マクラーレンF1がロバート・クビサを獲らなかった理由「鼻が大きかったから」

ビショップ自身も、それが当時の最高経営責任者マーティン・ウィットマーシュの冗談だったのかどうか、確信は持てないとしながらも、実際にそうした発言があったことを明かしている。
「鼻が大きすぎた」クビサはなぜマクラーレンに呼ばれなかったのか
ロバート・クビサは、今世紀のF1における“未完の才能”のひとりとして語られる存在だ。F1で挙げた勝利は2008年カナダGPでの1勝のみで、当時所属していたBMWザウバーでの快挙だった。
しかし2011年2月、ラリー参戦中に起きた大事故によってキャリアは大きく暗転する。重傷を負い、F1での将来は事実上閉ざされた。
その後、ラリーで成功を収めたクビサは再びF1への挑戦を選び、2019年にウィリアムズから1シーズン復帰。同年ドイツGPでは、チームにとって唯一となるポイントを獲得している。
現在41歳のクビサは、2025年にフェラーリでル・マン24時間レース初優勝を果たし、感情あふれる勝利を手にした。
なおクビサ自身は2018年、2011年の事故当時、2012年にフェラーリF1チームへ加入する契約にサインしていたことも明かしている。
アロンソ離脱後のマクラーレンが探していた“ハミルトンの相棒”
2007年シーズン終了後、マクラーレンはフェルナンド・アロンソの後任を探していた。ハミルトンとの関係が破綻した2度の世界王者は、わずか1年でチームを去ることになる。
最終的にマクラーレンが選んだのは、ルノーで印象的なデビューシーズンを過ごしていたヘイキ・コバライネンだった。結果的に、コバライネンとアロンソは“シートを交換する”形となった。
ビショップは、2008年から2017年までマクラーレンのコミュニケーション責任者を務め、その後アストンマーティンにも在籍した人物である。
彼は自身のポッドキャスト『And Colossally That’s History!』に出演した際、当時の意思決定の舞台裏をこう振り返った。
「ウィットマーシュが当時、2008年のマクラーレンのドライバー候補としてクビサを考えたとき、問題のひとつは“彼の鼻が大きすぎる”ということだと言っていたのを覚えている。本当にそう言ったんだ」
「空力じゃなくて見た目の問題だと思う」
司会者から、それが空力的な問題なのか、それとも見た目の問題なのかと冗談交じりに問われると、ビショップは笑いながら答えた。
「見た目の問題だと思うよ。正直なところ、冗談だったんだと思う」
「もしこれを聞いているなら、マーティン、たぶん聞いていないと思うけど、説明してくれてもいい。でも、彼はそういうジョークを言うことがあった。ドライバーはこうあるべきだ、という考えを持っていたんだ」
「それはロン・デニスから学んだ部分でもある。ロンはドライバーの外見にとても厳しかったからね。ただ公平を期すと、ロバートの鼻についてロンが文句を言っているのは聞いたことがない」
同席していた音楽・スポーツ記者のリチャード・ウィリアムズも、こう付け加えている。
「クビサの鼻の話は本当に笑えるよ。今のF1に彼がいたら、どこに収まるんだろうね。今の若手ドライバーはみんなボーイバンドのメンバーみたいな顔をしている。まるで“ルックス審査”を通過してきたみたいだ」

モータースポーツ界の“鉄人” クビサの壮絶な事故
ウィットマーシュは2014年に25年間在籍したマクラーレンを去り、ロン・デニスも2017年にチームを離れている。
一方、クビサは昨年出演したポッドキャスト『Gurulandia』で、2011年のラリー事故の壮絶さを改めて語っている。
「正直に言うと、長い間昏睡状態だったから、何が起きたのかほとんど覚えていない」
「病院に着いたとき、体にあった血液は1.5リットルしかなかった。人間の体には6〜7リットルあるのにね」
「体の右半分は完全に粉々だった。42カ所の骨折で、足の指から肘まで全部折れていた」
さらにこう続けた。
「僕は人間だ」
「6〜7カ月の間、何の感覚もなく、まったく動けなかった。指を動かそうとしてもできなかった。その感覚は、経験した人にしか分からない」
「初めて動かせた日、言葉にならないほどの喜びを感じた」
鼻の大きさという冗談めいた理由でマクラーレン入りを逃したとされるクビサだが、そのキャリアと生き様は、F1史の中でも屈指の重みを持つものとなっている。
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