角田裕毅12位完走 2025年F1カナダGP決勝レポート

レッドブルが投入したアップグレードパッケージの初陣となったモントリオール。角田裕毅にとっても新仕様のマシンに順応する難しい週末となったが、決勝ではクリーンな戦略とタイヤマネジメントで着実に順位を上げ、収穫のある一戦となった。
レースはマクラーレン同士の接触による終盤のセーフティカー導入もあり、展開が大きく揺れ動いたが、角田裕毅は混乱に巻き込まれることなく走行を続け、今後に向けた前進の兆しを持ち帰った。
優勝はポールポジションからレースをリードしたジョージ・ラッセル(メルセデス)。2位にマックス・フェルスタッペン(レッドブル)、3位にはF1初表彰台を獲得したメルセデスのアンドレア・キミ・アントネッリが続き、メルセデスは今季初勝利とダブル表彰台を達成した。
AS IT HAPPENED:2025年F1カナダGP 決勝レポート
予選セッションのスリリングな展開から一夜明け、ラッセルが最終ラップでフェルスタッペンをかわしてポールポジションを獲得し、2年連続でモントリオールの最前列からスタートすることになったのを受け、パドックの注目はカレンダー第10戦、70周で争われるカナダグランプリの決勝に移った。
日曜のレース開始前には、スターティンググリッドにいくつか変更が加えられた。角田裕毅は、フリー走行3回目で赤旗中にピアストリを追い越したことで11番手からグリッド最後尾に降格され、ハジャーも予選中にサインツの走行を妨害したことで3グリッド降格、9番手から12番手に下がった。
一方、ローソンとガスリーは予選でそれぞれ18番手と20番手に終わったが、パルクフェルメ中に車両に変更を加えたことで、ふたりともピットレーンスタートとなった。両者とも新しいパワーユニットを投入していた。
フォーメーションラップを前に、気温が高く晴れたグリッドにドライバーたちが並ぶ中、上位13台のうちノリス(7番手)とルクレール(8番手)を除いて全車がミディアムタイヤを装着していることが明らかになった。一方、それ以外のマシンはすべてハードタイヤを選択していた。果たしてこのレースは2ストップになるのか、それとも何台かは1ストップ戦略を成立させられるのか――。
レース開始とともに、ラッセルはポールポジションからクリーンに飛び出し、フェルスタッペンも2番グリッドから力強くスタート。3位争いでは、アントネッリがピアストリに対して早々にプレッシャーをかけ、最終的にターン3でメルセデスの新人が前に出た。

その後方では多くのアクションがあり、アルボンが元チームメイトのコラピントと争い、ウィリアムズがターン9〜10の芝生を飛び出す展開に。これによってアルボンは12番手まで後退し、ヒュルケンベルグが9位に、コラピントが10位に浮上した。
4周目には、フェルスタッペンがラッセルのDRS圏内にとどまり、メルセデスのマシンに序盤のギャップを築かせない展開に。アントネッリはフェルスタッペンから2秒遅れの3番手を走行しており、ピアストリもそれに近いギャップで4位をキープ。その後方では角田裕毅がストロールを抜いて17番手に浮上し、ハジャーはアルボンの前11番手を走行していた。
数周後には、ラッセルとフェルスタッペンの間にギャップが生まれ始め、フェルスタッペンはメルセデスのDRS圏外に後退。その一方で、無線ではタイヤに関するやりとりが目立ち始め、ピアストリは「フロントのデグラデーションはFP2より良いが、リアの方が悪い」と報告し、フェルスタッペンも「タイヤが繊細だ」と訴えた。
ノリスはトップ10の中盤で順位を上げており、アロンソをかわして6番手に浮上した。その一方でアントネッリはフェルスタッペンに迫る走りを見せていたが、フェルスタッペンは13周目にピットインし、ハードタイヤを装着して9番手でコースに復帰した。
アルボンにはパワーユニットの問題が発生しており、ウィリアムズはその兆候を注視していた。ラッセルはフェルスタッペンをマークしてその翌周にピットインし、C4タイヤに交換して6番手で復帰。何より重要なのは、フェルスタッペンの前で戻れたことだった。
これにより暫定リーダーはアントネッリとなったが、メルセデスもすぐにピットインし、フェルスタッペンの後ろで復帰。ピアストリが首位を引き継ぎ、その後ろにハミルトンとノリスが続いた。ノリスはエンジニアから「素晴らしい走りを見せろ」と鼓舞されていた。
ノリスにポジションを譲ったハミルトンはすぐにピットへ向かい、これで暫定的にマクラーレンが1-2体制に。しかし順位はすぐに再び入れ替わり、ピアストリが17周目にピットインし、アントネッリの後ろに復帰した。
別の場面では、サインツがロックアップを喫して、ウィリアムズのマシンがベアマンとボルトレトに接触しそうになる場面がリプレイで映し出された。前方では、ノリスがルクレールを抑えて20周目時点でトップを走行。どちらもまだピットインしていなかった。ラッセル、フェルスタッペン、アントネッリ、ピアストリ、ハミルトンが続いた。
このピット戦略の流れで最も順位を落としたように見えたのはハミルトンで、トラフィックに巻き込まれてしまい、前を走るピアストリから10秒も遅れる展開となった。アルボンは唯一ミディアムタイヤで走行を続けており、ウィリアムズの無線では戦略に関する議論が続いていた。
やがてアルボンは24周目にピットインし、ハードタイヤを装着して最後尾で復帰した。一方、ルクレールは無線で「プランC」を提案し、エンジニアが「プランB」も選択肢かと問いかける場面もあった。

後方ではストロールが再びハードタイヤを装着してピットイン、これにより最低2種類のタイヤ使用義務を果たす2ストップが確定。一方前方ではラッセルがルクレールをストレートで抜いて2位に浮上。
ルクレールは29周目にピットインし、同じくハードタイヤで復帰したが、「この選択が理解できない」と無線で不満を口にした。

ノリスはその翌周にピットインし、ミディアムタイヤを選択。これにより1ストップにも2ストップにも対応できる構えとなった。ルクレールは依然としてチームの判断に疑問を呈し、「タイヤはまだ持っていたのに、なぜ止まったのか」と再度問いかけた。
33周目までに上位陣すべてが1度目のストップを終え、ラッセルが再び3秒差でリードを奪い返した。2位フェルスタッペン、3位アントネッリ、4位ピアストリ、5位ノリス、6位ルクレール、7位ハミルトン。まだピットインしていないオコンとサインツが8位・9位、アロンソが10位だった。
ハミルトンは「このレースにはまったく存在感がない」と無線で嘆いていた。38周目にはフェルスタッペンが2度目のピットインを実施し、再びハードタイヤを装着して6位に復帰。

これはアントネッリが迫っていたことを受けた反応と見られ、メルセデスもアントネッリを即座にピットインさせ、再びフェルスタッペンの後ろでコース復帰。次に動いたのはラッセルで、周回遅れの渋滞を避ける形で43周目にピットイン。フレッシュなC4タイヤに履き替え、4位で復帰したが、フェルスタッペンの前という重要な位置だった。
ピアストリが暫定的に首位に立ち、ノリス、ルクレールが続いた。ピアストリは「マシンの挙動がどんどん厳しくなってきてる」と訴え、その直後にピットイン。6位で復帰し、アントネッリの後方につけた。
そのころ、ストロールとガスリーの17位争いが白熱し、アルピーヌが芝生に押し出される場面もあり、審議対象となった。
ノリスは48周目にピットインし、チームメイトの後ろでコースに復帰。その直後にアルボンがマシンをエスケープロードに停車させ、一時的に黄旗が振られた。ウィリアムズのパワーユニット問題がついに限界を迎えたかたちだった。
ストロールは先ほどのガスリーとの接触により、他車をコース外に押し出したとして10秒のタイムペナルティを受けた。一方、まだ2回目のピットを行っていないルクレールはレースをリードしていたが、ペースが急激に落ちていた。
ルクレールは再び戦略に関する無線のやり取りを行い、ミディアムタイヤへの交換を希望していた。そのころ、ピアストリはフェルスタッペンとアントネッリとの“真っ向勝負”だとチームから伝えられ、3位表彰台を懸けた三つ巴の戦いが本格化。
ルクレールは54周目にようやくピットへ入り、6位でコースに復帰。これにより、上位5台はすべて接近した状態となり、終盤の戦いが一気に緊迫していった。
アントネッリとピアストリの間では激しい攻防が始まり、マクラーレンのピアストリが3位を狙ってアタックを開始。しかしその後方からはノリスもチームメイトに接近しており、フェルスタッペンもラッセルとの差を縮めていた。
この頃、レーシングブルズのローソンがピットへ向かい、リタイア。サインツはようやくピットに入り、11位で復帰した。
ラッセルはフェルスタッペンとのギャップを一時的に広げ、残り8周の時点で再び2秒の差を築いていた。一方、ピアストリにはノリスがすぐ後ろに迫り、アントネッリに対するアタックと、自身の背後への警戒という難しいバランスが求められていた。

2台のマクラーレンは白熱のバトルを展開し、まずノリスがヘアピンで前に出る。しかしターン13ではピアストリが再びポジションを奪い返した。
ところが、その直後のストレートでノリスが再度仕掛けようとした際、ブレーキングで遅れ、ピアストリのリアに追突。これによりノリスのマシンは大きくダメージを負い、コース脇にマシンを停めてリタイアとなった。
ノリスは無線で「完全に僕の責任だ」と語り、ピアストリに謝罪した。
セーフティカーが出動し、ピアストリはこのタイミングでピットインして4位で復帰。マクラーレン勢の接触はスチュワードによってレース後に調査されることになった。
他のドライバーたちも多くがピットインを行い、セーフティカーの後方に隊列を整えた。その中で、フェルスタッペンとラッセルの間で一瞬順位が入れ替わる場面があり、ラッセルは無線でフェルスタッペンが自分を追い越したと報告。
フェルスタッペンは「ジョージが急ブレーキをかけた」と主張した。
レースは結局セーフティカー先導のままチェッカーを迎え、ラッセルがトップでフィニッシュ。自身とメルセデスにとって2025年シーズン初勝利となった。
さらに、アントネッリが3位でゴールし、チームとしてはダブル表彰台。アントネッリにとってはこれがF1初表彰台となった。

フェルスタッペンは2位で表彰台を確保し、ピアストリは4位を守ってチャンピオンシップリードを継続。5位にルクレール、6位にハミルトンが続いた。
アロンソとヒュルケンベルグが7位・8位でポイントを獲得。オコンとサインツが9位・10位で最後のポイントを手に入れたが、いずれも「危険なドライビング」でレース後の調査対象となった。
ベアマンは惜しくも11位でポイント圏外。角田裕毅は最後尾スタートから12位までポジションを上げ、堅実な走りを見せた。
その後ろには、13位コラピント、14位ボルトレト、15位ガスリー、16位ハジャーと続き、ストロールはペナルティも響いて17位で地元GPを終えた。
リタイアは3台。ノリスはピアストリとの接触によってリタイア、ローソンとアルボンはマシントラブルにより途中棄権となった。
2025年F1 カナダGP 決勝 順位・結果
1.ジョージ・ラッセル(メルセデス)2.マックス・フェルスタッペン(レッドブル)
3.アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)
4.オスカー・ピアストリ(マクラーレン)
5.シャルル・ルクレール(フェラーリ)
6.ルイス・ハミルトン(フェラーリ)
7.フェルナンド・アロンソ(アストンマーティン)
8.ニコ・ヒュルケンベルグ(ザウバー)
9.エステバン・オコン(ハース)
10.カルロス・サインツJr.(ウィリアムズ)
11.オリバー・ベアマン(ハース)
12.角田裕毅(レッドブル)
13.フランコ・コラピント(アルピーヌ)
14.ガブリエル・ボルトレト(ザウバー)
15.ピエール・ガスリー(アルピーヌ)
16.アイザック・ハジャー(レーシングブルズ)
17.ランス・ストロール(アストンマーティン)
DNF.ランド・ノリス(マクラーレン)
DNF.リアム・ローソン(レーシングブルズ)
DNF.アレクサンダー・アルボン(ウィリアムズ)
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