような状況はレースでも変わらなかった。

「(最終ラップに優勝を賭けてフランキッティにアタックし、残念ながらクラッシュに終わった)昨年に比べると、予選順位はひとつ上がっています。けれども、僕のイン側にガナッシの2台が並んでいるのは、なかなか面白いと思いました。アンドレッティ・オートスポーツは本当に強そうで、チーム・ペンスキーの速さは群を抜いていました。DW12で戦う初年度となった昨年、おそらくどのチームもそこまでのスピードには達していなかったのでしょうが、今年は誰もがコンペティティブになっているようでした」

「僕のスタートに特別な部分はありませんでした。いくつかポジションを落としましたが、徐々に順位を取り戻していきました。それは、いつもどおりチャレンジングな戦いでしたが、順位を上げていくのは楽しいものです。ピットストップでのメカニックたちは素晴らしい仕事をしてくれて、僕を大いに助けてくれました。僕はチャージを開始し、一時は6番手まで浮上しました。この時点ではホンダ・ユーザーのトップで、これには非常に勇気づけられましたが、それ以上順位を上げるのは難しそうにも思えました。僕の前を走るマシーンはどれも非常に速く、追い越すのは至難の業のように思えたのです」

そして、佐藤琢磨はカルロス・ムニョスをパスしようとして失敗に終わり、スピンを喫して大きく遅れた。

「カルロスのラインは非常に興味深いものでした。彼はコースのインサイドにある白線のさらに内側を走るくらい、コーナーを小さく曲がっていたのです。通常、誰かの後ろを走行するときは、そのドライバーの少しイン側を覗くようにラインを取り、ターンインも前のマシーンより早めに行います。さもないとフロントウィングに風が当たらず、巨大なアンダーステアを招きかねないからです」

「けれども、カルロスはバンクの下の方を走っているため、ノーズをイン側に覗かせるのはとても難しい状況でした。そこで僕はバンクの上側に上がり、アウト側のラインを狙いましたが、ターンの出口で彼もバンクの上側に上がってきたため、僕はエアを失う形となりました。これで大きくダウンフォースを削られたマシーンは不安定になり、激しいタイヤの摩耗ですでにグリップの確保に苦労していたリアが限界に達してしまい、最終的にスピンしてしまったのです」

「ただし、幸いにもどこにもマシーンを当てずに済んだので、そのままレースを続けることができました。ここでラリー・フォイトが好判断を示したおかげで僕らは周回遅れになることを免れ、リードラップに留まることができましたが、29番手までポジションを落としたうえに、行わなければいけない作業もいくつか抱えてしまう状態でした」

最終的にリアタイアにブリスターが発生してそれ以上順位を上げられなくなるまで奮闘した結果、佐藤琢磨はトップ20まで追い上げた。

「この頃からとても苦しくなり、問題を解決するまでには2スティントか3スティントが必要な状況となります。とても辛い展開でした」

グリップがひどく低下したために予定よりも早くピットストップを行った佐藤琢磨は、他のドライバーとはピットストップのタイミングがずれる形となった。

「トップグループとはちょうどハーフ・スティントくらいずれている状況でした。これは非常にいい結果をもたらす可能性もありましたが、残念ながらそうはなりませんでした」

佐藤琢磨にとって不運だったのは、この後、ほとんどフルコースコーションにならなかったことにある。このため、トニー・カナーンは記録を塗り替える平均スピードで栄冠を勝ち取ることとなった。

「残り数周となったところでリスタートとなりましたが、順位を取り戻すのは遅すぎました。今日はたくさんのライバルたちをオーバーテイクしましたが、それでも結果は13位でした。いい1日になるように思われたものの、結果的にそこから多くのことを学び、またもやインディアナポリス・モーター・スピードウェイでいい経験を積むことになりました。来年、ここに戻ってくるのが待ちきれない気分です!」

「TK、ジミー、そしてKVレーシング・チームのみんなには心からおめでとうと申し上げます。彼らがウィニングサークルで喜んでいる姿を見るのは、僕にとっても嬉しいことでした」

ここからインディカー・シリーズは毎週のようにレースが開催される時期を迎えるが、その手始めとなるのが今週、デトロイトの市街地コースで行われるダブルヘッダー・レースである。

「“500”は信じられないようなレースです。そこで2週間半を過ごしたかと思うと、僕たちは荷物をまとめて、そのままデトロイトに向かわなければいけない。これは大変な作業ですが、デトロイトに行くのは楽しみです。ここから僕はチャンピオンシップに集中しながら戦っていくことになります」

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カテゴリー: F1 / 佐藤琢磨