レッドブルF1復活の鍵は“フェラーリ流”改革 メキースが導いた再生
クリスチャン・ホーナーの解任後、レッドブル・レーシングの勢いが突如として蘇った。その変貌は誰の目にも明らかであり、かつて彼と共に働いた関係者たちも注目している。

元レッドブルF1ドライバーのロバート・ドーンボスは、ローラン・メキース新代表の下でチームが変貌を遂げた現状は、ホーナーにとって複雑な心境だろうと語った。もっとも、推定1億ドル(約150億円)ともされる退職金が彼の懐を潤したことも事実だ。

「シーズン中にクリスチャン・ホーナーを解任するというのは、レッドブル取締役会による驚くべき決断だった」とドーンボスは『Pit Talk Podcast』で述べた。「チームも、そしてクリスチャン本人でさえ、誰も予想していなかった」

しかし、その決断は功を奏したと彼は認めている。

「不思議な光景だし、クリスチャンにとってはかなり衝撃的だと思う」と彼は続けた。「ローランは就任からわずか2戦で初勝利を挙げた。彼の冷静でエンジニア主導のスタイルは、ホーナーとは正反対なんだ」

マルコ「もう弱点のないチームになった」
ヘルムート・マルコも、メキースの技術的背景がチームに新たな活力を与えたと認めている。

「彼はテクニカルなセットアップに対してまったく異なるアプローチを確立した」とマルコは『Sky Deutschland』に語った。

「以前のように金曜から迷走することがなくなった。夏の時点ではほとんどすべてを諦めかけていたが、今はチーム全員が再び闘志を燃やしている。それが素晴らしいダイナミズムを生んでいる」

現在、マックス・フェルスタッペンが再び支配的な速さを取り戻し、マクラーレン勢を猛追していることから、マルコは「もはや弱点のないチーム」だと自信を見せた。

「もはや我々が不利だと言わざるを得ないサーキットは存在しない」とマルコは断言した。

ローラン・メキースとマックス・フェルスタッペン(レッドブル・レーシング)

変革の核心は「準備精度」と「静かな改革」
伊紙『La Gazzetta dello Sport』のテクニカルアナリスト、パオロ・フィリセッティは、メキース就任以降のミルトンキーンズ内部で起きた変化を詳細に分析している。

彼によると、モンツァ以降に導入された新型フロアと、フェラーリ式シミュレーター運用手法の採用が大きな転換点だったという。チームはレース週末前に、より正確なベースセットアップを構築するようになった。

このシミュレーター作業の強化によって「誤差の余地と時間的ロスが減り、特にスプリント週末では決定的な効果をもたらした」とフィリセッティは指摘する。結果として、現地入り時点で完成度の高い状態から作業を開始できるようになったのだ。

「メキースが指揮を執って以来、外からはほとんど見えないが、多くのことが静かに変わった」と彼は書いている。「リーダーシップの細部が、外見上は些細に見える差を生む。だが実際には、それこそが勝敗を分ける要因なのだ」

メキースの「構造改革」が導いた再生
ホーナーのカリスマ性と対照的に、メキースはエンジニアリング志向の合理的なマネジメントを導入した。彼のリーダーシップは派手さを欠くが、技術面での方向性を統一し、チームの内部構造を整理する効果を生んでいる。

特に、金曜から一貫したパフォーマンスを発揮できるようになった点は、かつての課題を完全に克服した証拠だ。レッドブルは今、メキース体制のもとで“技術的精度と組織的安定性”という新たな武器を手に入れたと言える。

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カテゴリー: F1 / レッドブル・レーシング